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小説・エッセイ

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人気・実力を兼ね備えた執筆陣によるバラエティー豊かな作品や、著者インタビュー、近刊情報などを掲載。
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2023年5月の記事一覧

成田空港のお膝元に聞く外国人犯罪の実態――『総理になった男』中山七里/第4回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。景気対策としてインバウンド消費の向上を検討するも、外国人犯罪に対する懸念で反対される慎策。現場の声を聴くべく呼び出したのは、『逃亡刑事』でお馴染みの

メガネもコンタクトもデビューの日は恥ずかしかった――上白石萌音と視力

 2021年9月に発売された上白石萌音さんの初エッセイ集『いろいろ』。好評を博し、累計発行部数7万部を突破した本書が、このたび台湾で初めて海外翻訳出版されることになりました(2023年6月8日(木)台湾で発売予定)。それを記念して、『いろいろ』からエッセイ「視る」を公開いたします。6月8日(木)公開のエッセイ「オフる」はこちらです。 視る わたしはとても目が悪い。コンタクトの度数を聞かれても恥ずかしくて言えないほど悪い。  視力が下がり始めたのは六歳頃だった。遠くの看板の文

みんなテレビっ子だった!――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。動画との付き合い方に悩みつつも、自分の子どものころを振り返ってみると……。 ※当記事は連載の第26回です。最初から読む方はこちらです。 #26 テレビ視聴時間 うちの子どもは、動画に夢中である。すきあらば私のスマホを奪い、YouTubeを見ようとする。もしくは、自宅のテレビ画面でNetflixかAmazon Prime Videoをじっと見ている。タブレットは捨

インバウンド消費と治安維持の両立は?――『総理になった男』中山七里/第3回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。長らく続く景気低迷の活路に見出したインバウンド消費の向上。しかしそこには表裏一体の関係で「治安対策」問題が立ちはだかる――  *第1回から読む方はこ

「日記の本番」 4月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。くどうさんの4月の「日記の練習」をもとにしたエッセイ、「日記の本番」です。 新連載が3本始まり、日々はどばどば過ぎる。作家の仕事には(と大きな主語で言っていいのかわからない、わたしはエッセイや絵本を書いたりロケや取材の仕事もしたりするので、小説のみを書く作家の皆さんとはもしかしたらずいぶん違う生活をしているのかもしれない)ここが山場!ということはあまりなく、おわ~!と言っていたらまたさらにも

「本当にうまいチャーハンは『これこれ!』としか言いようがない。漫才も同じ」林 健(漫才師)

「どんなチャーハンを食べてきましたか?」──そう尋ねると、人はときに饒舌になります。「なんてことのない日常」に寄り添った料理を通じて語られる、愛着のある情景。そこに、その人の素顔や原点が見えてきます。 連載第2回目は、チャーハンが好きで、芸人のチャーハン・サークルを立ち上げ、チャーハンのYouTubeチャンネルも持つ、漫才コンビ「ギャロップ」の林健さん(44)。チャーハンと漫才の共通点を尋ねると、奥深い答えが返ってきました。 家ではウスターソースを早めにチャーハンにかけてい

ガッカリとニヤニヤ、どちらもわたし。想定外、予想外だったこと――お題を通して“壇蜜的こころ”を明かす「蜜月壇話」

タレント、女優、エッセイストなど多彩な活躍を続ける壇蜜さん。ふだんラジオのパーソナリティとしてリスナーからのお便りを紹介している壇蜜さんが、今度はリスナーの立場から、ふられたテーマをもとに自身の経験やいま思っていることなどを語った連載です。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 # 13 想定外、予想外だったこと 想定外、予想外と聞くと、どうしても悪いほうに物事が展開する想像をしてしまう。想定外の質問をされてしどろもどろになったとか、予想外の出費で次の給料日まで生活がピ

「日記の練習」4月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。そんなくどうさんの4月の「日記の練習」です。 4月1日 はあ、憂鬱だねと朝の7時半に同居人のミドリはため息をついた。だれにも嘘ついてほしくないんだよ、と言われてはじめて今日がエイプリルフールだとわかる。嘘がきらいなのかと思って黙って聞いていたら「おもしろい嘘だったらいつでもついていいに決まってるじゃない」とのことで愉快だった。ミドリはぷりぷり怒りながらコーヒーを淹れてくれて、おいしいコーヒー