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小説・エッセイ

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人気・実力を兼ね備えた執筆陣によるバラエティー豊かな作品や、著者インタビュー、近刊情報などを掲載。
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記事一覧

原作者が尊重され、守られるように――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、映像化の際に原作者に大きくかかる負担について、小説家であり、かつて脚本家志望だった柚木さんからの提言です。 ※当記事は連載の第35回です。最初から読む方はこちらです。 #35 映像化と原作者  テレビドラマにもなった漫画「セクシー田中さん」の原作者・芦原妃名子さんがお亡くなりになった。映像化にあたっての条件が守られず原作が改変されてしまい、それを防ぐた

ねこの無邪気さや奔放さから考える、争いをつくらない「想像する心」の大切さ――『もしもねこがそらをとべたら』

 ぼくは想像してみる。もしもねこがそらをとべたら、うみをじゆうにおよげたら、のびのびとあそびたいかもしれない。でも、しずかにくらしていたとりやさかなたちはなんて思うだろう? どうしたら、だれかとあらそったり、きずつけたりしないでいられるだろう――   世界的アーティスト・黒田征太郎さんとシンガーソングライター・西島三重子さんが初共作した絵本『もしもねこがそらとべたら』が発売になりました。分断と対立が進む昨今、豊かに想像する心が他者との関わりや思いやる気持ちを刺激してくれる、

「日記の本番」1月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。くどうさんの1月の「日記の練習」をもとにしたエッセイ、「日記の本番」です。  数年前から、自分の悩みをジャンルに分けず、いま抱えている悩みのすべてを話せる相手が少なくなっていくような感覚がある。それはわたしが作家を仕事にしているからではなく、年を重ねるごとに、自分とそっくりそのまま同じような境遇の人はどんどん減っていくのだから仕方のないことだと思う。小学生の時は、結構だれとでも話が合った。毎

恋かもしれん。――「ことぱの観察 #10〔恋(後編)〕」向坂くじら

詩人として、国語専門塾の代表として、数々の活動で注目をあびる向坂くじらさん。この連載では、自身の考える言葉の定義を「ことぱ」と名付け、さまざまな「ことぱ」を観察していきます。 恋(後編) かように恋に疎いわたしだが、一度、これは恋だろうかと思ったことがある。  通っていた大学のキャンパスには、建物の裏手に一本の銀杏の木が立っていた。ふだん講義を受けたりサークル活動をしたりするときには通らない道を、さらに並木の中へ分け入ったところに、その木はある。わたしはときどきその木の足元

料理の「コツ」ってなんだろう?――料理に心が動いたあの瞬間の記録「自炊の風景」山口祐加

#1 料理の「コツ」ってなんだろう? 初めまして、自炊料理家の山口祐加です。「自炊する人を増やす」をモットーに、初心者向けの料理教室「自炊レッスン」やレシピの制作、書籍の執筆、音声配信などの活動をしています。この連載では、「料理に心が動いた時」というテーマを通じて、日々疑問に思っていることや、料理や他者との関わりの中でふと気づいたことや発見したことなどを、飾らず、そのままに綴っていきます。  いつもと同じキッチンで料理し、同じ食卓で食べていても、季節や天候、その日の気持ちによ

人見知りでも仲良くなりたい! 「来れネクストジェネレーション」――昆虫・動物だけじゃない、篠原かをりの「卒業式、走って帰った」

動物作家・昆虫研究家として、さまざまなメディアに登場する篠原かをりさん。その博識さや生き物への偏愛ぶりで人気を集めていますが、この連載では「篠原かをり」にフォーカス! 忘れがたい経験や自身に影響を与えた印象深い人々、作家・研究者としての自分、プライベートとしての自分の現在とこれからなど、心のままにつづります。第5回は人見知りな篠原さんが仲良くなりたい人のお話です。 ※第1回から読む方はこちらです。 #5 来れネクストジェネレーション 今年、私は親になる予定である。夏の初めく

「熊本かわりばんこ」が書籍化されました

「本がひらく」で好評を博した連載「熊本かわりばんこ」が書籍化されました。  長年過ごした東京を離れ故郷・熊本に暮らしの場を移した吉本由美さんと、熊本市内で書店&雑貨カフェを営む田尻久子さん。本と映画、そして猫が大好きなふたりが、熊本暮らしの手ざわりを「かわりばんこ」に綴ってきました。 18 歳で上京、64 歳で帰郷した吉本さんが綴る熊本は、かつての記憶と未知の魅力が併存する街。他界した親から譲り受けた「実家」での庭造りや多くの猫との暮らし、新たな友人たちと展開するイベントや

