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小説・エッセイ

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人気・実力を兼ね備えた執筆陣によるバラエティー豊かな作品や、著者インタビュー、近刊情報などを掲載。
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2024年1月の記事一覧

【家族写真あり】「君につなげるための物語」――昆虫・動物だけじゃない、篠原かをりの「卒業式、走って帰った」

動物作家・昆虫研究家として、さまざまなメディアに登場する篠原かをりさん。その博識さや生き物への偏愛ぶりで人気を集めていますが、この連載では「篠原かをり」にフォーカス! 忘れがたい経験や自身に影響を与えた印象深い人々、作家・研究者としての自分、プライベートとしての自分の現在とこれからなど、心のままにつづります。第4回は篠原さんが“あなた”に伝えたい、“夢”のお話です。 ※第1回から読む方はこちらです。 #4 君につなげるための物語 夢は叶えるためにあると、誰かが言っていた。子

「日記の本番」12月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。くどうさんの12月の「日記の練習」をもとにしたエッセイ、「日記の本番」です。  とても好きで、街の財産としても非常に価値があって、けれどあまり頻繁に行くことができなかった角打ちが閉店した。高校生のとき、文芸部の全国コンクールでどうしても最優秀賞が取れなくて結局一度も立つことができなかった壇上に12年ぶりに来て講師として1時間話した。「会いたい人たちとやっぱり会いたいから」という理由で思い立っ

シリーズ累計50万部突破! 心を揺さぶる社会派ヒューマンミステリーの金字塔――『彷徨う者たち』中山七里

累計50万部突破「宮城県警シリーズ」最新作  宮城県を舞台に起こる殺人事件に迫りながら、事件の関係者を通してその地に根差す人々の人間模様を描いた社会派ヒューマンミステリー「宮城県警シリーズ」。これまで当シリーズでは、ひたむきに現実に向き合う人々の生き様を描き、その切なさや感動が多くの読者の涙を誘ってきました。  生活保護制度を題材に、佐藤健さん主演で映画化された第一作『護られなかった者たちへ』、震災からの復興とその闇ビジネスを描いた第二作『境界線』、そして、最新作かつ完結編の

圧倒的な軍事力差になすすべはないのか――『総理になった男』中山七里/第19回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。台北での騒乱を受け、東アジア諸国が中国と台湾の一触即発のムードに懸念を示すなか、中国は内政不干渉の理屈を持ち出し、干渉する国々に対してきな臭い脅しを

今年が良い年になりますように!――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。お正月に立てた、2024年の決意表明をお送りします。 ※当記事は連載の第34回です。最初から読む方はこちらです。 #34 2024年の二つの目標 年が明けるなり、胸の痛むニュースが続く。  前回も書いた通り、私は、四十二年間自分のことしか考えてこなかった(それが通用した最後の世代かもしれない)人生を後悔しっぱなしである。そして、こうやって書いている今も、自分で頭

まあ、好きということでいいんじゃないですかね……――「ことぱの観察 #08〔好きになる〕」向坂くじら

詩人として、国語専門塾の代表として、数々の活動で注目をあびる向坂くじらさん。この連載では、自身の考える言葉の定義を「ことぱ」と名付け、さまざまな「ことぱ」を観察していきます。 好きになる 目を覚ましたら新しいプレイリストができていた。年末になると音楽のサブスクリプションサービスから通知が届いて、この一年どんな音楽を聴いてきたか教えてくれる。それが来たのだ。  わくわくしながらリストをひらいて驚いた。今年のわたし、ぜんぜん音楽を聴いていないじゃないか。たしかに、秋のはじめにC

愛のエビエピ、好きの滝……「好きになるために生まれてきた」――昆虫・動物だけじゃない、篠原かをりの「卒業式、走って帰った」

動物作家・昆虫研究家として、さまざまなメディアに登場する篠原かをりさん。その博識さや生き物への偏愛ぶりで人気を集めていますが、この連載では「篠原かをり」にフォーカス! 忘れがたい経験や自身に影響を与えた印象深い人々、作家・研究者としての自分、プライベートとしての自分の現在とこれからなど、心のままにつづります。第3回は篠原さんの「運命の好きなもの」のお話です。 ※第1回から読む方はこちらです。 #3 好きになるために生まれてきた 生き物を好きになったのは、いつのことであるか、

「日記の練習」12月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。そんなくどうさんの12月の「日記の練習」です。 12月1日 キコと安藤さんと平興へ。わたしははさみ将棋が強い、と豪語していたことを覚えていた名人が「やるか!」と言ってくれたがぼろ負け。一気にふたつの駒を取られたとき、我ながらあまりの愚かさに笑ってしまった。あらゆる「最後」が苦手なので、閉店する前の最後の来店だろうということはあまり考えないようにした。 12月2日 ようやくワインオープナーを

このわたしの、ああ、人間そのもののくさみ――「ことぱの観察 #07〔くさみ〕」向坂くじら

詩人として、国語専門塾の代表として、数々の活動で注目をあびる向坂くじらさん。この連載では、自身の考える言葉の定義を「ことぱ」と名付け、さまざまな「ことぱ」を観察していきます。 くさみ 料理をしていると、「くさみ」という言葉にたびたび行き合う。そして、それはだいたい悪いものとして登場する。魚に塩をふって水を出すのはくさみを抜くため、レバーを牛乳につけるのも、豚骨を茹でたお湯を一度めは捨てるのも同じだ。ちなみに、三つめを「茹でこぼす」と言う。ほかの局面では見かけないけれど、質感

今まさに炎上しようとしている隣家の消火活動を手伝うこともできない――『総理になった男』中山七里/第18回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。台湾でのデモで端を発した中国と台湾の睨み合いはまさに一触即発状態。「内政干渉」と他国をけん制する中国を警戒し、“台湾の友人”である日本は何もできずに