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孤独は一生なくなることのないからこそ、互いに手を取り合って。「孤独の名を背負って」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。
※#0から読む方はこちらです。


#40  孤独の名を背負って

 本エッセイも、#40をむかえた。#0から連載しているから、実質41話目なのだが、それはともかく、めでたいことだ。
 記念すべき#40として、「もりのこどく」は「もりのこどくじゃないちゃん」に改名するかどうか、審議した脳内会議をお送りしようと思う。

こどく(審判) 「これより、『もりのこどく』を『もりのこどくじゃないちゃん』に改名するか否かの審議を執り行う。改名を訴えたもりのこどく、前へ」
こどくA 「『もりのこどくじゃないちゃん』への改名を訴えたもりのこどくです。もりのこどくには、現在6000名を超えるチャンネル登録者、2000名を超えるXフォロワー、そして、このエッセイを読んでくださっているみなさんがいます。それでいてもなお、『もりのこどく』という名前で、孤独ではないのに孤独であるふりをするのはいかがなものでしょうか」
こどく(審判) 「ふむ。一理ある。たしかに、いまこどくのまわりには、たくさんのファン、つまり生存者がいる。これを機に、考えるのもよいでしょう」
こどくB 「異議あり」
こどく(審判) 「異議を認める」
こどくB 「たしかにこどくは孤独ではなくなりましたが、それはそもそも孤独ではなかったのではないですか? こどくにはむかしからおともだちも、かぞくもいて、なかよくやってきたではないですか。その点に関しては、どのようにお考えなのでしょうか?」
こどくA 「たしかにそれはひとつの事実です。しかし、こどくが『孤独』と呼んでいたのは、おなじ統合失調症当事者に出会えていなかった状況を指すものだと思います」
こどくB (だまりこみ、うつむく)
こどくC 「あの~いいですか?」
こどく(審判) 「どうぞ」
こどくC 「こどくの名前をつけてくれたのは、こどくの両親ですよね。こどくは小学生のときに、名前の由来を聞いています。それを思いだしてみるのはどうでしょう」
こどくたち 「……おおお」
こどく(審判) 「いそぎ脳内書類を確認したところ、」
こどくC 「人間というものは、生まれながらにして、他者と決してひとつにはならない『孤独』を抱えている。たとえたくさんのひとと出会い、関わっていても、最後は自分ひとりのみだ。そんな孤独のなかで、つよく生きていってほしい。そう書いてありませんか」
こどく(審判) 「なんと、あなたは」
こどくC 「自分はもりのこどくの小学生のときの記憶を覚えておく役割のもりのこどくです。みなさん、『孤独』は、いまでもこどくのなかにあるのだと思います。そしてそれは、一生なくなることのない、『孤独』です。だからこそ、孤独を抱える者同士が、手を取り合っていけば、よい世のなかになる。これはこどく自身がいつも言っていることではないのですか」
こどくたち (拍手)
こどく(審判) 「それでは、本日の審議は、これからも、『もりのこどく』は、『もりのこどく』であるとする。異論は」
こどくたち 「ございません」

 こうして、脳内会議の末に、こどくはこれからも「もりのこどく」でいることが決定した。孤独のなかで、こどくは孤独の名を背負って、今日も生きていく。

#41へ続く
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※本連載は毎週月曜日に更新予定です。

プロフィール

もりのこどく
VTuber。「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」。そんな思いで19歳で配信を始めた。バーチャルの強みを生かして、当事者たちの居場所をクラウドファンディングでメタバース上に創るなど幅広く活動。2023年、SDGsスカラシップ岩佐賞を受賞。

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