小説・エッセイ

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エッセイ「日比谷で本を売っている。」第2回 〔スポーツクラブと百獣の王〕 新井見枝香

エッセイ「日比谷で本を売っている。」第2回 〔スポーツクラブと百獣の王〕 新井見枝香

日比谷で働く書店員のリアルな日常、日比谷の情景、そして、本の話。  職場のある商業施設「日比谷シャンテ」は、地下2階で地下鉄の日比谷駅に直結している。最高だ。雨の日も風の日も、特に冬は、生命を脅かすほどの寒さから私を守ってくれて、本当にありがとう。今後も、仕事選びの条件として【職場が駅直結】を真っ先に挙げたい。時給が100円安くても構わないほどだ。  その地下2階の飲食店街を抜けると、「メガロス」という、黒を基調としたイケイケなスポーツクラブがある。夕方に前を通りかかれば、

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阿部智里(「八咫烏シリーズ」『発現』)最新掌編小説 『秘密のお客さま』

阿部智里(「八咫烏シリーズ」『発現』)最新掌編小説 『秘密のお客さま』

累計130万部を突破中の大人気和風ファンタジー小説「八咫烏シリーズ」の著者が贈る、温かで、ちょっと懐かしい、小冒険譚。 1 ホスト、あるいはオーナーの話 「なんでこんな所に傘があるんだ?」  不思議そうな父の声に振り向いてそれを見た瞬間、一気に昔の記憶が甦った。  父が力任せに取り除いた野バラの枝の向こうには、崩れかかった白壁に突き刺さるようにして、子ども用の傘が開いている。  骨は錆びて赤くなり、鮮やかだったであろう黄色の布は、埃と枯れ草ですっかり茶色く変色していた。穴

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