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ミステリー小説や食エッセイから、小中学生向けの教養読み物まで、さまざまな興味・関心を刺激する作品を取りそろえています。
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#日記の練習

「日記の練習」3月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。そんなくどうさんの2月の「日記の練習」です。 3月1日 JR東日本の怪しいくらい安い乗り放題パスで母と日帰り東京旅行。行きの新幹線で朝握ってきたまだほんのりあたたかいおにぎりとおやつを出して来たので(あまりにも母親すぎる)と感動した。海苔の湿ったおにぎりを食べると学生時代のことをぎゅいんと思いだす味で泣きそうになる。魔女の文学館とリッツカールトンカフェと新国立美術館。また来ようね、と言い合っ

「日記の本番」2月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。くどうさんの2月の「日記の練習」をもとにしたエッセイ、「日記の本番」です。 オーブンレンジということはオーブン機能もあるということなのに、日ごろ暮らしていてオーブンレンジのレンジ機能しか使っていない。バレンタインデーを前に久々にケーキでも焼いてみようかと思ったのはなかしましほさんのレシピを見たからで、バターではなく油でよいというところが魅力的だった。 義弟が夫の誕生日プレゼントとしてブレンダ

「日記の練習」2月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。そんなくどうさんの2月の「日記の練習」です。 2月1日 モリユと仕事。大変捗る。札幌に行くためのチケットを取る。夜、21:30からもうひとがんばりしたかったのだが、きゅうっと搾り上げられるように睡魔に襲われていつ寝たか覚えていない。 2月2日 折角重い腰を上げてひとつの手続きをしに来たのに、その手続きをしてみたところ、これからしなければいけない手続きがもう4つあることが判明し窓口で項垂れた

「日記の本番」1月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。くどうさんの1月の「日記の練習」をもとにしたエッセイ、「日記の本番」です。  数年前から、自分の悩みをジャンルに分けず、いま抱えている悩みのすべてを話せる相手が少なくなっていくような感覚がある。それはわたしが作家を仕事にしているからではなく、年を重ねるごとに、自分とそっくりそのまま同じような境遇の人はどんどん減っていくのだから仕方のないことだと思う。小学生の時は、結構だれとでも話が合った。毎

「日記の練習」1月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。そんなくどうさんの1月の「日記の練習」です。 1月1日 初詣のために夕方母と小高い山の上の神社へ行き、戻ってきたらテレビ局がみんなおなじ警報を表示していて、こたつにいる父が「津波」と言った。 ツイッター見てツイートしてこれでいいのかわからない。そわそわして3000字書いてだれにも見せない。たくさんの「祈ります」に、それは祈りをした、をしているだけではないかと思ってしまう。でもそれ以外の方法が

「日記の本番」12月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。くどうさんの12月の「日記の練習」をもとにしたエッセイ、「日記の本番」です。  とても好きで、街の財産としても非常に価値があって、けれどあまり頻繁に行くことができなかった角打ちが閉店した。高校生のとき、文芸部の全国コンクールでどうしても最優秀賞が取れなくて結局一度も立つことができなかった壇上に12年ぶりに来て講師として1時間話した。「会いたい人たちとやっぱり会いたいから」という理由で思い立っ

「日記の練習」12月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。そんなくどうさんの12月の「日記の練習」です。 12月1日 キコと安藤さんと平興へ。わたしははさみ将棋が強い、と豪語していたことを覚えていた名人が「やるか!」と言ってくれたがぼろ負け。一気にふたつの駒を取られたとき、我ながらあまりの愚かさに笑ってしまった。あらゆる「最後」が苦手なので、閉店する前の最後の来店だろうということはあまり考えないようにした。 12月2日 ようやくワインオープナーを

「日記の本番」11月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。くどうさんの11月の「日記の練習」をもとにしたエッセイ、「日記の本番」です。 8歳から成人するまでの間、わたしは同じ夢を見ることがあった。それは決まって高熱のときで、わたしは大きな風邪やインフルエンザになるたびに同じ夢を見た。 黒い球にひたすら追いかけられる夢。言葉にするとあまりにも単純な悪夢だが、それは映像としても本当にシンプルなものだった。わたしの目の前に、真っ暗闇が果てしなく広がってい

「日記の練習」11月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。そんなくどうさんの11月の「日記の練習」です。 11月1日 何もかもが手遅れな一日。忙しさに追い詰められたら、むくむくとどこかへ行きたくなって咄嗟に11月中の京都行きを決めた。格安航空が格安でびっくり。はじめて飛行機にひとりで乗るんだと思ったらもう緊張してきた。わたしは生活に過度な負荷が掛かりはじめると、忙しさの中を飛び出すように、スケジュールを無理やり突き破って突拍子もない遠出を試みようと

「日記の本番」10月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。くどうさんの10月の「日記の練習」をもとにしたエッセイ、「日記の本番」です。 先行きが不安になると会社勤めの人たちと同じ行動をしたくなる。だから8時には家を出て、出勤ラッシュのスーツの波に飲まれながら作業場まで歩く。働いていた四年間は車通勤をしていて、いつも会社にいちばん近い駐車場に停めて、始業ギリギリの時間に滑り込むように到着していたから、実際はこんな風にたくさんの通勤者と共に歩いていたわ

「日記の本番」9月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。くどうさんの9月の「日記の練習」をもとにしたエッセイ、「日記の本番」です。 ゆきちゃんのガラケーを借りて、10年前書いた日記を読んだ。高校生の時にわたしが日記を書いていた「ホムペ」は、サービスが終了してしまったのでもう二度と見ることができない。もう一文字も読み返すことがないと思っていた日記を大事に保存してくれていた人がいて、その人が、仙台のサイン会でそのことを教えてくれなければ、わたしはもう

「日記の練習」9月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。そんなくどうさんの9月の「日記の練習」です。 9月1日 どうしてパーマかけたんですか?と訊かれるたびに、この人はきっと前の髪型のほうが好きだったんだろうなと思う。自分でもうまく言えないけど、皆が好きそうで、自分に似合うこともわかっている髪型でいることが突然ダサいようなきがしてきたんです。とも言えず、いやァ~イメチェンしたくってねえなどへらへらしてしまう。ややこしいやつである感じを髪型から表し

「日記の本番」8月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。くどうさんの8月の「日記の練習」をもとにしたエッセイ、「日記の本番」です。 小学生のとき、ゲームボーイカラーを持っていた。ねだって買って貰った記憶はあるのだが、欲しかったのは「みんなが持っているから」という理由であり、むかしから、ゲーム自体はぜんぜんハマらない性格だった。(ゲームって、でも、現実じゃないしなあ)と、やけに俯瞰して、その時間を有意義に思えないのだった。みんながポケモンをやってい

「日記の練習」8月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。そんなくどうさんの8月の「日記の練習」です。 8月1日 福引。赤、赤、赤、赤、赤、紫、赤、赤、赤、赤、赤、赤。 8月2日 「青春みたい」と帰り際言い合って、青春ってこの人生をつくづく気に入っているって意味かもしれない。 8月3日 ちいさなしゃぼん玉が出続ける機械があれば、ちいさなしゃぼん玉が出続ける機械を乗せた車をゆっくりと押し続ける仕事の人もいる。 8月4日 ミドリが「おれは焼きそば