マガジンのカバー画像

連載

414
ミステリー小説や食エッセイから、小中学生向けの教養読み物まで、さまざまな興味・関心を刺激する作品を取りそろえています。
運営しているクリエイター

2023年10月の記事一覧

連載 ロジカルコミュニケーション入門――【第7回】明確に「論証」してみよう!

●論理的思考の意味  本連載【第1回】「論理的思考で視野を広げよう!」では、「論理的思考」が「思考の筋道を整理して明らかにする」ことであると解説した。たとえば「男女の三角関係」のように複雑な問題であっても、思考の筋道を整理して明らかにしていく過程で、発想の幅が広がり、それまで気づかなかった新たな論点が見えてくる思考法である。 【第2回】「論理的思考で自分の価値観を見極めよう!」では、「ロジカルコミュニケーション」によって新たな論点を探し、反論にも公平に耳を傾け、最終的に

この怒りが何かを考えよう――「不安を味方にして生きる」清水研 #10 [喪失体験との向き合い方②]

不安、悲しみ、怒り、絶望……。人生にはさまざまな困難が降りかかります。がん患者専門の精神科医として4000人以上の患者や家族と対話してきた清水研さんが、こころに不安や困難を感じているあらゆる人に向けて、抱えている問題を乗り越え、豊かに生きるためのヒントをお伝えします。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #10 喪失体験との向き合い方②怒りの役割  怒りという感情は、「こうあるべきだ」という自分の理想や価値観が理不尽な形で侵されたときに生じます。そして怒りの役割は、

サボる哲学 リターンズ! 第3回 愛でしょ ~一六〇〇キロ、われ歩くがゆえに歩く

我々はなぜ心身を消耗させながら、やりたくない仕事、クソどうでもいい仕事をし、生きるためのカネを稼ぐのか? 当たり前だと思わされてきた労働の未来から、どうすれば身体をズラせるか? 気鋭のアナキスト文人・栗原康さんの『サボる哲学』(NHK出版新書)がWEB連載としてカムバック。万国の大人たちよ、駄々をこねろ! 無職は無敵なのだ さて、たのしかった一八〇日連休もついにおしまい。きょうから週二日のハードワークでございます。休みが恋しい。ということで、ひとつ連休中に感動したはなしなど

負の感情はこころを癒やす――「不安を味方にして生きる」清水研 #09 [喪失体験との向き合い方①]

不安、悲しみ、怒り、絶望……。人生にはさまざまな困難が降りかかります。がん患者専門の精神科医として4000人以上の患者や家族と対話してきた清水研さんが、こころに不安や困難を感じているあらゆる人に向けて、抱えている問題を乗り越え、豊かに生きるためのヒントをお伝えします。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #09 喪失体験との向き合い方① 前回まで、不安との向き合い方について考えてきました。不安はこころに危険を伝えるアラームのような役割であり、「未来に起こる問題を回避す

「日記の本番」9月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。くどうさんの9月の「日記の練習」をもとにしたエッセイ、「日記の本番」です。 ゆきちゃんのガラケーを借りて、10年前書いた日記を読んだ。高校生の時にわたしが日記を書いていた「ホムペ」は、サービスが終了してしまったのでもう二度と見ることができない。もう一文字も読み返すことがないと思っていた日記を大事に保存してくれていた人がいて、その人が、仙台のサイン会でそのことを教えてくれなければ、わたしはもう

言葉の「ば」を「ぱ」に変えて「ことぱ」。――「ことぱの観察 #02〔遊びと定義〕」向坂くじら

詩人として、国語専門塾の代表として、数々の活動で注目をあびる向坂くじらさん。この連載では、自身の考える言葉の定義を「ことぱ」と名付け、さまざまな「ことぱ」を観察していきます。 遊びと定義 十年くらい前、インターネットで、ハンドルネームの頭文字を「ぽ」にするとかわいい、という遊びがあった。「あいこ」さんなら「ぽいこ」さん、「木原」さんは「ぽはら」さん。わたしはそのとき「ふみ」という名前を名乗っていたから、「ぽみ」。これを気に入って、「ふみ」を名乗らなくなったいまだに、ときどき

あなたの強い味方、こっそり教えてください――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、愛用品ではないけど、つい手に取ってしまうアイテムについてのお話です。 ※当記事は連載の第31回です。最初から読む方はこちらです。 #31 頼れるアイツ 10月に入ってようやく空が高くなって、いろんなバリエーションの雲を楽しめるようになった。しかし、冬の入り口のごとく寒い日と、猛暑風味な日が交互にやってくるので、みんなそうだと思うが、体調管理が難しい。そん

