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教養・ノンフィクション

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#思想

今こそ世界の真の危機を見ろ! ジジェクの思想と政治批評にこの一冊で入門する!

パンデミックを経てますます注目される現代思想の奇才、スラヴォイ・ジジェク。NHK出版新書から発売された『戦時から目覚めよ 未来なき今、何をなすべきか 』では、ジジェクが西欧と世界で今起きている事象の本質をえぐり、混迷と分断渦巻く世界の「可能性」を問います。 気候変動、生態系の破壊、食糧危機、世界大戦――人類の破滅を防ぐための時間がもう残されていないのだとしたら、我々は今何をなすべきなのか? 本書の刊行を記念し、序文を特別公開いたします。 序 フュチュールとアヴニールのはざま

連載 シン・アナキズム 第5章 グレーバー (その8)

「でもやっぱり、借りたお金は返さないと」(!) さて、いよいよ『負債論』に入っていこう。この本は、私たちが経済活動について考えたりイメージしたりする際に、いつも市場の商品交換をモデルとしているせいで気づかない事柄について教えてくれる。というより、市場の商品交換モデルをここまで当然のごとく前提している社会に住んでいることに、改めて驚かされる。私たちは、よく考えれば市場とは異質なはずの社会関係を含めて、何でもかんでも市場モデルで捉えているのだ。読後には、当たり前と思っていたこと

連載 シン・アナキズム 第5章 グレーバー (その3)

「欧米とそれ以外」という世界像を批判する 西欧/欧米とそれ以外の地域や文化の区分を自明とする世界像の批判と、グレーバーにおけるアナキズム観には深い関係がある。つまり、人類学者としての仕事と社会運動の実践家としての活動とは結びついているのだ。では両者の関係はどのようなものなのか。これを明らかにするために、はじめに『民主主義の非西洋起源について』を取り上げる。この翻訳書は、2014年に刊行されたフランス語版を元にいくつかの論考を加えた日本語オリジナルである。ただしフランス語版・

連載 シン・アナキズム 第5章 グレーバー (その1)

本を書いていた みなさまおひさしぶりです。たいがいにせい、というくらい間が空いてしまった。「連載どうなるんですか」「グレーバー篇が楽しみです」などと、半年くらい前まではときどき言われていたが、最近はそれすらなくなって読者も忘れているらしい。まことに月日は百代の過客ってとこですな。  さっき確認したところ、前回「第4章 ポランニーとグレーバー(その7)」が2022年5月公開だから、これを書いている2023年3月からすると、10カ月も前だ。何をしていたかというと、実はウクライナ

シン・アナキズム 第4章 ポランニーとグレーバー (その7)

機能的社会主義について(4) 交渉価格とは 話がごちゃごちゃしてしまっているが、こうした要素を考慮した形での価格決定に際して、生産アソシエーションと協議を行い、価格と財の配分を決定するもう一方の主体が、コミューンあるいは消費協同組合といった消費アソシエーションである。  ポランニーはコミューンを「政治共同体、地域アソシエーション、機能的国家、地域の役所、働き手の代表評議会、社会主義国家など」 [※1]を指すものとしている。ここではコミューンはその政治的役割を中心に定義され

シン・アナキズム 第4章 ポランニーとグレーバー (その6)

機能的社会主義について(3) 先月発売のちくま新書『ホモ・エコノミクス』が好評の重田園江さんによる、ポップかつ本格派の好評連載「アナキスト思想家列伝」は第15回を迎えました。「どんどん難しくなっているようで申し訳ない感じ」という重田さんですがここは踏ん張りどころ。「もう一つの社会のあり方」を本当に想像できる連続2回の1回目です。キーワードは引き続きカール・ポランニーの「機能的社会主義」。まずは500円分の切手の話から! ※これまでの各シリーズは下記よりお読みいただけます。

連載 シン・アナキズム 第4章「ポランニーとグレーバー」(その5)

「機能的社会主義」について(2) 重田園江さんによる、ポップかつ本格派の好評連載「アナキスト思想家列伝」第14回! 前回に引き続き、カール・ポランニーの「機能的社会主義」という魅力的なアイデアの歴史的背景を明らかにしていきます。 ※これまでの各シリーズは下記よりお読みいただけます。 「序 私はいかにして心配するのをやめ、アナキストについて書くことにしたか」へ 「ジェイン・ジェイコブズ編」の第1回へ 「ヴァンダナ・シヴァ編」の第1回へ 「ねこと森政稔」の第1回へ 「ポランニー

連載 シン・アナキズム 第4章「ポランニーとグレーバー」(その4)

