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小説・エッセイ

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人気・実力を兼ね備えた執筆陣によるバラエティー豊かな作品や、著者インタビュー、近刊情報などを掲載。
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#小説

物理的証拠がなく見えない先行き。被害者の生前の姿と人柄に手がかりは――中山七里「彷徨う者たち」

本格的な社会派ヒューマンミステリー『護られなかった者たちへ』『境界線』に続く、「宮城県警シリーズ」第3弾。震災復興に向けて公営住宅への移転が進む仮設住宅で発生した、殺人事件。14年の歳月が、幼馴染たちの境遇も互いの関係性を変えた。自身の苦い思い出を胸に蓮田は―― ※当記事は連載第5回です。第1回から読む方はこちらです。 二  再建と利権1  二回目の捜査会議は東雲の仏頂面で始まった。  前回に告げられた捜査方針は鑑取りの継続で掛川と接点のある者を洗い出すことと、犯人の逃走

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捜査とともに埋められていく14年の空白、呼び覚まされていく幼馴染との思い出――中山七里「彷徨う者たち」

本格的な社会派ヒューマンミステリー『護られなかった者たちへ』『境界線』に続く、「宮城県警シリーズ」第3弾。震災復興に向けて公営住宅への移転が進む仮設住宅で発生した、殺人事件。幼馴染・大原知歌の思わぬ過去を知った蓮田刑事は、複雑な思いを抱えて捜査会議を迎えるが―― ※当記事は連載第4回です。第1回から読む方はこちらです。 4  一回目の捜査会議は事件発生と初動捜査の成果を報告する場に留まった。  司法解剖についてはまだ報告が届いていないため、唐沢検視官の見立てで話が進められ

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【朗読あり】芥川賞作家・小野正嗣が伝える文学への熱い思い――村田沙耶香『コンビニ人間』を読み解くには

 小野正嗣さんの新刊『歓待する文学』が2021年11月25日に刊行されました。  芥川賞作家であり、フランス語・英語の翻訳を手掛け、早稲田大学教授にしてNHK「日曜美術館」でキャスターを務める小野さんは、常に新しい文学作品を探し求め、評論する名うての読み手でもあります。その多岐にわたる活動を支えているのは、文学や創作への深い愛情と言葉への揺るぎない信頼にほかなりません。  本書では、世界の文学16作品を紹介しながら、小野さんの文学に対する熱い思いを余すところなく語っています。

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14年ぶりの同級生との再会がもたらす、変わらないと、変わってしまったもの――中山七里「彷徨う者たち」

本格的な社会派ヒューマンミステリー『護られなかった者たちへ』『境界線』に続く、「宮城県警シリーズ」第3弾。震災復興に向けて公営住宅への移転が進む仮設住宅で発生した、殺人事件。聞き込みを続ける笘篠刑事と蓮田刑事の前に、蓮田の幼馴染が表れて―― ※当記事は連載第3回です。第1回から読む方はこちらです。 3 「どうして知歌がここにいるんだよ」 「将ちゃん何でここに」 「俺は事件の捜査で」 「わたしは皆本さんの担当で」  二人でほぼ同時に喋るものだから騒々しいことこの上ない。傍か

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「NHK100分de名著 ヘミングウェイ スペシャル」出演の著者がエドガー・アラン・ポー「黒猫」を読み解く! 10/15(金)発売『教養としてのアメリカ短篇小説』より、第1講を抜粋公開

「100分de名著 ヘミングウェイ スペシャル」で指南役を務めている早稲田大学文学学術院教授の都甲幸治さん。ドミニカ共和国出身でアメリカ合衆国に移民した作家ジュノ・ディアスの翻訳などで知られ、自身でも「今まで自分はマイノリティ文学に特化して読んできた」という都甲さんが、アメリカ文学の“王道”ともいえるメジャー作家たちの短篇小説13作品を読み解く『教養としてのアメリカ短篇小説』が10月15日(金)に発売となりました。  それぞれの小説についての講義は、まず作品のあらすじを振り返

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取り壊しが進む仮設住宅で起きた密室殺人事件の謎――中山七里「彷徨う者たち」

本格的な社会派ヒューマンミステリー『護られなかった者たちへ』『境界線』に続く、「宮城県警シリーズ」第3弾。震災復興に向けて公営住宅への移転が進む仮設住宅で発生した、殺人事件。鍵や窓は内側から施錠され、天窓ははめごろし。いったいどのようにして犯行がなされたのか―― ※当記事は連載第2回です。第1回から読む方はこちらです。 2  美弥子が立ち去るのを見送った後、笘篠は別の住宅の方に歩き出した。 「笘篠さん」 「まだ転居していない入居者が三世帯ある。たった三世帯なら俺たちが地取

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佐藤健主演で話題の映画『護られなかった者たちへ』に連なる社会派ヒューマンミステリー――中山七里「彷徨う者たち」

ミステリーにとどまらず、社会問題に鋭く切り込みながらそれに翻弄される人々の人間模様を色濃く描いたストーリーが人気の「宮城県警シリーズ」。『護られなかった者たちへ』『境界線』に続く本作は、笘篠&蓮田刑事の名コンビ第3弾。直面する難事件に、笘篠はどのように挑み、蓮田は何を選択するのか―― 一 解体と復興1  八月十五日、宮城県本吉郡南三陸町歌津吉野沢。  渡辺憲一(わたなべけんいち)は作業の手をいったん止め、高台から伊里前湾を眺めた。海はここから一キロ以上離れており、波の具合