たったひとりでも、届けたい相手に届けば……――「マイナーノートで」#31〔なぜ書くか?〕上野千鶴子

なぜ書くか? 自分がものを書いて生きるようになるとは思わなかった。  小さい頃から読むのも書くのも好きだった。だが書くことで生きる道は、ハードルが高そうだった。お金に換えなくてもすむのなら、書くことと読むことで人生を過ごせたらこんなによいことはない、と思えた。老後は何をして過ごす? という問いに、わたしと同世代の沢木耕太郎さんが、「書くことと読むことがあればじゅうぶん」と答えていたのを見て、わが意を得た思いだった。だから失明するのがこわい。読めなくなるからだ。最近ではパソコ

誰のためのオリンピック・パラリンピックなのか――『総理になった男』中山七里/第13回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。東京でのオリンピック・パラリンピック開催を控える日本。莫大な経済効果を考えれば是が非でも開催したいところに、未知のウイルスに重ねてさまざまな問題が日

「チャーハンは魂の料理。愛情がなくなったらやめるとき」(「丸鶴」店主・岡山実) 【後編】

「しっとりチャーハンの聖地」と呼ばれ、全国から人が集まり行列する町中華「丸鶴」。前編では、10歳から中華の道に入った、店主・岡山実さん(76)の修業時代や創業時の話が語られました。後編では、人気チャーハンの開発秘話や後継者の問題、そして今後の夢について聞きます。 全国から客が来て行列に。最長で200人──チャーハンを求めて全国から人が来て、開店前から行列ができます。それは、いつ頃からですか? 行列自体は、昔から昼どきになるとできていました。うちのあたりは他に店がないから。

「日記の練習」9月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。そんなくどうさんの9月の「日記の練習」です。 9月1日 どうしてパーマかけたんですか?と訊かれるたびに、この人はきっと前の髪型のほうが好きだったんだろうなと思う。自分でもうまく言えないけど、皆が好きそうで、自分に似合うこともわかっている髪型でいることが突然ダサいようなきがしてきたんです。とも言えず、いやァ~イメチェンしたくってねえなどへらへらしてしまう。ややこしいやつである感じを髪型から表し

連載 シン・アナキズム 第5章 グレーバー (その9)

あらゆるものに値段が…… そうかといってグレーバーが、互酬を含む交換に代わって、コミュニズムやヒエラルヒーの原理に立ち返ろうと言っているかというと、そんなことはない。さしあたり『負債論』で試みられたのは、「借りたものは返す」とは異なる社会関係や経済の営みが存在すること、また負債の中にも、契約書に記された金額を期日までに定められた条件で(利子をつけて)返済するという、私たちがローンやクレジットとして見慣れたものとは異なる、さまざまな貸し借りの形態が存在すると示すことだ。  

自分と相手の境界線を引く――#4ローレン・グロフ『優美な食用の鳥たち』(3)

対照的な二人の出会い――「ブライズ」  さて、もう一つ短篇を読んでみよう。他には特に “Blythe”「ブライズ」がすごかった。主人公は弁護士の女性で、だが結婚と同時に仕事を辞めている。暇を持て余した彼女は、大学の詩の授業に参加することにした。そこで主人公はブライズと出会う。彼女もまた結婚し、モデルの仕事を辞めていた。そしてずっと興味があった詩を書いてみようと思い、この授業に参加したのだ。  シックな服を着こなし、華やかな見た目で家柄もいいブライズに対して、ラトビア移民

たくさんの言葉を、ほんとうは見過ごしながら暮らしている。――「ことぱの観察 #01〔友だち〕」向坂くじら

詩人として、国語専門塾の代表として、数々の活動で注目をあびる向坂くじらさん。この連載では、自身の考える言葉の定義を「ことぱ」と名付け、さまざまな「ことぱ」を観察していきます。 友だち「いろんな言葉を定義していく、みたいなのはどうでしょう」  編集者さんとの打ち合わせで連載のテーマをそう提案してもらって、真っ先に思い浮かんだのは、友だちとの会話によく出てくるひと言だった。たとえば、わたしが愚痴を聞いてもらっているとき。 「もうほんとに最悪。終わりです」 「ブチギレやんか」 「