連載

169
介護される者の哀しみ――「マイナーノートで #04〔憤怒の記憶〕」上野千鶴子

介護される者の哀しみ――「マイナーノートで #04〔憤怒の記憶〕」上野千鶴子

各方面で活躍する社会学者の上野千鶴子さんが、「考えたこと」だけでなく、「感じたこと」も綴る連載随筆。精緻な言葉選びと襞のある心象が織りなす文章は、あなたの内面を静かに波立たせます。 ※#01から読む方はこちらです。 憤怒の記憶  辺見庸さんは、ずっと気になる書き手だった。生活クラブ生協連合会に辺見さんのファンがいるらしく、同会の機関誌『生活と自治』というマンスリー・レポートに、長期にわたって「新・反時代のパンセ――不服従の理由」と題する連載がある。毎号届くたびに、どきどきし

23
はしゃげるチャンスに貪欲たれ――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

はしゃげるチャンスに貪欲たれ――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、コロナ禍で失われた楽しみを、久しぶりに親子で楽しんだ様子をお伝えします。 ※当記事は連載の第4回です。最初から読む方はこちらです。 #4 顔ハメ看板  この一年で近所の公園はあらかた遊びつくしてしまった。全ての遊具のクセのようなものまで完全に把握している。通りから回転するジャングルジムをちらっと目にするだけで、子どもを真ん中に乗せてグルグル回す時の軋みや

47
“映像に想いを重ねる良心、集団感情に惑わされない「個」の確立”スーザン・ソンタグ――連載「アメリカ、その心の生まれるところ~変革の言葉たち」新元良一

“映像に想いを重ねる良心、集団感情に惑わされない「個」の確立”スーザン・ソンタグ――連載「アメリカ、その心の生まれるところ~変革の言葉たち」新元良一

 自由・平等・フロンティアを旗印に、世界のリーダーとして君臨してきたアメリカ。様々な社会問題に揺れるこの国の根底には何があるのか? 建国から約230年。そこに培われた真のアメリカ精神を各分野の文化人の言葉の中に探ります。  第2回は、母国アメリカの独善性を批判し、国民感情的な非難にもひるむことなく論を展開したアメリカを代表するリベラル派の知識人であり、オピニオンリーダー、スーザン・ソンタグ(1933-2004)です。  ※第1回から読む方はこちらです。 第2回「そこに表面が

18
街路樹のありがたみ――「熊本 かわりばんこ #04〔ピンクのリボン〕」田尻久子

街路樹のありがたみ――「熊本 かわりばんこ #04〔ピンクのリボン〕」田尻久子

 長年過ごした東京を離れ故郷・熊本に暮らしの場を移した吉本由美さんと、熊本市内で書店&雑貨カフェを営む田尻久子さん。  本と映画、そして猫が大好きなふたりが、熊本暮らしの手ざわりを「かわりばんこ」に綴ります。 ※#01から読む方はこちらです。 ピンクのリボン  古いビルの2階で店を営んでいる。そんなに広くはないのだが、北側と東側に窓が広がっているので開放感があってなかなか気持ちのいい場所だ。店の前の道路には植栽された樹が並んでいる。たしかめたことはないのだが、おそらくモミジ

20
日比谷の書店員のリアルな日常、街の情景、本の話――〔推しと深掘り〕 新井見枝香

日比谷の書店員のリアルな日常、街の情景、本の話――〔推しと深掘り〕 新井見枝香

※当記事はエッセイ連載「日比谷で本を売っている。」の第18回です。第1回から読む方はこちらです。  職場のバックヤードには、徒歩圏内にある大型劇場「シアタークリエ」「帝国劇場」「東京宝塚劇場」の公演スケジュールが貼り出されている。それは我々売場スタッフにとって、天気予報より重要な情報なのだ。公演の前後は、まるでコンサート会場の物販ブースみたいに、レジが混雑する。現在公演中の舞台の、プログラムやグッズを販売しているからだ。私も好きなロックバンドのLIVEに行くと、ついオリジナ

