罪悪感におそわれている日があっても、いつかきっと。「晴れた日は」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく
「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。
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#17 晴れた日は
晴れた日は、きらいだった。
統合失調症の陰性症状が強く出ていたころ。ベッドのうえから動けない日々が続いた。もちろん外には出られない。高校もおやすみし、寝っ転がって、天井をただ見つめているだけの毎日。
こどくは、そんなこどくに、罪悪感を抱いていた。高校に行きたくても行けないひとがいるのに、世界にはこどくよりもっとつらい思いをしているひとがいるのに、こどくは外に出られない。高校にも行けない。
雨の日は、その感情が多少和らいだ。雨の日なんだから、外に出られなくてもしかたない。こないだ傘こわれたし。と、言い訳を口にすることで。
しかし、晴れた日は、罪悪感が深まるいっぽうだった。
こんなにいい天気で、お散歩日和で、外で運動をするのもたのしいだろうに、外に出られない。
冬が過ぎ、あたたかくなってくると、さらに強い罪悪感がこどくをおそった。
こどくはそんなこどくがいやでいやでしょうがなかった。
きっとあしたも、あさっても、こどくはこの部屋のなかで、動けないでいる。
それが、つらくてつらくて。
しかし、ある日のことである。すごくやすんだつぎの日のこと。
さらっと、外に出ることができた。
なぜかはわからない。タイミング、だったのかもしれない。
そこでようやくこどくは、自分の病状が徐々によくなっていっている、と気がついたのだ。
晴れた空のした、おともだちとたのしくしゃべったことが思いだされる。
だからいまは、晴れた日はすきだ。
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※本連載は毎週月曜日に更新予定です。
プロフィール
もりのこどく
VTuber。「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」。そんな思いで19歳で配信を始めた。バーチャルの強みを生かして、当事者たちの居場所をクラウドファンディングでメタバース上に創るなど幅広く活動。2023年、SDGsスカラシップ岩佐賞を受賞。