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教養・ノンフィクション

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#教養

【著者インタビュー】日本の資本主義を支えてきた、人々の「ある欲求」とは? 気鋭による書き下ろしの力作が刊行されます

――なぜこのような本を書こうと思われたのでしょうか?  会社がなぜ、人としての成長や自己向上を社員に求めるのか不思議に思ったことが、きっかけです。私は大学を卒業後、ある生命保険会社に就職したのですが、新入社員研修でいきなり、デール・カーネギーの『人を動かす』(1936年刊)をプレゼントされました。「人に好かれる6原則」とか、「人を変える9原則」など、成功するための“名言”がまとめられた、有名な“成功哲学”本です。  社員研修では、仕事に必要な専門知識を学ぶだけでなく、「働

「置いてみたら売れた」。今どきそんな本が?! ……あるんです、本当に。--NHKブックス「名著復刊」20タイトル

 「置いてみたら売れた」と、広告でよく見かけるような見出しになってしまいました。でも本当のことです。NHKブックスという「シリーズ」の本、それも数年前までに出た20タイトルです。「まだまだ読者がいるはず」と思われた本を20冊選んで、この6月に一斉に復刊(増刷)ました。そのリストを全国に配って、いくつかの書店で置いてもらうと……売れたそうなのです。  とある大都市の、しかし中心部ではなく住宅街ちかくにある書店から「NHKブックスをこれまで置いたことがなかったが、置いてみたら売

シン・アナキズム 第4章 ポランニーとグレーバー (その7)

機能的社会主義について(4) 交渉価格とは 話がごちゃごちゃしてしまっているが、こうした要素を考慮した形での価格決定に際して、生産アソシエーションと協議を行い、価格と財の配分を決定するもう一方の主体が、コミューンあるいは消費協同組合といった消費アソシエーションである。  ポランニーはコミューンを「政治共同体、地域アソシエーション、機能的国家、地域の役所、働き手の代表評議会、社会主義国家など」 [※1]を指すものとしている。ここではコミューンはその政治的役割を中心に定義され

哲学ディベート――人生の論点『実践・哲学ディベート』新刊のお知らせ! 高橋昌一郎

●「哲学ディベート」は、相手を論破し説得するための競技ディベートとは異なり、多彩な論点を浮かび上がらせて、自分が何に価値を置いているのかを見極める思考方法です。 ●本連載では「哲学ディベート」を発案した哲学者・高橋昌一郎が、実際に誰もが遭遇する可能性のあるさまざまな「人生の論点」に迫ります。 ●舞台は大学の研究室。もし読者が大学生だったら、発表者のどの論点に賛成しますか、あるいは反対しますか? これまで気付かなかった新たな発想を発見するためにも、ぜひ視界を広げて、一緒に考えて

シン・アナキズム 第4章 ポランニーとグレーバー (その6)

機能的社会主義について(3) 先月発売のちくま新書『ホモ・エコノミクス』が好評の重田園江さんによる、ポップかつ本格派の好評連載「アナキスト思想家列伝」は第15回を迎えました。「どんどん難しくなっているようで申し訳ない感じ」という重田さんですがここは踏ん張りどころ。「もう一つの社会のあり方」を本当に想像できる連続2回の1回目です。キーワードは引き続きカール・ポランニーの「機能的社会主義」。まずは500円分の切手の話から! ※これまでの各シリーズは下記よりお読みいただけます。

「論文を書く力」は、一生もののスキルです!――対談:山内志朗×戸田山和久(後編)

論文対談もいよいよ佳境に入ります。論文のテーマ設定、社会の出ても役に立つ卒論執筆の効用……大学新入生のみなさんから、社会人、年輩の方まで、幅広い層に必ず役に立つ「知の羅針盤」。熱いメッセージに、ぜひ耳を傾けてみてください。 *対談の前編はこちらです。 文章指南のコツ山内 『論文の教室』には、学生さんの反応とかを見ながら書いたところはありますか。  戸田山 僕の場合、原稿を見てもらって「どう?」というのは、ちょっと怖くて(笑)。でも、内容には学生さんたちの過去のさまざまな言動

連載 シン・アナキズム 第4章「ポランニーとグレーバー」(その5)

「機能的社会主義」について(2) 重田園江さんによる、ポップかつ本格派の好評連載「アナキスト思想家列伝」第14回! 前回に引き続き、カール・ポランニーの「機能的社会主義」という魅力的なアイデアの歴史的背景を明らかにしていきます。 ※これまでの各シリーズは下記よりお読みいただけます。 「序 私はいかにして心配するのをやめ、アナキストについて書くことにしたか」へ 「ジェイン・ジェイコブズ編」の第1回へ 「ヴァンダナ・シヴァ編」の第1回へ 「ねこと森政稔」の第1回へ 「ポランニー