30
自粛時のライフハックに疲れたら――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

自粛時のライフハックに疲れたら――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今回は、一年を超える自粛生活、工夫を凝らして過ごしてきた柚木さんに、ふいに訪れた「工夫ナシ時間」についてお届けします。 ※当記事は連載の第3回です。最初から読む方はこちらです。 #3 ステイホームの工夫疲れ  日常にライフハックを!との思いから始まったこの連載。しかし、「ちょっとした工夫で毎日を楽しく」することにほとほと嫌気がさしてきたのは、肺が弱いがために一年

159
またね、と言って別れるとき――「マイナーノートで #03〔おひとりさまのつきあい〕」上野千鶴子

またね、と言って別れるとき――「マイナーノートで #03〔おひとりさまのつきあい〕」上野千鶴子

各方面で活躍する社会学者の上野千鶴子さんが、「考えたこと」だけでなく、「感じたこと」も綴る連載随筆。精緻な言葉選びと襞のある心象が織りなす文章は、あなたの内面を静かに波立たせます。 ※#01から読む方はこちらです。 おひとりさまのつきあい  髙橋千鶴子さんが亡くなった。  清水焼人形作家。京は東山、清水寺に上る参道の途中にある清水焼の老舗の長女。店は弟夫婦に任せて、清水焼とはひと味ちがう人形をお店に出していたおひとりさま。若い時、店先に飾ってあった愛らしい土人形のブローチを

29
“しなやかに力強く、理想の国を詠う若き詩人”アマンダ・ゴーマン――連載「アメリカ、その心の生まれるところ~変革の言葉たち」新元良一

“しなやかに力強く、理想の国を詠う若き詩人”アマンダ・ゴーマン――連載「アメリカ、その心の生まれるところ~変革の言葉たち」新元良一

 自由・平等・フロンティアを旗印に、世界のリーダーとして君臨してきたアメリカ。様々な社会問題に揺れるこの国の根底には何があるのか? 建国から約230年。そこに培われた真のアメリカ精神を各分野の文化人の言葉の中に探ります。  第1回は、バイデン大統領の就任式典で、自作の詩を朗読し一躍世界の脚光を浴びた若き詩人、アマンダ・ゴーマンです。 第1回「国は瓦解してはいない / ただ未完成なだけ」 アマンダ・ゴーマン 波乱の幕開け  ぎりぎりのところであった。アメリカの首都ワシントンで

38
都会暮らしでは叶わない自分好みの庭造り――「熊本 かわりばんこ #03〔「庭育て」が始まった〕」吉本由美

都会暮らしでは叶わない自分好みの庭造り――「熊本 かわりばんこ #03〔「庭育て」が始まった〕」吉本由美

 長年過ごした東京を離れ故郷・熊本に暮らしの場を移した吉本由美さんと、熊本市内で書店&雑貨カフェを営む田尻久子さん。  本と映画、そして猫が大好きなふたりが、熊本暮らしの手ざわりを「かわりばんこ」に綴ります。 ※#01から読む方はこちらです。 ひさしぶりに散歩に出ると  2021年5月15日、早くも熊本に梅雨入りが発表された。平年より20日早く、1951年の統計開始以来過去2番目に早いらしい。かんかん照りより雨降りが好きだけれど、まだ5月半ば、早すぎませんかと思う。もう少し

21
日比谷の書店員のリアルな日常、街の情景、本の話――〔とんびとカラス〕 新井見枝香

日比谷の書店員のリアルな日常、街の情景、本の話――〔とんびとカラス〕 新井見枝香

※当記事はエッセイ連載「日比谷で本を売っている。」の第17回です。第1回から読む方はこちらです。  ゴールデンウィークは仕事で福井県の温泉地に滞在していた。そこかしこに広がる田んぼは、苗を植えたばかりの状態である。その辺りから愉快な蛙の鳴き声が聞こえるものの、透き通った水を覗き込んでも、姿は見えない。そうかと思えば、ぎょっとするほど近くに、白鷺が黙って佇んでいる。都内でこんなに巨大な鳥がふらふらしていたら、たちまち人だかりができるか、捕獲されるだろう。道端に生える雑草の合間

26