「機能的社会主義」について(1) 重田園江さんによる、ポップかつ本格的な好評連載「アナキスト思想家列伝」第13回! カール・ポランニーの「アナキスト的心性」を探求しながら、彼の「機能的社会主義」というアイデアの歴史的背景を明らかにします。 ※これまでの各シリーズは下記よりお読みいただけます。 「序 私はいかにして心配するのをやめ、アナキストについて書くことにしたか」へ 「ジェイン・ジェイコブズ編」の第1回へ 「ヴァンダナ・シヴァ編」の第1回へ 「ねこと森政稔」の第1回へ 「

連載 シン・アナキズム 第4章「ポランニーとグレーバー」(その3)

「自己調整的市場」について(2) 政治思想史家・重田園江さんの好評連載「アナキスト思想家列伝」第12回! 毎月のように新しい本が出る「アナキズム」っていったい何なのか? その魅力をビシバシと伝えます。今回もカール・ポランニーとデヴィッド・グレーバーについて取り上げます。 ※これまでの各シリーズは下記よりお読みいただけます。  「序 私はいかにして心配するのをやめ、アナキストについて書くことにしたか」へ  「ジェイン・ジェイコブズ編」の第1回へ  「ヴァンダナ・シヴァ編」の第

連載 シン・アナキズム 第4章「ポランニーとグレーバー」(その2)

「自己調整的市場」について(1) 政治思想史家・重田園江さんの好評連載「アナキスト思想家列伝」第11回! 毎月のように新しい本が出る「アナキズム」っていったい何なのか? その魅力をビシバシと伝えます。今回は前回に続いてカール・ポランニーとデヴィッド・グレーバーについて取り上げます。 ※これまでの各シリーズは下記よりお読みいただけます。  「序 私はいかにして心配するのをやめ、アナキストについて書くことにしたか」へ  「ジェイン・ジェイコブズ編」の第1回へ  「ヴァンダナ・シ

連載 シン・アナキズム 第4章「ポランニーとグレーバー」(その1)

ポランニーの生涯と思想 前回の「ねこと森政稔(全2回)」で新たな読者を得た、政治思想史家・重田園江さんの好評連載「アナキスト思想家列伝」第10回! 毎月のように新しい本が出る「アナキズム」っていったい何なのか? その魅力をビシバシと伝えます。今回は真打ちグレーバー登場。そして彼と意外なつながりをもつ、偉大な思想家を紹介します。 ※これまでの各シリーズは下記よりお読みいただけます。  「序 私はいかにして心配するのをやめ、アナキストについて書くことにしたか」へ  「ジェイン・

シンプルな暮らしが、持続可能への道をひらく! 世界の若者たちの共感を呼んだ「希望の哲学」

 モノを所有し、それを消費するのが日常となったわたしたち現代人は、ほんとうにしあわせでしょうか? 大量生産・大量消費の生活は、かならず弱い立場にある人や自然環境を犠牲にする、とサティシュ・クマールは言います。〈エレガント・シンプリシティ〉という理想を支えているのは、より少ないモノでよりよく生きる技術(アート)です。一度立ち止まって、モノや時間に縛られ追い立てられる生活を見直してみませんか? 好評発売中の『エレガント・シンプリシティ 「簡素」に美しく生きる』にはそのためのヒント

連載 シン・アナキズム 「ねこと森政稔」第2回

政治思想史家の重田園江さんによる好評連載「アナキスト思想家列伝」第9回! いま大注目のアナキズム思想とはいったいどんなものか? そして現代的な可能性はあるのか? こうした疑問に答えながらアナキズムの新しい魅力をビシバシと伝えていく連載です。今回は3人目にして日本の現役の思想家を取り上げた話題の回「ねこと森政稔」の後半です! ※「ねこと森政稔」の前半を読む方はこちらです。 ※これまでの各シリーズは下記よりお読みいただけます。  「序 私はいかにして心配するのをやめ、アナキストに

連載 シン・アナキズム 「ねこと森政稔」第1回

政治思想史家の重田園江さんによる好評連載「アナキスト思想家列伝」第8回! あらためて注目が集まっているアナキズム思想の現代的可能性をビシバシと伝えていく連載です。今回は3人目として日本の現役の思想家を取り上げる待望の回「ねこと森政稔」の前半です! ※これまでの各シリーズは下記よりお読みいただけます。  「序 私はいかにして心配するのをやめ、アナキストについて書くことにしたか」へ  「ジェイン・ジェイコブズ編」の第1回へ  「ヴァンダナ・シヴァ編」の第1回へ 駒場のねこたち