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ミステリー小説や食エッセイから、小中学生向けの教養読み物まで、さまざまな興味・関心を刺激する作品を取りそろえています。
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記事一覧

「どんな時間を過ごしたいか」から献立を考える。「パリ郊外の友達の家にて、冷蔵庫にあるもので自炊」――料理に心が動いたあの瞬間の記録《自炊の風景》山口祐加

自炊料理家として多方面で活躍中の山口祐加さんが、日々疑問に思っていることや、料理や他者との関わりの中でふと気づいたことや発見したことなどを、飾らず、そのままに綴った風景の記録。山口さんが自炊の片鱗に触れ、「料理に心が動いた時」はどんな瞬間か。パリ郊外にお住いの友達夫婦のご自宅を訪ねた山口さん。冷蔵庫にある食材で自炊した料理で、山口さんのなかにある発見があったようです。 ※第1回から読む方はこちらです。 #23 パリ郊外の友達の家にて、冷蔵庫にあるもので自炊 2024年の秋、

愛が、あまって、あまって、しかたないのだ。――「愛がありふれている #3」向坂くじら

いま、文芸の世界で最も注目を集める詩人・向坂くじらさん。「本がひらく」連載で好評を得た、言葉の定義をめぐるエッセイ「ことぱの観察」の次なる連載テーマは「愛」。稀有なもの、手に入りにくいものだと思われがちな「愛」はどのようにありふれているのでしょうか。向坂さんの観察眼でさまざまに活写するエッセイです。  「くじらさんは、推し、っていますか?」  そうたずねてきた中学生のチーさんは、なぜか人目をはばかるようなひそひそ声だった。そのとき教室にはわたしとチーさんしかいなかったのに、

そういうこともあるんだと、知ってもらえたら。「切に願う」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。 ※#0から読む方はこちらです。 #38  切に願う こどくは、体調がわるいときは、スマホを触らないように、気をつけている。理由は3つある。  ひとつは、スマホを触ることで、無為に時間が過ぎてしまう

どんな一年にしたいのかを決めるだけで半分達成「来年はどんな年にしようか」――昆虫・動物だけじゃない、篠原かをりの「卒業式、走って帰った」

動物作家・昆虫研究家として、さまざまなメディアに登場する篠原かをりさん。その博識さや生き物への偏愛ぶりで人気を集めていますが、この連載では「篠原かをり」にフォーカス! 忘れがたい経験や自身に影響を与えた印象深い人々、作家・研究者としての自分、プライベートとしての自分の現在とこれからなど、心のままにつづります。第20回は篠原さんのお正月における心がけ&来年の目標のお話です。 ※第1回から読む方はこちらです。 #20 来年はどんな年にしようか 今年も残すところ、あと数日である。

やさしさが、いつもわたしの身に余る。――「愛がありふれている #2」向坂くじら

いま、文芸の世界で最も注目を集める詩人・向坂くじらさん。「本がひらく」連載で好評を得た、言葉の定義をめぐるエッセイ「ことぱの観察」の次なる連載テーマは「愛」。稀有なもの、手に入りにくいものだと思われがちな「愛」はどのようにありふれているのでしょうか。向坂さんの観察眼でさまざまに活写するエッセイです。  女の子たちとの付きあいは、いつもやさしさからはじまる。それはたとえば、持ちものを褒めることだったり、体調を気にかけることだったり、かわいいシールをあげることだったり、相性の悪

私のクリスマスはいつもどおりの食卓。「クリスマスぎらいのわけ」――料理に心が動いたあの瞬間の記録《自炊の風景》山口祐加

自炊料理家として多方面で活躍中の山口祐加さんが、日々疑問に思っていることや、料理や他者との関わりの中でふと気づいたことや発見したことなどを、飾らず、そのままに綴った風景の記録。山口さんが自炊の片鱗に触れ、「料理に心が動いた時」はどんな瞬間か。街の景色が華やいだり、音楽が鳴り響いたりと、胸が躍る人が多くなるクリスマス。でも、山口さんにとってはクリスマスに苦い思い出もあるそうです。 ※第1回から読む方はこちらです。 #22 クリスマスぎらいのわけ 今日はクリスマス。私が一年でい

日々がんばっている自分をみとめ、気を遣ってあげてほしい。「生きててえらい」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。 ※#0から読む方はこちらです。 #37 生きててえらい さいきん、ゆっくりやすむ、ということを覚えた。やすめやすめとまわりに言われ続けてはや数年。ようやくかよ、とこどくも思う。  方法はかんたんだ

