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ミステリー小説や食エッセイから、小中学生向けの教養読み物まで、さまざまな興味・関心を刺激する作品を取りそろえています。
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ビスケットのおいしい食べ方――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。イギリスでの講演旅行を大盛況のうちに終え、無事帰国した柚木さんが新たに取り入れた食習慣とは? ※当記事は連載の第44回です。最初から読む方はこちらです。 #44 Dunking  10日間のイギリス・オーサーズツアー(講演旅行)を終え、時差ボケと興奮が未だ冷めやらない。過密スケジュールだったため、お土産を買えないまま、最後の数時間でスーパーマーケットの箱入り紅

統合失調症当事者が、むりなく、偏見もなく、安心した場所ですごせるように。「よすが」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。 ※#0から読む方はこちらです。 #32 よすが 統合失調症についてもっと知られればいいのに、と思うのはこどくだけだろうか。  100人にひとりがかかり、好発年齢といって、かかりやすいのは10代、2

103歳・最期まで作り食べる「火を使わないチャーハン」レシピ (料理研究家・荻野恭子) 【前編】

世界約70カ国を旅し、各国の料理や食の知恵を紹介してきた料理研究家の荻野恭子さん(70)。「調理定年」という言葉が話題を呼ぶ中、103歳で亡くなった母と、最期まで無理なくできる「独自のクッキング法」を編み出しました。そのクッキング法とは。広く応用でき、パラパラに仕上がる、103歳の「火を使わないチャーハン」のレシピも聞きました。 ■100歳超えても無理なくできる「卓上クッキング」──いま「調理定年」という言葉が話題を呼んでいます。仕事に定年があるように料理にも定年があってい

何を食べようかと心を躍らせることができるのは、消化できる健康な身体があってこそ。「食欲さんの家出」――料理に心が動いたあの瞬間の記録《自炊の風景》山口祐加

自炊料理家として多方面で活躍中の山口祐加さんが、日々疑問に思っていることや、料理や他者との関わりの中でふと気づいたことや発見したことなどを、飾らず、そのままに綴った風景の記録。山口さんが自炊の片鱗に触れ、「料理に心が動いた時」はどんな瞬間か。海外から帰国したのち、旅の疲れからか体調を崩してしまった山口さん。そのとき、山口さんにとっては未経験の症状が訪れていました。 ※第1回から読む方はこちらです。 #19 食欲さんの家出 四六時中「次は何を食べようか」と考えている私の中から

宮島未奈『モモヘイ日和』第8回「モモヘイ募集スタート!」

24年本屋大賞受賞作『成瀬は天下を取りにいく』の作者・宮島未奈さんの新作小説が「基礎英語」テキストにて好評連載中です。「本がひらく」では「基礎英語」テキスト発売日に合わせ、最新話のひとつ前のストーリーを公開いたします。 とある地方都市・白雪町を舞台に、フツーの中学生・エリカたちが巻き起こすドタバタ&ほっこり青春劇!  9月の「白雪町をよくする会」がはじまった。百平さん改造計画の話し合いに入り、わたしは緊張しながら手を挙げる。  「百平さんを、マスコットキャラクターにするのは

みんなで使えば高くない?!「人生で一番高い買い物」――昆虫・動物だけじゃない、篠原かをりの「卒業式、走って帰った」

動物作家・昆虫研究家として、さまざまなメディアに登場する篠原かをりさん。その博識さや生き物への偏愛ぶりで人気を集めていますが、この連載では「篠原かをり」にフォーカス! 忘れがたい経験や自身に影響を与えた印象深い人々、作家・研究者としての自分、プライベートとしての自分の現在とこれからなど、心のままにつづります。第17回は篠原さんが届くのを楽しみにしている、大切な家具のお話です。 ※第1回から読む方はこちらです。 #17 人生で一番高い買い物 最近、ダイニングテーブルを買った。

たとえ一生治らない病気を抱えていても、たのしく考えるように。「おもしろいじゃないか」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。 ※#0から読む方はこちらです。 #31 おもしろいじゃないか 統合失調症という病気は、一生ものの病気だ。たとえ症状が落ち着いて、病気でないように見られる状態になっても、症状が一時的に軽くなること、

