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ミステリー小説や食エッセイから、小中学生向けの教養読み物まで、さまざまな興味・関心を刺激する作品を取りそろえています。
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2023年11月の記事一覧

スポーツの祭典の裏でうごめく外交問題――『総理になった男』中山七里/第16回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。選手たちの思いを胸に、熱いメッセージを伝えてオリンピック・パラリンピック開催の是非を問う国会答弁を乗り切った慎策。いよいよ開会式前日、各国の来賓たち

連載 ロジカルコミュニケーション入門――【第8回】多種多彩な「論証」を使ってみよう!

●論理的思考の意味  本連載【第1回】「論理的思考で視野を広げよう!」では、「論理的思考」が「思考の筋道を整理して明らかにする」ことであると解説した。たとえば「男女の三角関係」のように複雑な問題であっても、思考の筋道を整理して明らかにしていく過程で、発想の幅が広がり、それまで気づかなかった新たな論点が見えてくる思考法である。  【第2回】「論理的思考で自分の価値観を見極めよう!」では、「ロジカルコミュニケーション」によって新たな論点を探し、反論にも公平に耳を傾け、最終的に自

「うん。やさしいために」――「ことぱの観察 #04〔やさしさ〕」向坂くじら

詩人として、国語専門塾の代表として、数々の活動で注目をあびる向坂くじらさん。この連載では、自身の考える言葉の定義を「ことぱ」と名付け、さまざまな「ことぱ」を観察していきます。 やさしさ バスのあの席が戻ってきた。  あの席だ。前方の扉から乗り込んですぐ、運転席の真後ろにある、一人掛けの席。バス通学だった中学生のころから、わたしはあの席が好きでしかたない。  まず、少し高いのがいい。ほかの席と違って、あの席に座るためには、二、三段階段を上らないといけない。そのぶん、外の景色も

困難な現実は人を成長させる――「不安を味方にして生きる」清水研 #12 [悲しみという感情の役割②]

不安、悲しみ、怒り、絶望……。人生にはさまざまな困難が降りかかります。がん患者専門の精神科医として4000人以上の患者や家族と対話してきた清水研さんが、こころに不安や困難を感じているあらゆる人に向けて、抱えている問題を乗り越え、豊かに生きるためのヒントをお伝えします。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #12 悲しみという感情の役割② 前回では悲しみという感情の役割について説明しましたが、悲しんでいるとき、こころには一生懸命がんばっている面もあり、多くのエネルギーを

傷つけたが、傷つけられもした――「マイナーノートで」#32〔とりかえしのつかないものたち〕上野千鶴子

各方面で活躍する社会学者の上野千鶴子さんが、「考えたこと」だけでなく、「感じたこと」も綴る連載随筆。精緻な言葉選びと襞のある心象が織りなす文章は、あなたの内面を静かに波立たせます。 ※#01から読む方はこちらです。 とりかえしのつかないものたち 若手の写真家(もう若くないかもしれないが)、藤岡亜弥さんから、東京で写真展をするからギャラリートークに出てほしいと頼まれたとき、彼女の作品を見ながらとっさに思いついたタイトルが「とりかえしのつかないものたち」だった。そのタイトルを提

泣きたいときに泣く大切さ――「不安を味方にして生きる」清水研 #11 [悲しみという感情の役割①]

不安、悲しみ、怒り、絶望……。人生にはさまざまな困難が降りかかります。がん患者専門の精神科医として4000人以上の患者や家族と対話してきた清水研さんが、こころに不安や困難を感じているあらゆる人に向けて、抱えている問題を乗り越え、豊かに生きるためのヒントをお伝えします。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #11 悲しみという感情の役割① 第9回、第10回に登場された室田隆さん(仮名・38歳男性)は、がん告知後に激しい怒りの感情が起こったといいます。室田さんは進行したす

追悼 マシュー・ペリー――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、アメリカのドラマ「フレンズ」に出演していた俳優、マシュー・ペリーの訃報に触れて、考えたことです。 ※当記事は連載の第32回です。最初から読む方はこちらです。 #32 さようなら、チャンドラー 最近気づいたのだが、私は何かに順位をつけるのがとても苦手だ。年末になると、本でも映画でも「今年のベスト1は?」という質問を受けるのだが、どうしても選べない。例えば、

チャーハンを通して26年ぶりに父と和解した(元カリスマホスト、タレント・城咲仁) 【前編】

「しっとりチャーハンの聖地」と呼ばれ、全国から客が行列する、東京・板橋区の町中華「丸鶴」。連載の6、7回で登場した、店主・岡山実さんのひとり息子は、元カリスマホストで、タレントの城咲仁さん(46)だ。店の後継をめぐって、長年わだかまりのあった親子が、チャーハンを通して和解のときを得たという。 ■18歳で「店は継げない」と家を飛び出した ──連載の6、7回で丸鶴の店主・岡山実さん(77)にお話を伺いました。多くの町中華同様、丸鶴も跡継ぎの問題を抱えていましたが、城咲さんは子ど

総理大臣としてオリンピック開催の意義を問う――『総理になった男』中山七里/第15回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。東京でのオリンピック・パラリンピック開催まであと数日に迫ったタイミングで舞い込んできた、大会組織委員会理事の逮捕の一報。進むも地獄、退くも地獄のなか

「日記の練習」10月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。そんなくどうさんの10月の「日記の練習」です。 10月1日 10月2日 10月3日 10月4日 3日だと思ってまだ東京出張まで日があると思っていたらきょうが4日だった。1日分想定がずれて予定がめちゃくちゃに。 ニュースを見ていると気が滅入るが、自分のスケジュールを見ているとありがたいものばかりで元気が出て、しかしほんとうにうまくやれるのか心配で出たばかりの元気がなくなる。 10月5

このメイクは、侮りそのものではなかろうか。――「ことぱの観察 #03〔敬意とあなどり〕」向坂くじら

詩人として、国語専門塾の代表として、数々の活動で注目をあびる向坂くじらさん。この連載では、自身の考える言葉の定義を「ことぱ」と名付け、さまざまな「ことぱ」を観察していきます。 敬意とあなどり 誰かに敬意を払うためにはどうしたらいいのか、ということで、よく悩まされている。たとえば、お金を払ったり、もらったりするとき。わたしの場合はフリーランスなので、ふだん仕事以外でも親交のある人からその日だけギャランティーをいただく、ということがたびたびあるし、その逆もある。そういうとき、な

「あゆ」になれなかったわたし――お題を通して“壇蜜的こころ”を明かす「蜜月壇話」

タレント、女優、エッセイストなど多彩な活躍を続ける壇蜜さん。ふだんラジオのパーソナリティとしてリスナーからのお便りを紹介している壇蜜さんが、今度はリスナーの立場から、ふられたテーマをもとに自身の経験やいま思っていることなどを語った連載です。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #19 「ああ」と声が出てしまうほど恥ずかしい恋愛エピソード 子供のころは、「魔法少女」系のアニメやマンガに夢中だった。とにかく変身して大活躍、愛と希望を振りまく魔法少女に憧れて、いつか自分にも

オリンピックを招待した国としての責任――『総理になった男』中山七里/第14回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。選手たちから直接声を聞き、オリンピック・パラリンピックの開催に向けて意志が固まった慎策。しかしそこへ次なる試練が舞い込む――  *第1回から読む方は