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ミステリー小説や食エッセイから、小中学生向けの教養読み物まで、さまざまな興味・関心を刺激する作品を取りそろえています。
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記事一覧

自分を「よくやった」と認めてあげていいじゃないか。「いちばん知っている」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。 ※#0から読む方はこちらです。 #15 いちばん知っている レジンクラフトにはまっていた時期がある。  こどくはむかしから不器用で、こまかい作業がにがてだった。でも、なぜか、ときどき手を動かすのが

学校からの注意喚起、いまむかし――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は夏休みが始まる前に、学校で配られた「注意事項」についてのお話です。 ※当記事は連載の第40回です。最初から読む方はこちらです。 #40 学校からの通達事項 子が通う小学校の保護者会で配られた「夏休みに気を付けること」と題されたプリントに「夏休みの宿題にAIおよびChatGPT を使用しないこと。必ず本人にやらせること」と、あった。  教育機関に勤める人なら

集団に巻き取られず、しかし孤立もせず――「ことぱの観察 #20〔乗ること〕」向坂くじら

詩人として、国語専門塾の代表として、数々の活動で注目をあびる向坂くじらさん。この連載では、自身の考える言葉の定義を「ことぱ」と名付け、さまざまな「ことぱ」を観察していきます。 乗ること ダンスを習いはじめた。  もともと体を動かすことは苦手中の苦手で、五十メートル走のタイムは十秒、よく転ぶし、筋力もなければ俊敏さもない。いわゆる学校教育的な「体育」に対する憎しみの記憶も手伝って、大人になってからも避けられるかぎり避けてきた。それなのに急にダンスである。家族や友だちもびっくり

"心に残るチャーハン"は台湾の「シエンタン炒飯」。最適解でない味を求めて (料理人・文筆家、稲田俊輔) 【1/4話】

稀代の「食いしん坊」かつ「料理」「飲食店経営」のプロでもある稲田俊輔さん。エリックサウス総料理長として南インド料理ブームの火付け役となっただけでなく、その複眼から繰り出される「食エッセー」やSNSでの「問答」でも人気です。 4話にわたってお届けする稲田さんのインタビュー。第1話は、稲田さんの「心に残るチャーハン」、旅先で感動的な料理に出合うコツ、稲田さんが自称する「フードサイコパスとは何か」など伺います。 ■台湾の「鹹蛋炒飯」に感激。旅先で「感動的な料理」に出合うコツ──稲

宮島未奈『モモヘイ日和』第4回「"推し"と百平」

24年本屋大賞受賞作『成瀬は天下を取りにいく』の作者・宮島未奈さんの新作小説が「基礎英語」テキストにて好評連載中です。「本がひらく」では「基礎英語」テキスト発売日に合わせ、最新話のひとつ前のストーリーを公開いたします。 とある地方都市・白雪町を舞台に、フツーの中学生・エリカたちが巻き起こすドタバタ&ほっこり青春劇!  「こないだミサトが言ってたイケメンの先輩、見つかった?」  バスケ部の練習の休憩中、同じ1年生のシホに尋ねられたミサトは、水 筒から口を離して咳き込んだ。  

自分のために料理を作って食べることは私しか味わえない贅沢。「ひとりごはん実験室」――料理に心が動いたあの瞬間の記録《自炊の風景》山口祐加

 自炊料理家として多方面で活躍中の山口祐加さんが、日々疑問に思っていることや、料理や他者との関わりの中でふと気づいたことや発見したことなどを、飾らず、そのままに綴った風景の記録。山口さんが自炊の片鱗に触れ、「料理に心が動いた時」はどんな瞬間か。ふたりで食べるごはんも、大勢で食べるごはんも、ひとりで食べるごはんも、それぞれの楽しみがありますね。山口さんはひとりごはんをどのように堪能するのでしょうか。 ※第1回から読む方はこちらです。 #11 ひとりごはん実験室 ひとりでごはん

しんどくても、つらくても、それでも、たのしむ権利はあるはずだから。「たのしいを求めて」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。 ※#0から読む方はこちらです。 #14 たのしいを求めて 旅行に行く。それは統合失調症を抱えるこどくにとって、かなり体力を使う行為だ。  統合失調症当事者は、「妄想」という症状によって、しばしばい

「ひととつながりたい」から、「ひとをつなげたい」へ。「君がいるのなら」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。 ※#0から読む方はこちらです。 #13 君がいるのなら こどくは、パソコンをいじることが趣味である。ロゴデザインや動画制作、ゲームエンジンを用いた環境構築、プログラミングだってできる。  これらの

連載 ロジカルコミュニケーション入門――【第15回】なぜ帰納法に陥ってしまうのか?

