小説・エッセイ

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日比谷の書店員のリアルな日常、街の情景、本の話――「日比谷で本を売っている。〔POP…

※当記事はエッセイ連載の第15回です。第1回から読む方はこちらです。  遅番の日、夕方のピークが終わってホッと一息吐いたころだった。店長の花田菜々子がレジに近付いてきて、私を呼ぶ。この店のいいところは、みんな偉いし、誰も偉くないところだ。肩書きにかかわらず、自由に意見を言い合える。 …

日比谷で働く書店員のリアルな日常、街の情景、本の話――「日比谷で本を売っている。〔…

※当記事はエッセイ連載の第14回です。第1回から読む方はこちらです。  知人の作家が、Twitterのリプライで焼き野菜の作り方を質問され、なぜそんなことを聞くのかと困惑していた。彼女は料理研究家でも野菜の専門家でもない。そもそも焼き野菜は、野菜を焼いただけである。投稿した写真には、焦げ目…

日比谷で働く書店員のリアルな日常、日比谷の情景、そして、本の話――新井見枝香「日比…

※当記事はエッセイ連載の第13回です。第1回から読む方はこちらです。  近所の小学校の校庭を囲むフェンスに、生徒が夏休みの宿題で作った俳句が掲示されている。どうも冬休みには作らなかったようで、枯れ葉が散って3学期が始まっても、そのままだ。特に冷え込む今日この頃、前を通る度に、夏が恋し…

日比谷で働く書店員のリアルな日常、日比谷の情景、そして、本の話――エッセイ「日比谷…

※第1回から読む方はこちらです。  うさぎを追って穴に飛び込んだアリスは、元の世界に戻れないと、ハートの女王に泣きついたのだが、猫を追って路地裏に迷い込んだ私は、お家に帰れないと、Googleマップに頼ってしまった。情けない。  それにしても、不思議な猫だった。動物に好かれない私は、犬な…

日比谷で働く書店員のリアルな日常、日比谷の情景、そして、本の話――エッセイ「日比谷…

※連載第1回から読む方はこちらです。  髪の長い人には、定期的に「バッサリいきたい」という発作が訪れるようだ。髪は1年間に、約12センチほどしか伸びないと言われる。襟足を刈り上げるようなショートカットから背中の真ん中辺りまで伸ばすとなると、最低でも3年はかかるだろう。なんてことをして…

日比谷で働く書店員のリアルな日常、日比谷の情景、そして、本の話――エッセイ「日比谷…

※連載第1回から読む方はこちらです。  炊きたてのつやつや新米に、こんがり肉厚な鯖の塩焼き、刻み葱を乗せた具だくさんの豚汁と、箸休めの塩もみキャベツ、ご飯のお供は細かく刻んだ京都の柴漬け…。友人からLINEで送られてきた写真に、猛烈な食欲が湧いた。スマホを見ながら菓子パンで朝食を済ま…

日比谷で働く書店員のリアルな日常、日比谷の情景、そして、本の話――エッセイ「日比谷…

※連載第1回から読む方はこちらです。 「ヤクルトレディ」に初めて会った。もちろん道ですれ違うことは何度もあったが、制服を着た彼女たちは、たいてい自転車に乗って、スイスイとどこかへ向かっている。「1本くださいな」と声を掛けて呼び止めるのは気がひけるし、そもそもそういう石焼き芋的な買い…

エッセイ「日比谷で本を売っている。」第8回 〔秘湯と白猿〕新井見枝香

 日比谷で働く書店員のリアルな日常、日比谷の情景、そして、本の話(第8回)。※最初から読む方はこちらです。  秘湯と呼ばれるその温泉は、気が遠くなるほどつづら折りを繰り返した、山の奥の奥にあった。江戸時代には、立派な茅葺き屋根の宿が3軒並んでいたそうだが、今はいちばん奥の1軒を残す…

エッセイ「日比谷で本を売っている。」〔大人の矛盾と子供のモヤモヤ〕新井見枝香

日比谷で働く書店員のリアルな日常、日比谷の情景、そして、本の話(第7回)。※最初から読む方はこちらです。  勤め先の書店がある商業施設「日比谷シャンテ」は、地下2階で日比谷駅に直結している。その通り道には、大好きなスターバックスがあって、通りかかるたびに甘いドリンクを飲む習慣がつい…

エッセイ「日比谷で本を売っている。」 〔ナマケモノと私〕新井見枝香

日比谷で働く書店員のリアルな日常、日比谷の情景、そして、本の話(第6回)。※最初から読む方はこちらです。  最近、私の部屋にはナマケモノがいる。手足がひょろ長くて、目がぱっちりとしたぬいぐるみだ。それは書店員の傍ら、踊り子としてデビューした際に、お客さんからもらったものである。ど…