本がひらく
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世界は哀しくも愛おしく、そして不確かな存在――「八咫烏シリーズ」著者・阿部智里の短編小説『唯一の君』
累計130万部を突破中の大人気和風ファンタジー小説「八咫烏シリーズ」の著者が描く、生命と尊厳、現実と虚構が入り交じる不可思議な世界。前作『秘密のお客さま』に続く、待望の短編小説第2弾。
「すぐる。お前、お見合いをしてみないか?」
苺のショートケーキを頬張っていた僕は、唐突なお父さんの言葉にぽかんとした。
「お見合い? 僕が?」
「とても素敵なお嬢さんから、そういうお話があったんだ。どうだろうか
SFはなぜ「滅亡的事態」を描くのか?――混濁した不透明な世界で生きるために
未知のウイルス・パンデミックを描いた『復活の日』、日本の国土が海没する『日本沈没』等の小説がいまふたたび注目されているSF作家、小松左京。まるで「予言の書」のように受容される先見的な作品は、どのような問題意識に基づいて書かれたのでしょうか。
7月10日刊行のNHK出版新書『いまこそ「小松左京」を読み直す』では、評論家の宮崎哲弥さんが『地には平和を』『果しなき流れの果に』『日本沈没』『ゴルディア
赤坂真理「愛と性と存在のはなし」最終回 〔セクハラ論議はなぜ一面的なのか――言葉をめぐる落とし穴〕
※連載第1回から読む方はこちら
「セクハラ」という言葉が見えなくする真実
愛と性をめぐる問題系の中で、最もありふれたことのひとつなのに、議論が一向に深まらないことがある。いわゆる「セクハラ」の問題である。「セクハラ」と聞くと、良心的な男性の多くが、どれほど身構えるものかを、わたしは知っている。一方で「セクハラ」を受けたと感じる側が、どれほど驚いたり不安定な気持ちになったり傷ついたりするものかも
貧困は拡大し、人命は軽視される…。すべての源は五輪イヤーにあった!〔後編〕 貴志謙介『1964 東京ブラックホール』より
五輪イヤーの実相に迫るノンフィクション『1964 東京ブラックホール』。前編に引き続き、第一章後編を公開します。高度成長を下支えした出稼ぎ労働者の実態をつぶさに見ていきながら、東京一極集中のシステム――地方農村を犠牲にして繁栄する首都の姿――をあぶり出します。
※本文中の筆者もしくは編集部による注は( )で示し、引用箇所の注は[ ]で示しています。また、引用した新聞・週刊誌・月刊誌の出典は(
貧困は拡大し、人命は軽視される…。すべての源は五輪イヤーにあった!〔前編〕 貴志謙介『1964 東京ブラックホール』より
労働者搾取、格差社会、性差別、猟奇犯罪、東京一極集中、一党支配、対米依存、汚職・隠蔽、そして疫病の蔓延。1964年と〈いま〉とは驚くほど類似点が多い。
東京五輪が開催され、高度成長の象徴としてノスタルジックに語られる1964年だが、その実態はどのようなものだったのか? 膨大な記録映像と史資料を読み解き見えてきたのは、いまも残るこの国の欠陥だった――。
6月27日発売のノンフィクション『196
中野京子「異形のものたち――絵画のなかの怪を読む 《人はなぜヘビを嫌い、恐れるのか?(2)》」
画家のイマジネーションの飛翔から生まれ、鑑賞者に長く熱く支持されてきた、名画の中の「異形のものたち」。
大人気「怖い絵」シリーズの作家が、そこに秘められた真実を読む。
※当記事は連載第4回です。第1回から読む方はこちらです。
ペルセウスと蛇
前回は蛇に女性を重ねて恐怖と恍惚を覚えた事例を紹介したが、ここからは人外の存在、化け物としての蛇を取り上げる。
まずは再びペルセウス。彼は蛇に縁