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ミステリー小説や食エッセイから、小中学生向けの教養読み物まで、さまざまな興味・関心を刺激する作品を取りそろえています。
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2020年6月の記事一覧

赤坂真理「愛と性と存在のはなし」最終回 〔セクハラ論議はなぜ一面的なのか――言葉をめぐる落とし穴〕

※連載第1回から読む方はこちら 「セクハラ」という言葉が見えなくする真実  愛と性をめぐる問題系の中で、最もありふれたことのひとつなのに、議論が一向に深まらないことがある。いわゆる「セクハラ」の問題である。「セクハラ」と聞くと、良心的な男性の多くが、どれほど身構えるものかを、わたしは知っている。一方で「セクハラ」を受けたと感じる側が、どれほど驚いたり不安定な気持ちになったり傷ついたりするものかも知っている。  これは女性とは限らない。性的な傷は男性から女性に付与されるもの、

中野京子「異形のものたち――絵画のなかの怪を読む 《人はなぜヘビを嫌い、恐れるのか?(2)》」

 画家のイマジネーションの飛翔から生まれ、鑑賞者に長く熱く支持されてきた、名画の中の「異形のものたち」。  大人気「怖い絵」シリーズの作家が、そこに秘められた真実を読む。  ※当記事は連載第4回です。第1回から読む方はこちらです。 ペルセウスと蛇  前回は蛇に女性を重ねて恐怖と恍惚を覚えた事例を紹介したが、ここからは人外の存在、化け物としての蛇を取り上げる。  まずは再びペルセウス。彼は蛇に縁があるようで――。  蛇女メドゥーサを殺したペルセウスは、その首を自らの盾に付け

見えぬ接点と深まる謎……事件は最終局面へ――情報化社会の闇を描いた長編ミステリー小説「境界線」中山七里

 たび重なる詐欺により宮城刑務所に収容されていた五代良則は、懲りることなく、出所後のさらなる悪事を計画しながら日々を過ごしていた。そこには、五代が出所後の仕事のパートナーとして目をかけていた利根勝久の姿もあった。そんな折、東日本大震災が発生した。刑務所の食堂にあるテレビが五代の地元が濁流に飲まれていく様子を伝え、えもいわれぬ絶望感を味わった。それから二年後、出所した五代はかつての友人・鵠沼駿の安否を気遣い行方を捜すも、消息をつかめずにいたのだった。  ※本記事は連載第10回で

エッセイ「日比谷で本を売っている。」 〔ナマケモノと私〕新井見枝香

日比谷で働く書店員のリアルな日常、日比谷の情景、そして、本の話(第6回)。※最初から読む方はこちらです。  最近、私の部屋にはナマケモノがいる。手足がひょろ長くて、目がぱっちりとしたぬいぐるみだ。それは書店員の傍ら、踊り子としてデビューした際に、お客さんからもらったものである。どうせパチンコかなんかの景品だとは思うが、あげたくなった理由は「似ているから」と言っていた。確かに私の髪は獣のような金色だし、客観的に見て、キツネには似ていない。おまけに、この世界にはめんどくさいこと

「NHK出版新書を探せ!」第3回 「『自粛を要請』『新しい生活様式』……新たな言葉が“自粛警察”を増やす?――古田徹也さん(倫理学者)の場合」

 突然ですが、新書と言えばどのレーベルが真っ先に思い浮かびますか? 老舗の新書レーベルにはまだ敵わなくても、もっとうちの新書を知ってほしい! というわけで、この連載では今を時めく気鋭の研究者の研究室に伺って、その本棚にある(かもしれない)当社新書の感想とともに、先生たちの研究テーマや現在考えていることなどをじっくりと伺います。コーディネーターは当社新書『試験に出る哲学』の著者・斎藤哲也さんです。  ※第1回から読む方はこちらです。 <今回はこの人!> 古田徹也(ふるた・てつ