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教養・ノンフィクション

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2022年5月の記事一覧

「真に生きた土」をつくり、温暖化まで止める! “環境革命の実践書”と話題の新刊『土を育てる』

 いま、密かに“土ブーム”が起きています。  土と生き物の関係や、自然環境での土のはたらきなど、知られざる土の営みへの関心が高まっています。  足元で無数の微生物たちが織り成す宇宙――何十億年もかけて形成されてきた地中の生態系のことを、私たちはまだ何も知らないのかもしれません。  その土の本質に、身近な「畑」から迫った一冊が『土を育てる――自然をよみがえらせる土壌革命』(2022年5月30日発売)。従来の工業型農業から、環境再生型農業(リジェネラティブ農業)の第一人者へと転身

卑弥呼は日御子? 騎馬民族の女王? 邪馬台国=九州説を下敷きにした作品とは?――周防柳「小説で読み解く古代史」第2回

「邪馬台国はどこか?」に代表されるように、日本の古代史はいまだ解明されない謎ばかり。そのため、吉川英治や松本清張をはじめ、たくさんの作家がインスピレーションを掻き立てられては物語を書き、あるいは持論を展開してきた。本連載では、日本史を舞台にした作品を多く手掛ける著者が、明治・大正・昭和の文豪から平成・令和の小説家まで、彼らが描いた「歴史的なあの場面」に焦点をあて、諸説を紹介しながら、自身もその事件の背景や人物像を考察していく。作家ならではの洞察力と想像力を駆使して謎に挑むスリ

「NHK出版新書を求めて」第2回 「ケア」から新書を眺めてみたら――小川公代さん(英文学者)の場合

各界で活躍する研究者や論者の方々はいま書店で、とくに「新書コーナー」の前で何を考え、どんな新書を選ぶのか? 毎回のゲストの方に書店の回り方、本の眺め方から現在の関心までをじっくりと伺う、NHK出版新書編集部の連載です。コーディネーターはライターの山本ぽてとさんです。 *第1回から読む方はこちらです。 今回はこの人! 小川公代(おがわ・きみよ) 1972年和歌山県生まれ。上智大学外国語学部教授。ケンブリッジ大学政治社会学部卒業、グラスゴー大学博士課程修了。専門はロマン主義文学

アウンサンスーチー、ロヒンギャ、クーデター……なぜミャンマーはニュースが多いのか? 深層にある問題の解決策を示す

「国民統合」をキーワードに読み解けば、「軍か、民主派か」という二者択一から逃れられる――。  激動の情勢下、民主派と活動をともにした若手研究者が、報道からは見えてこない実態を描く『ミャンマー 「民主化」を問い直す ――ポピュリズムを越えて』(5月26日発売)が刊行されます。編集担当者が本書の読みどころを伝えます。  たったの5年――。“民主化の星”アウンサンスーチーがついに国政に加わり、いよいよミャンマーが「普通の国」になっていくと思われたのは2015年秋のことでした。そ

古代史ファン必読! 実力派作家・周防柳による新連載「小説で読み解く古代史」第1回

「邪馬台国はどこか?」に代表されるように、日本の古代史はいまだ解明されない謎ばかり。そのため、吉川英治や松本清張をはじめ、たくさんの作家がインスピレーションを掻き立てられては物語を書き、あるいは持論を展開してきた。本連載では、日本史を舞台にした作品を多く手掛ける著者が、明治・大正・昭和の文豪から平成・令和の小説家まで、彼らが描いた「歴史的なあの場面」に焦点をあて、諸説を紹介しながら、自身もその事件の背景や人物像を考察していく。作家ならではの洞察力と想像力を駆使して謎に挑むス

物理学者にとって美とは何か? 「万物の理論」の最先端をめぐる新刊『神の方程式』発売記念、著者ミチオ・カク氏特別インタビュー(後編)

アメリカで2021年4月の発売以来、8万5千部を売り上げている『神の方程式』の待望の日本語版が発売になりました(斉藤隆央訳・NHK出版)。本書の刊行を記念して行った著者インタビューの後編は、究極理論を追求する物理学者にとっての美――「対称性」を中心に語っていただきました。 *インタビューの前編はこちらです。 取材・写真:大野和基 真に偉大な理論は、子どもにもわかる――本書『神の方程式』は、「万物の理論」をめぐる科学者たちの挑戦をクロノロジカル(時系列)に描き出すところから始

シン・アナキズム 第4章 ポランニーとグレーバー (その7)

機能的社会主義について(4) 交渉価格とは 話がごちゃごちゃしてしまっているが、こうした要素を考慮した形での価格決定に際して、生産アソシエーションと協議を行い、価格と財の配分を決定するもう一方の主体が、コミューンあるいは消費協同組合といった消費アソシエーションである。  ポランニーはコミューンを「政治共同体、地域アソシエーション、機能的国家、地域の役所、働き手の代表評議会、社会主義国家など」 [※1]を指すものとしている。ここではコミューンはその政治的役割を中心に定義され

哲学ディベート――人生の論点『実践・哲学ディベート』新刊のお知らせ! 高橋昌一郎

●「哲学ディベート」は、相手を論破し説得するための競技ディベートとは異なり、多彩な論点を浮かび上がらせて、自分が何に価値を置いているのかを見極める思考方法です。 ●本連載では「哲学ディベート」を発案した哲学者・高橋昌一郎が、実際に誰もが遭遇する可能性のあるさまざまな「人生の論点」に迫ります。 ●舞台は大学の研究室。もし読者が大学生だったら、発表者のどの論点に賛成しますか、あるいは反対しますか? これまで気付かなかった新たな発想を発見するためにも、ぜひ視界を広げて、一緒に考えて

宇宙のすべてを記述する数式とは何か? 「万物の理論」の最先端をめぐる新刊『神の方程式』発売記念、著者ミチオ・カク氏特別インタビュー(前編)

たったひとつの方程式からあらゆる事象を導き出す――。そんな科学の究極の目標に、現代物理学はどこまで近づいているのか? “究極理論”の最有力候補とも言われる「ひも理論」研究の第一人者であるミチオ・カク博士が、過去の科学者たちの挑戦の物語から、最新研究の到達点と課題までをコンパクトに記した『神の方程式』の日本語版が発売になりました(斉藤隆央訳・NHK出版)。本書の刊行を記念して、zoomで行った著者インタビューを前・後編に分けて掲載します。 取材:大野和基 アインシュタインが目