小説・エッセイ

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介護される者の哀しみ――「マイナーノートで #04〔憤怒の記憶〕」上野千鶴子

介護される者の哀しみ――「マイナーノートで #04〔憤怒の記憶〕」上野千鶴子

各方面で活躍する社会学者の上野千鶴子さんが、「考えたこと」だけでなく、「感じたこと」も綴る連載随筆。精緻な言葉選びと襞のある心象が織りなす文章は、あなたの内面を静かに波立たせます。 ※#01から読む方はこちらです。 憤怒の記憶  辺見庸さんは、ずっと気になる書き手だった。生活クラブ生協連合会に辺見さんのファンがいるらしく、同会の機関誌『生活と自治』というマンスリー・レポートに、長期にわたって「新・反時代のパンセ――不服従の理由」と題する連載がある。毎号届くたびに、どきどきし

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はしゃげるチャンスに貪欲たれ――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

はしゃげるチャンスに貪欲たれ――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、コロナ禍で失われた楽しみを、久しぶりに親子で楽しんだ様子をお伝えします。 ※当記事は連載の第4回です。最初から読む方はこちらです。 #4 顔ハメ看板  この一年で近所の公園はあらかた遊びつくしてしまった。全ての遊具のクセのようなものまで完全に把握している。通りから回転するジャングルジムをちらっと目にするだけで、子どもを真ん中に乗せてグルグル回す時の軋みや

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街路樹のありがたみ――「熊本 かわりばんこ #04〔ピンクのリボン〕」田尻久子

街路樹のありがたみ――「熊本 かわりばんこ #04〔ピンクのリボン〕」田尻久子

 長年過ごした東京を離れ故郷・熊本に暮らしの場を移した吉本由美さんと、熊本市内で書店&雑貨カフェを営む田尻久子さん。  本と映画、そして猫が大好きなふたりが、熊本暮らしの手ざわりを「かわりばんこ」に綴ります。 ※#01から読む方はこちらです。 ピンクのリボン  古いビルの2階で店を営んでいる。そんなに広くはないのだが、北側と東側に窓が広がっているので開放感があってなかなか気持ちのいい場所だ。店の前の道路には植栽された樹が並んでいる。たしかめたことはないのだが、おそらくモミジ

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私はとても上手に針を刺すことができます――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス小説「ここからは出られません」藤野可織

私はとても上手に針を刺すことができます――日常に潜む狂気を描いたサイコサスペンス小説「ここからは出られません」藤野可織

 妊娠安定期に入った鳩里鳩子だが、彼女の心配は尽きない。  彼女の信念では、生まれてくる子はあらゆる意味で「完璧」でなければならないのだ。  自然かつ完璧な状態で、すべての「特権」を掌握できる存在……。  そんな彼女が選んだ選択は――。  ※当記事は連載第4回です。第1回から読む方はこちら。  私がそれを申し出たとき、私の産婦人科医はぎくりと肩を震わせる。羊水検査だ。私のつわりはすっかりおさまっている。尿検査でもケトン体は出ていない。すべての数値が正常だ。胎児にも問題は見ら

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