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私はとても上手に針を刺すことができます――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス小説「ここからは出られません」藤野可織

 妊娠安定期に入った鳩里鳩子だが、彼女の心配は尽きない。  彼女の信念では、生まれてくる子はあらゆる意味で「完璧」でなければならないのだ。  自然かつ完璧な状態で、すべての「特権」を掌握できる存在……。  そんな彼女が選んだ選択は――。  ※当記事は連載第4回です。第1回から読む方はこちら。  私がそれを申し出たとき、私の産婦人科医はぎくりと肩を震わせる。羊水検査だ。私のつわりはすっかりおさまっている。尿検査でもケトン体は出ていない。すべての数値が正常だ。胎児にも問題は見ら

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限定特典付き販売も! 佐藤健ら豪華キャストで映画化される『護られなかった者たちへ』の原作小説、大迫力のフルカバー帯バージョン登場!

 ミステリー小説の名手・中山七里さんのヒューマン・ミステリー『護られなかった者たちへ』は、刊行以来、読者や書店員の皆さまの大きな反響を呼び続けてきました。そして2021年10月1日(金)、ついに本書を原作とする映画が封切られます。主演の佐藤健さんをはじめ阿部寛さんや清原果耶さんなど、映画「護られなかった者たちへ」は実力派俳優が勢ぞろいの力作です。  この映画公開を記念して、4月23日(金)から新たな装いのフルカバー帯をはじめ、この機会にしか手に入らない限定特典をご用意したキャ

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今の私には人殺しができない――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス小説「ここからは出られません」藤野可織

 妊娠が判明した鳩里鳩子だが、その信条は確固として変わらない。自分より強い者しか殺さない。そんな彼女は、複数の「女性だけ」が殺された事件を「無差別通り魔事件」と報道するニュースに憤る。しかし、その後に訪れた未体験のつわりという悪夢が彼女の心をかき乱し――。  ※当記事は連載第3回です。第1回から読む方はこちら。  吐き気にもいろいろある。二日酔い。風邪。胃腸炎。食中毒。そういうのはただただ最悪だけど、そうでもないのもあって、それは高揚と緊張と集中がぴんと張り詰めたときに感じ

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2020年「本がひらく」で話題を呼んだ記事5選を振り返り――韓国ドラマからラッパー評伝、サイコサスペンス小説まで

 今年一年「本がひらく」をご愛読くださり、本当にありがとうございました! 2020年1月15日にサイトを立ち上げて以降、「何ができるか」「何をやるべきか」を考えて実践しているうちに、あっという間に一年を迎えようしています。  そこで、この一年を振り返る代わりに、「本がひらく」で反響のあった記事のいくつかをここでご紹介します! ①日本でも大注目の韓ドラ! EXOのド・ギョンス(D.O.)が初挑戦した時代劇が話題に 昨年、NHK-BSプレミアムで国内初放送され、今年5月には地

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映画続報に沸く『護られなかった者たちへ』(主演・佐藤健)のシリーズ続編『境界線』——情報化社会の闇ビジネスと人々の祈りを描く骨太の社会派長編小説

復興への祈りを込めたヒューマンミステリー 12月16日(水)に中山七里さんの新作小説『境界線』が発売されます。この日は中山さんの誕生日です。そして今年は中山さんの作家デビュー10周年の記念イヤー。そのキャンペーンの一環として実施している「単行本12か月連続刊行」のフィナーレを飾るのが本書です。  本作は2018年に刊行された『護られなかった者たちへ』につらなる、“宮城県警シリーズ”の続編。宮城県警捜査一課の笘篠誠一郎刑事が部下の蓮田らとともに、宮城県内で起きた不可解な事件に

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日比谷で働く書店員のリアルな日常、日比谷の情景、そして、本の話――エッセイ「日比谷で本を売っている。」第11回 〔バンドマンと壺〕新井見枝香

※連載第1回から読む方はこちらです。  髪の長い人には、定期的に「バッサリいきたい」という発作が訪れるようだ。髪は1年間に、約12センチほどしか伸びないと言われる。襟足を刈り上げるようなショートカットから背中の真ん中辺りまで伸ばすとなると、最低でも3年はかかるだろう。なんてことをしてくれたのだ。  発作の度にファンから全力で止められていた私の推しが、この度ついに、その美しい長髪を「バッサリ」やってしまったのである。SNSに投稿された写真を見て、目眩がした。コロナの影響で半年

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戌井昭人(作家)×伊賀大介(スタイリスト):「戌井さんといると小説の登場人物のように面白いことが必ず起こる」――新作小説『壺の中にはなにもない』刊行記念対談

 10月28日に発売された作家・戌井昭人さんの最新小説『壺の中にはなにもない』の帯にコメントを寄せてくださったスタイリストの伊賀大介さん。ふたりは15年以上前からの友人で、数々の他とは代えがたい思い出を共有してきたという。  当記事では、ふたりの出会いから思い出深いエピソード、鉄割アルバトロスケットのこと、そして戌井さんの新作小説『壺の中にはなにもない』まで、さまざまに伺った対談の様子をお届けします。 戌井さんは、飲みの先輩であり気の合うお兄ちゃん 伊賀 振り返ると、最初に

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