未来の自分を信じて。「信じているぞ」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく
「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。
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#30 信じているぞ
こどくは統合失調症VTuberとして活動している。昨今、未曾有のVTuberブームで、さまざまなVTuberがいるが、こどくはVTuberとして活動するにあたり、自分に課している決めごとがいくつかある。
ひとつは、「耐久配信をしない」ことだ。耐久配信とは、一定のライン、たとえば、一定のチャンネル登録者数や視聴者数を超えるまで配信を続ける、といったものだ。ゲームでボスをクリアするまで、という耐久配信もある。
こどくがなぜ耐久配信をしないかというと、体力の消費による体調の維持がむずかしいからだ。耐久配信は、耐久なだけあって長時間配信がおおい。統合失調症という病気を持つこどくにとって、体力を著しく消費する配信はできるだけやりたくない。
つぎに、「数を追わない」ということだ。チャンネル登録者数や視聴者数が増えるとそれはそれでうれしいが、よろこびすぎないようにしている。数が減って落ち込まないようにすることにも気をつけている。
人間だれしも「飽き」はあるだろうし、やむを得ない事情で配信に来られない場合もあるだろう。数を追うことに必死になりすぎず、ひとりひとりをたいせつにするようこころがけている。
さいごは、「未来のこどくに任せる」ということ。こどくは、いまできることを全力でして、のこりはすべて未来のこどくを信じることにしている。
たとえば、「こんな企画したいなあ」と思いついたとする。でも、こどくのなかで、「この企画、すごくいいからもっとさきでやろうよ」というきもちがひょっこり出てくる。そんなときに、「いや、未来のこどくはきっともっといい企画を思いつくから、いまやっちゃおう」と、思いなおすのだ。
未来のこどくは、きっといまのこどくのさきを行っている。だから、そんなこどくを信じるのだ。
こうやって、決めごとを設けておくことで、こどくはこれまでの活動をなんとかやってこられた。きっとこれからもそうだろう。
信じているぞ、未来のこどくよ。
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※本連載は毎週月曜日に更新予定です。
プロフィール
もりのこどく
VTuber。「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」。そんな思いで19歳で配信を始めた。バーチャルの強みを生かして、当事者たちの居場所をクラウドファンディングでメタバース上に創るなど幅広く活動。2023年、SDGsスカラシップ岩佐賞を受賞。