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この縁を両手に抱えて、縁のつづいていく未来を生きていく。「未来を生きていく」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく
「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。
※#0から読む方はこちらです。
#44 未来を生きていく
こどくにはありがたいことにおともだちがいる。いままでそう言っておともだちについて紹介してきた。今回は、高校のときからのおともだちを紹介しようと思う。こどくは高校2年生のときに統合失調症を発症し、高校を留年、転校したわけだが、今回紹介するのは、転校する前の高校で出会ったおともだちだ。
こどく 「第一印象を教えてください」
おともだち 「高1のときだよね。たしか、お弁当をいっしょに食べた気がする」
こどく 「たしかに。それがいちばんはじめかも」
おともだち 「すごい印象にのこってるのが、会ってから1か月くらい、ずっと敬語だったこと。ふしぎな子だなって」
こどく 「じつはこどくね、高校デビューしたくて。ふしぎちゃんキャラになりたくて、その時期敬語使ってたんだよね」
おともだち 「それはじゃあ高校デビュー成功してたかも。にこにこして、明るくて、『ふしぎだけどいい子だな』って思ってた」
こどく 「ほかにはなにかある?」
おともだち 「強烈だったね」
こどく 「強烈!?」
おともだち 「うん。個性感じてたよ。敬語だったことを抜いても」
こどく 「じゃあ、そんなこどくとの記憶に残ってるエピソードはある?」
おともだち 「えー、思い出がおおすぎてこまる。うーん、高2のとき、学校来なくなったあたりが、すごい心配だったかな。当時の私は自分からLINEするタイプではなかったんだけど、こどくちゃんとは『おともだちの縁を切りたくない』って思ってLINEしたの。それで、つぎに学校で会えたとき、本当にうれしかった」
こどく 「あのときはこどくもうれしかったな。LINEのグループチャットはよく動くけど、個人チャットってあんまり動いてなかったんだよね。まわりとの関わりが切れてたから。だからうれしかった」
おともだち 「あのLINEがなかったらいまの関係はなかったかも。あと、私、『自分』をもってる子がすきで。だからこどくちゃんすき」
こどく 「わあ、照れるなあ。ありがとう。では、こどくに対して、ひとこと、ありますか」
おともだち 「こどくちゃん大学2年生でしょ。これから、大学を卒業したり、就職したり、生活が変わると思うけど、こどくちゃんはこどくちゃんのペースで、すこやかに生きてほしい。げんきでいて。焦燥感にかられても、こどくちゃんには魅力があるので、自信をもって生きていってください。『なにもやってない自分まずいかも!?』って不安になる必要はないよ。だいじょうぶだから」
こどくは高校2年生で統合失調症を発症したとき、自分のことでせいいっぱいで、おともだちがこんなに気にかけてくれていたとは知らなかった。そして、たったひとつのLINEが、こどくとおともだちの縁をつないだことも。縁があることは、しあわせなことだ。どんな人間も、生きている限り、だれかと縁がある。それは、身の回りのひととかもしれないし、もしかしたら、このエッセイを読んでくれている君とかもしれない。こどくは、この縁を両手に抱えて、縁のつづいていく未来を、生きていく。
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※本連載は毎週月曜日に更新予定です。
プロフィール
もりのこどく
VTuber。「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」。そんな思いで19歳で配信を始めた。バーチャルの強みを生かして、当事者たちの居場所をクラウドファンディングでメタバース上に創るなど幅広く活動。2023年、SDGsスカラシップ岩佐賞を受賞。