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むりをしなければ、「息災」でいられる可能性はじゅうぶんある。「有病息災」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。
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#29 有病息災

 よく、神社やお寺に行く。こどくは古い建物がすきなので、遠方でも、行ければ行く、程度のノリで行く。また、近所の神社やお寺にも、おまいりやさんぽのついでで行く。
 そんなとき、なにをお願いするだろうか。
 恋愛成就、合格祈願、交通安全、無病息災。このなかで、こどくには決してかなわないものがある。無病息災だ。
 こどくは統合失調症という病気を持っている。そしてこの病気は、一生おくすりを飲み続ける、なが〜いお付き合いをしなければならない病気だ。
 だから、「無病」の時点で、もうこどくにはかなわないのだ。
 しかし、絶望する必要はない。たとえ「有病」でも、「息災」はかなう。おくすりを飲んで、むりをしなければ、「息災」でいられる可能性はじゅうぶんあるのだ。
 だからこどくは、神社やお寺では、「有病息災」を願う。
 なるだけむりはしませんから、病気があってもいいですから、どうかこれ以上体調が悪くなりませんように。
 こどくはいつも、そう願う。そして、こどくも、そうあるように努力する。おくすりを飲み、むりをせず、それでいて毎日をたのしむ。
 「有病」でも、こどくは人生をたのしめる。そう思うと、あしたもたのしみになる。
 こどくは今日も、「有病息災」だ。

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※本連載は毎週月曜日に更新予定です。

プロフィール

もりのこどく
VTuber。「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」。そんな思いで19歳で配信を始めた。バーチャルの強みを生かして、当事者たちの居場所をクラウドファンディングでメタバース上に創るなど幅広く活動。2023年、SDGsスカラシップ岩佐賞を受賞。

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