戒厳令を前に取り残された在留邦人。迫る期限に切り出すべき選択は――『総理になった男』中山七里/第20回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。いよいよ中国が台湾への軍事行動に移ることが現実味を帯び、台湾は戒厳令を出すことに。各国が現地から自国民たちを避難させるなか、国外退避できない在留邦人

「日記の練習」1月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。そんなくどうさんの1月の「日記の練習」です。 1月1日 初詣のために夕方母と小高い山の上の神社へ行き、戻ってきたらテレビ局がみんなおなじ警報を表示していて、こたつにいる父が「津波」と言った。 ツイッター見てツイートしてこれでいいのかわからない。そわそわして3000字書いてだれにも見せない。たくさんの「祈ります」に、それは祈りをした、をしているだけではないかと思ってしまう。でもそれ以外の方法が

凍りついたこころを溶かすふたつの変化――「不安を味方にして生きる」清水研 #16 [「こうあるべき」からの解放②]

不安、悲しみ、怒り、絶望……。人生にはさまざまな困難が降りかかります。がん患者専門の精神科医として4000人以上の患者や家族と対話してきた清水研さんが、こころに不安や困難を感じているあらゆる人に向けて、抱えている問題を乗り越え、豊かに生きるためのヒントをお伝えします。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #16 「こうあるべき」からの解放②ふたつの変化――①怒りの感情  第15回では、カウンセリングでのやりとりと私の経験をもとに、「must(~しなくてはならない)」

わたしたちは愛についてなにも言えていない。――「ことぱの観察 #09〔恋(前編)〕」向坂くじら

詩人として、国語専門塾の代表として、数々の活動で注目をあびる向坂くじらさん。この連載では、自身の考える言葉の定義を「ことぱ」と名付け、さまざまな「ことぱ」を観察していきます。 恋(前編) しかしまあ、愛がなにかを言おうとすると、なにか言う前からもう胃もたれしてくる。どうも気が乗らない。もちろん、簡単には手出しできない強敵だから、ということもあるけれど、もっと明確で、しょうもない理由がある。  ここまでいろいろな言葉を取りだしては定義をしてきた。定義をするのはおもしろい。どん

自分を許して一歩踏み出す――「不安を味方にして生きる」清水研 #15 [「こうあるべき」からの解放①]

不安、悲しみ、怒り、絶望……。人生にはさまざまな困難が降りかかります。がん患者専門の精神科医として4000人以上の患者や家族と対話してきた清水研さんが、こころに不安や困難を感じているあらゆる人に向けて、抱えている問題を乗り越え、豊かに生きるためのヒントをお伝えします。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #15 「こうあるべき」からの解放①ほんとうの自分はどこにいるのか  第14回では、自分の規範意識(must)から自由になるために行うクライエント(相談者)とのカウ

【家族写真あり】「君につなげるための物語」――昆虫・動物だけじゃない、篠原かをりの「卒業式、走って帰った」

動物作家・昆虫研究家として、さまざまなメディアに登場する篠原かをりさん。その博識さや生き物への偏愛ぶりで人気を集めていますが、この連載では「篠原かをり」にフォーカス! 忘れがたい経験や自身に影響を与えた印象深い人々、作家・研究者としての自分、プライベートとしての自分の現在とこれからなど、心のままにつづります。第4回は篠原さんが“あなた”に伝えたい、“夢”のお話です。 ※第1回から読む方はこちらです。 #4 君につなげるための物語 夢は叶えるためにあると、誰かが言っていた。子

「日記の本番」12月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。くどうさんの12月の「日記の練習」をもとにしたエッセイ、「日記の本番」です。  とても好きで、街の財産としても非常に価値があって、けれどあまり頻繁に行くことができなかった角打ちが閉店した。高校生のとき、文芸部の全国コンクールでどうしても最優秀賞が取れなくて結局一度も立つことができなかった壇上に12年ぶりに来て講師として1時間話した。「会いたい人たちとやっぱり会いたいから」という理由で思い立っ