体質が似た人から健康法を学ぶ――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。年末の忙しいなか、柚木さんが元気に過ごす秘訣をお届けします。 ※当記事は連載の第45回です。最初から読む方はこちらです。 #45 私のお手本  最近、案外、自分に体力がついてきたことに驚く。  十代〜二十代は肺炎で入退院を繰り返していた。産後は乳腺炎やマイナートラブルに悩まされ、身体がヘロヘロしていたし、コロナ禍では自粛を余儀なくされたせいで、朝夕の感覚がよ

【新連載】古賀及子「これも詩ということにする」第1回

あのときちゃんと笑えていたかな 平日の朝は毎日居間にラジオを流す。決まった番組を聴くから、だいたい同じ製品やサービスのコマーシャルが放送される。  どれも個性的で耳に残るなか、最近気になるのは痛散湯という漢方薬のCMだ。肩こりやひざの痛みに効果があるらしく、節々に悩みを持つ人が悩みをもらした後、「そんなあなたに!」とPRする流れで構成されている。  今日も高齢らしき女性が切実に語る。最近肩や腰が痛くて。先日孫が遊びに来てくれたのに支度だけでもう疲れてしまった。そうして、い

多岐にわたるからこそ、決めつけないで。「いいか、こどくは」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。 ※#0から読む方はこちらです。 #36 いいか、こどくは こどくが活動をはじめた日。統合失調症VTuberとして、YouTubeに動画を投稿しはじめた日。忘れもしない、2021年の、7月7日。こど

その土地で食べられている家庭料理を作ると、新しい食材の組み合わせや調理法に出会える。「おいしいミネストローネの秘密」――料理に心が動いたあの瞬間の記録《自炊の風景》山口祐加

自炊料理家として多方面で活躍中の山口祐加さんが、日々疑問に思っていることや、料理や他者との関わりの中でふと気づいたことや発見したことなどを、飾らず、そのままに綴った風景の記録。山口さんが自炊の片鱗に触れ、「料理に心が動いた時」はどんな瞬間か。イタリアを旅した山口さんがかねてから自炊するのが“念願”と楽しみにしていた、ある食材を使ったミネストローネとは――。 ※第1回から読む方はこちらです。 #21 おいしいミネストローネの秘密 「ずっと海外へ旅をしていると、外食続きで疲れま

世界70カ国旅して食べた、米料理とチャーハン(料理研究家・荻野恭子) 【後編】

1970年代から世界約70カ国を旅し、ロシアやトルコなどユーラシアの料理、食文化を早くに紹介してきた料理研究家の荻野恭子さん(70)。世界の米料理と印象に残ったチャーハンについて聞きました。 ■ロシアとトルコの料理に魅了された理由 ──荻野さんは1970年代から今日まで70カ国近くを旅し、各地の料理や食文化を伝えてきました。とりわけロシアをはじめとする旧ソ連やトルコの料理をかなり早い時期に紹介されています。魅了されたきっかけは? ロシア料理は、中学生のときに担任の先生にロ

そして、思う。持ち回りなのかもしれない。――「愛がありふれている #1」向坂くじら

いま、文芸の世界で最も注目を集める詩人・向坂くじらさん。「本がひらく」連載で好評を得た、言葉の定義をめぐるエッセイ「ことぱの観察」の次なる連載テーマは「愛」。稀有なもの、手に入りにくいものだと思われがちな「愛」はどのようにありふれているのでしょうか。向坂さんの観察眼でさまざまに活写するエッセイです。  班長になった。町内会のことだ。町内はエリアごとに組に分かれていて、その組はさらに班に分かれている。それぞれ数字がついており、一組一班、一組二班、というふうに呼ぶ。うちの班には

あなたが覚えていなくても、私が一生覚えている「クリスマスが帰ってきた」――昆虫・動物だけじゃない、篠原かをりの「卒業式、走って帰った」

動物作家・昆虫研究家として、さまざまなメディアに登場する篠原かをりさん。その博識さや生き物への偏愛ぶりで人気を集めていますが、この連載では「篠原かをり」にフォーカス! 忘れがたい経験や自身に影響を与えた印象深い人々、作家・研究者としての自分、プライベートとしての自分の現在とこれからなど、心のままにつづります。第19回は篠原さんの今昔クリスマスからひろがる、人生のギフトのお話です。 ※第1回から読む方はこちらです。 #19 クリスマスが帰ってきた 私の人生にクリスマスが帰って