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教養・ノンフィクション

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103歳・最期まで作り食べる「火を使わないチャーハン」レシピ (料理研究家・荻野恭子) 【前編】

世界約70カ国を旅し、各国の料理や食の知恵を紹介してきた料理研究家の荻野恭子さん(70)。「調理定年」という言葉が話題を呼ぶ中、103歳で亡くなった母と、最期まで無理なくできる「独自のクッキング法」を編み出しました。そのクッキング法とは。広く応用でき、パラパラに仕上がる、103歳の「火を使わないチャーハン」のレシピも聞きました。 ■100歳超えても無理なくできる「卓上クッキング」──いま「調理定年」という言葉が話題を呼んでいます。仕事に定年があるように料理にも定年があってい

戦前・戦中の政治家24人の肉声から戦時体制の実態に迫る

 初の普通選挙、太平洋戦争、そして終戦——時の首相は、壇上から何を訴えたのか。11月11日に発売した『戦時下の政治家は国民に何を語ったか』では、昭和史研究の泰斗・保阪正康さんが、NHKに残された当時の政治家24人の貴重な肉声から戦時体制の実態に迫ります。1928年に初の普通選挙に臨んだ田中義一から、1945年の終戦時に内閣を率いた鈴木貫太郎まで、当時の政治家たちは何を考え、どのように国民の戦争意欲を高めたのか。本書の一部を抜粋して公開します。 画像出典:国立国会図書館「近代

哲学は17世紀が面白い! 刺激的な「近世合理哲学」入門

17世紀、科学の勃興と共に哲学は「注釈」であることをやめ、それぞれ単独で展開される「プロジェクト」となった――。そんな時代の代表的な4人の哲学者、デカルト・スピノザ・ホッブズ・ライプニッツの思想を親しみやすい語り口で明らかにした『哲学者たちのワンダーランド[改版] デカルト・スピノザ・ホッブズ・ライプニッツ』が復刊されました。著者は当社刊『哲学史入門II』でも17世紀哲学について解説いただいた上野修さんです。 上野さんの明快な語り口は本書でも存分に生かされ、「近世合理哲学」の

日本からは見えない日本――#8 ミルトン・ムラヤマ『俺が欲しいのは自分の体だけ』(2)

家父長制に苦しめられる二世たち  本書の舞台はハワイの海辺の町ペペラウと、カハナにあるプランテーションだ。これはムラヤマが住んでいた、マウイ島のラハイナという町と、かつてプウコリイにあったサトウキビ農場がモデルとなっている。主人公のキヨシと兄のトシオは未来の見えない日々に苦しんでいる。祖父が作った莫大な借金を返そうとした父親は漁業で失敗し、気づけば負債を6000ドルにまで増やしてしまった。    高い教育もろくな英語力もないオヤマ家の男たちにとって、残された仕事はサトウキビ

日本でもニーズ・知名度急上昇中! ナチュラリスティック・ガーデンとは?

すてきな庭だと感じても、どんな植栽なのか、どんな考え方なのか、じつはよくわからない……。 そんなナチュラリスティック・ガーデンの「教科書」『PLANTING: A NEW PERSPECTIVE』の邦訳『ピート・アウドルフの庭づくり』が10月25日に発売になります。 翻訳を務めた永村裕子さんに、本著の内容や魅力をたっぷりお聞きしました。 ※NHKテキスト『趣味の園芸』11月号より一部抜粋・再編集したものです。 ナチュラリスティック・ガーデンを学ぶ、絶好の書──そもそもナチュ

フラガールと戦争――#8 ミルトン・ムラヤマ『俺が欲しいのは自分の体だけ』(1)

ハワイでは「すべて」が正解  もちろん僕もハワイが大好きだ。初めて行ったのは10年ほど前かな。以前、ロサンゼルスに留学していたから、同じアメリカだしカリフォルニアとそんなに違わないだろう、と思っていた。けれども、その考えは行ってみて完全に覆された。まず、なにより日本から近い。西海岸に行く半分ぐらいの時間で着いてしまう。この距離感がものすごく楽だ。そしてやたらと気候がいい。空は青いし、ざっと一雨でも降れば、毎日のように虹がかかる。    しかも食べ物の問題が全くない。コンビニ

こうした斬新な図鑑をつくれる日本人はいない!? 篠田謙一×桝太一対談(後編)

前回に引き続き、国立科学博物館長の篠田謙一さんと元テレビ局アナウンサーの桝太一さんのインタビューをお届けします。子どものころ読んだ図鑑のお話から、インフォグラフィック*を活用した『ブリタニカ ビジュアル大図鑑の』の見どころまで、たっぷり語ってくださいました。 (*情報やデータをイラストや図版で視覚的に表現したもの) ―――子どものころの図鑑体験 桝  篠田さんが子どものころ、どのような図鑑を読まれていたのか興味があります。 篠田 わたしの時代は、図鑑は一択で、まだ小学館