未来の自分を信じて。「信じているぞ」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。 ※#0から読む方はこちらです。 #30 信じているぞ こどくは統合失調症VTuberとして活動している。昨今、未曾有のVTuberブームで、さまざまなVTuberがいるが、こどくはVTuberとし

【連載】南沢奈央「女優そっくり」第6回

胸が、ぎゅううう 私は根に持つタイプのようである。  言われてうれしかったことよりも、言われて悔しかったことをよく覚えている。言った人の顔も鮮明に思い出せるし、その当時の感情も蘇ってくる。そのときに“いやだわぁ”と一度思ってしまうと、完全に心のシャッターをおろす。そういった人たちと二度と交わることはない。  中学のときにこんなことがあった。  私は国語の係だった。教科ごとにつく教科係は、授業前にその教科担当の先生のところへ行き、プリントなど授業で必要なものを用意したり、教室ま

気持ちのいい場所で、おいしい料理を、人と一緒に食べる。これ以上の贅沢はない。「自分で選ぶ・作る生活」――料理に心が動いたあの瞬間の記録《自炊の風景》山口祐加

自炊料理家として多方面で活躍中の山口祐加さんが、日々疑問に思っていることや、料理や他者との関わりの中でふと気づいたことや発見したことなどを、飾らず、そのままに綴った風景の記録。山口さんが自炊の片鱗に触れ、「料理に心が動いた時」はどんな瞬間か。世界中の「日常のごはん」を求めて海外を旅している山口さん。前回に続いてスペイン滞在中の山口さんが次に訪ねたのは、ある日本人のご夫婦のお宅でした。 ※第1回から読む方はこちらです。 #18 自分で選ぶ・作る生活 前回はスペインのセビリアで

日本からは見えない日本――#8 ミルトン・ムラヤマ『俺が欲しいのは自分の体だけ』(2)

家父長制に苦しめられる二世たち  本書の舞台はハワイの海辺の町ペペラウと、カハナにあるプランテーションだ。これはムラヤマが住んでいた、マウイ島のラハイナという町と、かつてプウコリイにあったサトウキビ農場がモデルとなっている。主人公のキヨシと兄のトシオは未来の見えない日々に苦しんでいる。祖父が作った莫大な借金を返そうとした父親は漁業で失敗し、気づけば負債を6000ドルにまで増やしてしまった。    高い教育もろくな英語力もないオヤマ家の男たちにとって、残された仕事はサトウキビ

フラガールと戦争――#8 ミルトン・ムラヤマ『俺が欲しいのは自分の体だけ』(1)

ハワイでは「すべて」が正解  もちろん僕もハワイが大好きだ。初めて行ったのは10年ほど前かな。以前、ロサンゼルスに留学していたから、同じアメリカだしカリフォルニアとそんなに違わないだろう、と思っていた。けれども、その考えは行ってみて完全に覆された。まず、なにより日本から近い。西海岸に行く半分ぐらいの時間で着いてしまう。この距離感がものすごく楽だ。そしてやたらと気候がいい。空は青いし、ざっと一雨でも降れば、毎日のように虹がかかる。    しかも食べ物の問題が全くない。コンビニ

むりをしなければ、「息災」でいられる可能性はじゅうぶんある。「有病息災」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。 ※#0から読む方はこちらです。 #29 有病息災 よく、神社やお寺に行く。こどくは古い建物がすきなので、遠方でも、行ければ行く、程度のノリで行く。また、近所の神社やお寺にも、おまいりやさんぽのつい

雰囲気優等生にだまされるな!「人間の警戒色」――昆虫・動物だけじゃない、篠原かをりの「卒業式、走って帰った」

動物作家・昆虫研究家として、さまざまなメディアに登場する篠原かをりさん。その博識さや生き物への偏愛ぶりで人気を集めていますが、この連載では「篠原かをり」にフォーカス! 忘れがたい経験や自身に影響を与えた印象深い人々、作家・研究者としての自分、プライベートとしての自分の現在とこれからなど、心のままにつづります。第16回は篠原さんの引っ越し早々にやってきたピンチのお話です。 ※第1回から読む方はこちらです。 #16 人間の警戒色 臨月に家を探し、産後の入院中に転居の手続きをして