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応援してくれる君が、ことばを発して、伝えてくれたから。「それを受け取って」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。
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#23 それを受け取って

 こどくはどうやら感受性が強いようだ、ということに、さいきん気がついた。
 映画を観ているとき、登場人物がけがをすると、こどくもけがをしたように感じることがおおい。そのため、すこしでも登場人物がけがをしない映画を選んで観る。
 こどくとしては、生まれてこのかたずーっとそうなので、ほかのひともみんなそうかと思っていたが、そうでもないようだ。なぜ気がついたかというと、いっしょに映画を観ているかぞくやおともだちは、そんなそぶりを見せないからだ。
 ほかにも、映画やドラマ、アニメを観ているとき、登場人物が泣くと、こどくもいっしょに泣いてしまう。とくに悲しいシーンでなくても、だ。
 この感受性の強さが役に立ったことは、ほとんどないと思っていた。観られる映画はすくなくなるし、泣くことだってつかれるし。
 しかし、その感受性は、こどくの知らないところで、こどくを助けてくれている、とさいきん思うようになった。こどくが「たのしい」ものを見たとき、感受性が強いおかげで、「すごくたのしい」と思っていることに気が付いたのだ。
 またまた、そんなの、と思うひともいるかもしれないが、これはたいへんなことだ。「うれしい」は「すごくうれしい」になるし、「かわいい」、「きれい」は「すごくかわいい」、「すごくきれい」になる。だから、一回ポジティブな思いを持つと、どんどんポジティブな方向に感情が転がってゆくのだ。
 一方、ぎゃくのはたらきが起こることもある。ネガティブになると、どんどんネガティブになる。でも、こどくは日常でできる限りポジティブなものだけを目に入れるようにしているため、きほんポジティブでいられるのだ。
 VTuber活動でも、そのポジティブな感情がこどくを救った。こどくのファンである生存者からのことばや、いっしょに活動しているなかまからのことば。それらを受け取って、こどくはどんどん自己肯定感を上げていった。
 そして、こどくはこの感受性の強さを活かして、自分が思っていることを、口に出すようになった。「とてもうれしい」、「本当に感謝している、ありがとう」。そうすると、こどくのまわりは、驚くほどあたたかくなった。
 こどくの感受性の強さは、あいかわらずポジティブに働いてくれている。それはひとえに、応援してくれる君が、ことばを発して、こどくに伝えてくれたからだ。こどくはそれを受け取って、今日も、生きる。

#24へ続く
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※本連載は毎週月曜日に更新予定です。

プロフィール

もりのこどく
VTuber。「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」。そんな思いで19歳で配信を始めた。バーチャルの強みを生かして、当事者たちの居場所をクラウドファンディングでメタバース上に創るなど幅広く活動。2023年、SDGsスカラシップ岩佐賞を受賞。

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