生成AIに淘汰される「漫然とホワイトカラー」の末路

深刻な人手不足と、デジタル化の進展による急激な人余りが同時進行する日本。生成AIなどの技術革新により、ホワイトカラーの仕事が急速に取って代わられていく中、組織や個人が生き残るための具体策とは? 産業再生機構、日本共創プラットフォーム(JPiX)で数多くの企業の経営改革を手掛けた冨山和彦さんの新刊『ホワイトカラー消滅 私たちは働き方をどう変えるべきか』を抜粋して公開します。 生成AIの破壊性と深まる苦悩 これから、怒涛の勢いで押し寄せる生成AIなどによる破壊的イノベーションが

人類共存の実現が、ある芸術家に託された時代があった!――20世紀初頭の世界を熱狂させた知られざる首都構想

科学、通信技術、芸術、スポーツなどあらゆる叡智をひとつの都市に集結させる――20世紀初頭、壮大な〈世界の首都〉構想が立てられた。目的は技術革新を通した世界平和。考案者は彫刻家とその義姉。計画は世界じゅうで熱狂的に支持されるが、構想から30年を経たのち夢と潰えた。だがその裏ではムッソリーニ、ヒトラーら独裁者たちが強い関心を示していた……。 ジャーナリスト、ジャン=バティスト・マレによる歴史ノンフィクション『人類の都――なぜ「理想都市」は歴史の闇に葬られたのか』(田中裕子訳、NH

「日本人=入浴好き」という国民性はどのように共有されてきたのか?

日本人らしさとして語られがちな「毎日風呂に入るのが当たり前」という意識。私たちが無意識に内面化しているこの感覚は、いったいどこからきたのか? 入浴をめぐる日本の歴史を丹念に紐解き、新しい日本近代史を示した新刊『風呂と愛国 「清潔な国民」はいかに生まれたか』の発売を記念し、本書の「まえがき」を公開します。  数年前、友人の子どもがまだ幼いときに、子どもが風呂に入らなくて困るという話を聞いたことがあった。それを聞いて思い出したが、私自身も幼い頃、母親や父親から毎日のように「早く

"ミニマル炒飯"は「あわてないチャーハン」。脱マチズモで、作る人を選ばない(料理人・文筆家、稲田俊輔)【4/4話】

インド料理に限らず、和食、洋食、フレンチなど幅広いジャンルを手がける料理人の稲田俊輔さん。家庭には「ミニマル料理」を提案しています。では、「ミニマル炒飯はどんな料理?」と尋ねると「あわてないチャーハン」とのお答え。そこには合理性だけでなく、作り手とチャーハンへの深い思いがありました。稲田流レシピに独特な「重さ」を測りながら作る理由についても合わせて聞きました。 ■素材の味をストレートに生かす「シンプルな料理」──稲田さんは2023年に家庭料理向けのレシピ本『ミニマル料理』を

言葉の力を信じながら──92歳・五木寛之さんからのメッセージ

作家・五木寛之さんによる「人生のレシピ」は、誰もが百歳以上まで生きるかもしれない時代に、新しい生き方を見つけるための道案内となる累計17万部超えの人気シリーズです。 NHK「ラジオ深夜便」の語りを再現して贈るシリーズの完結作となる第10弾は『百歳人生の愉しみ方』(2024年10月刊)。同時期に刊行となる『五木寛之×栗山英樹 「対話の力」』とともに、人生の後半を切り拓くヒントが満載です。 今回はシリーズ完結に際しての、五木さんからのスペシャルメッセージをお届けします。  〈人

こころが思うようにならない人へ――「不安を味方にして生きる」清水研

 がん患者専門の精神科医として、4000人以上の患者や家族と対話してきた清水研さん。こころに不安や困難を感じている人に向けて、抱えている問題を乗り越え、限られた人生を豊かに生きるためのヒントを伝える『不安を味方にして生きる――「折れないこころ」のつくり方』(清水研/NHK出版)が9月27日に発売になります。本書は当ウェブマガジン「本がひらく」に連載された「不安を味方にして生きる」(2023年5月~2024年9月)を加筆・修正し、再編集したものです。刊行にあたって、書籍『不安を

子どもの時の「シンプルチャーハン」が原点。日本の炒飯は「日式」? (料理人・文筆家、稲田俊輔)【3/4話】

食のエッセーやSNSでの問答が人気の南インド料理店「エリックサウス」総料理長の稲田俊輔さん。子どもの頃はどんなチャーハンを食べていたのでしょうか? また、私たちが食べているのは「日式チャーハン」なのか。ここ数年、人気の「町中華」の次代を受け継ぐのは? 稲田さんの「原点となるチャーハン」と、「町中華のチャーハン」について伺いました。 ■原点にあるのは、子どもの時食べた「シンプルチャーハン」 ──稲田さんを「稀代の食いしん坊」かつ「料理人」にならしめたのは、育った家庭環境の影響