●論理的思考の意味  本連載【第1回】「論理的思考で視野を広げよう!」では、「論理的思考」が「思考の筋道を整理して明らかにする」ことであると解説した。たとえば「男女の三角関係」のように複雑な問題であっても、思考の筋道を整理して明らかにしていく過程で、発想の幅が広がり、それまで気づかなかった新たな論点が見えてくる思考法である。 【第2回】「論理的思考で自分の価値観を見極めよう!」では、「ロジカルコミュニケーション」によって新たな論点を探し、反論にも公平に耳を傾け、最終的に自

こころの充足を求めて――「不安を味方にして生きる」清水研 #23[真の幸せへの道のり]

不安、悲しみ、怒り、絶望……。人生にはさまざまな困難が降りかかります。がん患者専門の精神科医として4000人以上の患者や家族と対話してきた清水研さんが、こころに不安や困難を感じているあらゆる人に向けて、抱えている問題を乗り越え、豊かに生きるためのヒントをお伝えします。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #23 真の幸せへの道のり「衰退」と「こころの充足」  第21回と第22回でお伝えしたように、「must(~しなくてはならない)思考」の縛りがなくなったことで、それ

【連載】南沢奈央「女優そっくり」第2回

マネージャーというより、監督である 自分のマネージャーがいる。  このことだけで芸能人になった気分になるのはなぜだろうか。 「マネージャー」というと、部活動におけるマネージャーしか知らなかった。こちらからは、不思議と甘酸っぱい香りが漂ってくるように感じられるのは、私だけではないはず。  完全に勝手な私の想像を超えた妄想になってくるが、野球部やサッカー部のマネージャーは、部活動の青春の象徴だ。男子部員が汗水流して練習に励む。そして試合に臨む。そんな姿を女子マネージャーは近くで

食にまつわる難問。「『今日のごはん、何がいい?』って聞かれたら、何と答えるのが正解なのか」――料理に心が動いたあの瞬間の記録《自炊の風景》山口祐加

 自炊料理家として多方面で活躍中の山口祐加さんが、日々疑問に思っていることや、料理や他者との関わりの中でふと気づいたことや発見したことなどを、飾らず、そのままに綴った風景の記録。山口さんが自炊の片鱗に触れ、「料理に心が動いた時」はどんな瞬間か。みなさんは「今晩何食べたい?」と訊ねられたら、なんと答えますか? つい考え込んでしまうこの質問に、山口さんが導き出した答えは…… ※第1回から読む方はこちらです。 #10 「今日のごはん、何がいい?」って聞かれたら、何と答えるのが正解

だれだって、日常で自分がやっていることの偉大さに気づけないもの。「偉大なのだから」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。 ※#0から読む方はこちらです。 #12 偉大なのだから 季節の移りゆく時期。この記事の読者のみなさんには、どんな印象があるだろうか。こどくにとっては、「体調不良に見舞われる時期」という印象しかない

もっと効率の悪い「わかる」のあり方というものもあるんじゃないか。――「ことぱの観察 #19〔飲むこととわかること〕」向坂くじら

詩人として、国語専門塾の代表として、数々の活動で注目をあびる向坂くじらさん。この連載では、自身の考える言葉の定義を「ことぱ」と名付け、さまざまな「ことぱ」を観察していきます。 飲むこととわかること くじらに飲まれた人がいるという。ダイビング中にたまたまザトウクジラの口の中に入ってしまい、けれど暗闇のなかでもがいていると間もなく吐き出されて、奇跡的な生還を遂げたらしい。そう聞くと、ついくらっとあこがれてしまう。「くじら」と名乗ってもうすぐ十年になる身である。  巨大なくじらが