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孤独におびえる日があっても、君がいるから。「生きててくれてありがとう」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴った初めてのエッセイ連載です。


#1 生きててくれてありがとう

「生きててくれてありがとう」
 統合失調症当事者であり、VTuberでもあるこどくは、何度この言葉に救われただろうか。
 統合失調症を発症したのは、16歳のとき。病気の名前すら知らず、おそいかかってくる幻覚や妄想などの症状に疲弊していたこどくは、かぞくにたしかに、そう言われたことを記憶している。
 こどくはあのとき、しにたかった。頭のなかで、「しね」とだれかに言われ続けていたから。でもかぞくは、しっかりとこどくのからだをつかんで、そう言ったのだ。
「生きている」ということを肯定される経験は、まだ小さな子どもならよくあることかもしれないが、年を重ねていくにつれ、少なくなっていくと思う。
 だからこそ、言われたとき、こどくはうれしかったのである。
 この世界には、こどくが生きていてもいい場所が、たしかにある。生きる、ということを肯定してくれるひとがいる。
 病気になって、漠然とした孤独感におそわれることが多くなった。こどくはこの世界でひとりぼっち。生きていても、なんの意味もないし、ただこうして、なにもせずに、だらだらと、しぬことへ向かって進んでいくだけ。それは、とてもつらい心もちだった。
 そんなとき、思いだすのだ。
「生きててくれてありがとう」
 ああ、だれかに言われたなあ。だれだっけ、あ、かぞくだ。じゃあ、こどくが生きる理由はまだあるなあ。
 そんな、孤独に押しつぶされそうになっていたときの経験があるから、こどくは、息を吸って吐くように、まわりに伝えるようにしている。
 こどくの生きる理由がその言葉になったように、今度はこどくがまわりのひとたちの生きる理由になれるように。
 生まれてきてくれて、成長してくれて、この記事を読んでくれて、こどくのことを知ってくれて、ありがとう。
 こどくはいまだに、孤独におびえる日もあるけど、君がいるから、生きていられるよ。
 生きててくれて、ありがとう。

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※本連載は毎週月曜日に更新予定です。

プロフィール

もりのこどく
VTuber。「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」。そんな思いで19歳で配信を始めた。バーチャルの強みを生かして、当事者たちの居場所をクラウドファンディングでメタバース上に創るなど幅広く活動。2023年、SDGsスカラシップ岩佐賞を受賞。

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