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ミステリー小説や食エッセイから、小中学生向けの教養読み物まで、さまざまな興味・関心を刺激する作品を取りそろえています。
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#とりあえずお湯わかせ

追悼、田中敦子さん――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今年8月に逝去された、声優の田中敦子さんの思い出についてお届けします。 ※当記事は連載の第42回です。最初から読む方はこちらです。 #42 本物のレディ  この夏、声優の田中敦子さんが亡くなった。  私は生前の敦子さんとお付き合いがあった。きっかけは十三年前に遡る。  2011年3月11日、東日本大震災が起き、私は「女による女のためのR-18文学賞」出身の作家

夏休みのごはん、何作ってる?――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。長い夏休み、日々の食事作りに柚木さんが出した結論とは……? ※当記事は連載の第41回です。最初から読む方はこちらです。 #41 茶色い食卓  夏休みが始まり、日々の食事の支度が面倒くさくて仕方がない。包丁を出す局面でいつも絶望する。猛暑やお盆前の激務もあって、私の中でもう、一線を超えた感がある。各自が、確実に食べられるものを食べられればいい。まず、うちの子ども

学校からの注意喚起、いまむかし――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は夏休みが始まる前に、学校で配られた「注意事項」についてのお話です。 ※当記事は連載の第40回です。最初から読む方はこちらです。 #40 学校からの通達事項 子が通う小学校の保護者会で配られた「夏休みに気を付けること」と題されたプリントに「夏休みの宿題にAIおよびChatGPT を使用しないこと。必ず本人にやらせること」と、あった。  教育機関に勤める人なら

物語で英語を学ぶ――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。海外での仕事に備えて、語学の勉強に励む日々の様子をお届けします。 ※当記事は連載の第39回です。最初から読む方はこちらです。 #39 語学習得への道 英語圏からインタビューを受けることが増えた。秋に仕事で海外に行くことにもなり、何十年かぶりに、英語を学ぶことにした。私は勉強がとにかく苦手で成績も悪かった。しかし、作家生活十四年で作品のためにいろんな方法で取材をし

体調不良を乗り切るアイテム――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、春の天候不順に悩まされた柚木さんを支えた、ある食べ物についてのお話です ※当記事は連載の第38回です。最初から読む方はこちらです。 #38 ゼリーミシュラン 寒暖差とともにスタートした新年度。明け方、気温が上昇してくると咳が止まらなくなり、跳ね起きる。毎日毎日なんか疲れているなあと思っていたら、子どもの発熱をきっかけに一気に体調が崩れ、GWに一家全員で寝

祝・新生活――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は新生活の助けになっている食べ物についてのお話です。 ※当記事は連載の第37回です。最初から読む方はこちらです。 #37 午後三時のエネルギー補給 子どもが小学校に上がり、いよいよ新生活が始まった。私もある程度ちゃんとした服装を求められる場面も増えたが、相変わらずの寒暖差ゆえ、毎朝、何を着ていいかわからない。天気予報を見て、これだ、と思っても大抵判断をあやま

自分をいたわる日に食べる、やば焼きそば――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。寒暖差が激しいこの時期、何もしたくない日の柚木さんの過ごし方についてです。 ※当記事は連載の第36回です。最初から読む方はこちらです。 #36 布団で過ごす一日 この日曜日は、冷たい雨が降っていた。  上手くいかないことが重なり、私はすっかり塞ぎ込んでしまった。寒暖差が激しいのも手伝って、もう何もしたくなくなってしまう。そうなると、過去の色々な嫌なことや、自分の

原作者が尊重され、守られるように――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、映像化の際に原作者に大きくかかる負担について、小説家であり、かつて脚本家志望だった柚木さんからの提言です。 ※当記事は連載の第35回です。最初から読む方はこちらです。 #35 映像化と原作者  テレビドラマにもなった漫画「セクシー田中さん」の原作者・芦原妃名子さんがお亡くなりになった。映像化にあたっての条件が守られず原作が改変されてしまい、それを防ぐた

今年が良い年になりますように!――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。お正月に立てた、2024年の決意表明をお送りします。 ※当記事は連載の第34回です。最初から読む方はこちらです。 #34 2024年の二つの目標 年が明けるなり、胸の痛むニュースが続く。  前回も書いた通り、私は、四十二年間自分のことしか考えてこなかった(それが通用した最後の世代かもしれない)人生を後悔しっぱなしである。そして、こうやって書いている今も、自分で頭

変えられるところから積み重ねて――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、新刊の執筆をきっかけに取り組んでいる、小さな「魔法」についてお届けします。 ※当記事は連載の第33回です。最初から読む方はこちらです。 #33 小さな魔法をかけるように この連載が始まってから、数々の不調をギャーギャーと訴えてきた。私なりにあらゆることをやった。通院したり、よく眠れるようにふるさと納税の返礼品に高い枕を選んだり、漢方薬を手に入れたり、身体

追悼 マシュー・ペリー――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、アメリカのドラマ「フレンズ」に出演していた俳優、マシュー・ペリーの訃報に触れて、考えたことです。 ※当記事は連載の第32回です。最初から読む方はこちらです。 #32 さようなら、チャンドラー 最近気づいたのだが、私は何かに順位をつけるのがとても苦手だ。年末になると、本でも映画でも「今年のベスト1は?」という質問を受けるのだが、どうしても選べない。例えば、

あなたの強い味方、こっそり教えてください――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、愛用品ではないけど、つい手に取ってしまうアイテムについてのお話です。 ※当記事は連載の第31回です。最初から読む方はこちらです。 #31 頼れるアイツ 10月に入ってようやく空が高くなって、いろんなバリエーションの雲を楽しめるようになった。しかし、冬の入り口のごとく寒い日と、猛暑風味な日が交互にやってくるので、みんなそうだと思うが、体調管理が難しい。そん

正解は「縦になる」――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、台風の到来に伴う体調不良への対応策について考えます。 ※当記事は連載の第30回です。最初から読む方はこちらです。 #30 台風一過 夜更けから雨が降り続け午前中は台風が吹き荒れ、今はもう通り過ぎたが、窓の外では、真っ黒なアスファルトをぱらぱらと小雨が叩いている。前日から、何か見えないものにのしかかられているくらい身体が重く、飛行機に乗っている時のように頭

七年ぶりの海外旅行へ――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。出産以降初、久しぶりの海外旅行での最高の出会いと、柚木さんが考えたこととは? ※当記事は連載の第29回です。最初から読む方はこちらです。 #29 無限の時間を 以前、この連載で、いずれ必ずやってくるだろう死の恐怖に突然とりつかれ、刻一刻と過ぎていく時間をつなぎとめるために、日記を書き始めた、とつづったはずだ(#14死の恐怖)。私は昔、大病して昏睡状態を経験したこ