新入生しょくん、まずは「論文の書きかた」を身につけよう――対談:山内志朗×戸田山和久(前編)

新入生のみなさん、入学おめでとうございます。新しい一歩を踏み出す前に覚えておきたいのが「論文の書きかた」。『新版 ぎりぎり合格への論文マニュアル』(平凡社新書)の著者・山内志朗先生(慶應義塾大学)と、『最新版 論文の教室』(NHKブックス)の著者・戸田山和久先生(名古屋大学)に、論文執筆をテーマに語り合っていただきました。大学新入生のみならず、学び直しを目論む社会人のみなさんにも必ず役に立つ「知の羅針盤」。まずはその前編をお届けします。 戸田山 きょうのお題は、山内さんの『

連載 シン・アナキズム 第4章「ポランニーとグレーバー」(その4)

「機能的社会主義」について(1) 重田園江さんによる、ポップかつ本格的な好評連載「アナキスト思想家列伝」第13回! カール・ポランニーの「アナキスト的心性」を探求しながら、彼の「機能的社会主義」というアイデアの歴史的背景を明らかにします。 ※これまでの各シリーズは下記よりお読みいただけます。 「序 私はいかにして心配するのをやめ、アナキストについて書くことにしたか」へ 「ジェイン・ジェイコブズ編」の第1回へ 「ヴァンダナ・シヴァ編」の第1回へ 「ねこと森政稔」の第1回へ 「

アメリカ文学史に屹立する「何もしない」英雄――『教養としてのアメリカ短篇小説』より、「書記バートルビー」を読み解く第2講を全文公開!

 “I would prefer not to.”(「わたくしはしない方がいいと思います」)とは、『白鯨』の著者として知られるハーマン・メルヴィルの短篇小説「書記バートルビー」に出てくる表現です。上司に言いつけられた仕事をこの言葉によって拒絶しつづけ、それ以外一切の説明をしない奇妙な人物・バートルビー。アメリカ文学史に屹立するこの「英雄」の物語が発表されたのは1853年。150年以上前の作品ですが、先ごろ日本経済新聞の一面下コラム「春秋」(https://www.nikkei

連載 シン・アナキズム 第4章「ポランニーとグレーバー」(その3)

「自己調整的市場」について(2) 政治思想史家・重田園江さんの好評連載「アナキスト思想家列伝」第12回! 毎月のように新しい本が出る「アナキズム」っていったい何なのか? その魅力をビシバシと伝えます。今回もカール・ポランニーとデヴィッド・グレーバーについて取り上げます。 ※これまでの各シリーズは下記よりお読みいただけます。  「序 私はいかにして心配するのをやめ、アナキストについて書くことにしたか」へ  「ジェイン・ジェイコブズ編」の第1回へ  「ヴァンダナ・シヴァ編」の第

連載 シン・アナキズム 第4章「ポランニーとグレーバー」(その2)

「自己調整的市場」について(1) 政治思想史家・重田園江さんの好評連載「アナキスト思想家列伝」第11回! 毎月のように新しい本が出る「アナキズム」っていったい何なのか? その魅力をビシバシと伝えます。今回は前回に続いてカール・ポランニーとデヴィッド・グレーバーについて取り上げます。 ※これまでの各シリーズは下記よりお読みいただけます。  「序 私はいかにして心配するのをやめ、アナキストについて書くことにしたか」へ  「ジェイン・ジェイコブズ編」の第1回へ  「ヴァンダナ・シ

連載 シン・アナキズム 第4章「ポランニーとグレーバー」(その1)

ポランニーの生涯と思想 前回の「ねこと森政稔(全2回)」で新たな読者を得た、政治思想史家・重田園江さんの好評連載「アナキスト思想家列伝」第10回! 毎月のように新しい本が出る「アナキズム」っていったい何なのか? その魅力をビシバシと伝えます。今回は真打ちグレーバー登場。そして彼と意外なつながりをもつ、偉大な思想家を紹介します。 ※これまでの各シリーズは下記よりお読みいただけます。  「序 私はいかにして心配するのをやめ、アナキストについて書くことにしたか」へ  「ジェイン・

「これは、まぎれもない哲学書である」――【古田徹也寄稿】『ハイデガー 『存在と時間』を解き明かす』について

新刊『ハイデガー 『存在と時間』を解き明かす』の売れ行きが好調です。著者・池田喬さんと十数年の親交をもつ盟友・古田徹也さんに、この本を紹介していただきます。今年の春、古田さん著『はじめてのウィトゲンシュタイン』を池田さんに紹介していただきましたが、今回はその逆をやっていただきました。こんな本が出たら読まない手はないだろうと思わせる、魅惑の紹介文を掲載します。  本書はまずもって、『存在と時間』についてのとても分かりやすい解説書である。  現代の古典『存在と時間』は、二十世