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ミステリー小説や食エッセイから、小中学生向けの教養読み物まで、さまざまな興味・関心を刺激する作品を取りそろえています。
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2023年9月の記事一覧

終わりを意識しても生きる意味は見出せる――「不安を味方にして生きる」清水研 #08 [「死」に対する不安をどう考えるか④]

不安、悲しみ、怒り、絶望……。人生にはさまざまな困難が降りかかります。がん患者専門の精神科医として4000人以上の患者や家族と対話してきた清水研さんが、こころに不安や困難を感じているあらゆる人に向けて、抱えている問題を乗り越え、豊かに生きるためのヒントをお伝えします。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #08 「死」に対する不安をどう考えるか④生きる意味を見失ったとき  死を考え、いずれ自分が消滅するということを意識すると、別の悩みが生じる場合があります。それは、

死のパラドックスに対処するために――「不安を味方にして生きる」清水研 #07 [「死」に対する不安をどう考えるか③]

不安、悲しみ、怒り、絶望……。人生にはさまざまな困難が降りかかります。がん患者専門の精神科医として4000人以上の患者や家族と対話してきた清水研さんが、こころに不安や困難を感じているあらゆる人に向けて、抱えている問題を乗り越え、豊かに生きるためのヒントをお伝えします。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #07 「死」に対する不安をどう考えるか③自らが消滅することに対する不安  この連載の第5回と第6回で、「死」にまつわる不安は3つあること、そして死にいたるまでの肉

連載 ロジカルコミュニケーション入門――【第6回】「ならば」の用法に注意しよう!

●論理的思考の意味  本連載【第1回】「論理的思考で視野を広げよう!」では、「論理的思考」が「思考の筋道を整理して明らかにする」ことであると解説した。たとえば「男女の三角関係」のように複雑な問題であっても、思考の筋道を整理して明らかにしていく過程で、発想の幅が広がり、それまで気づかなかった新たな論点が見えてくる思考法である。  【第2回】「論理的思考で自分の価値観を見極めよう!」では、「ロジカルコミュニケーション」によって新たな論点を探し、反論にも公平に耳を傾け、最終的に

支えたくなる総理大臣の資質や性格とは――『総理になった男』中山七里/第12回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。かつての党員仲間だった山添国交大臣と意見がかち合ってしまった大隈官房長官は、加納総理の思いに応えるため、山添の説得に動くが――  *第1回から読む方

連載 シン・アナキズム 第5章 グレーバー (その7)

この連載でも取り上げ、日本語訳が出ていないと文句を言っていた、グレーバーとウェングロウの『万物の黎明』が、酒井隆史訳で光文社から9月30日に出版されます。さっそく見本をいただきました。酒井さん、毎度毎度ありえない長さの翻訳をありがとう! ちなみに日本語訳は本文だけで二段組で593ページあります。 価値はモノではなく「関係」にある またしても長い前置きのようだが、ここまでの話を念頭に置くと、『価値論』でグレーバーが価値とは何かについて考察している部分に納得がいく。『価値論』第

正解は「縦になる」――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は、台風の到来に伴う体調不良への対応策について考えます。 ※当記事は連載の第30回です。最初から読む方はこちらです。 #30 台風一過 夜更けから雨が降り続け午前中は台風が吹き荒れ、今はもう通り過ぎたが、窓の外では、真っ黒なアスファルトをぱらぱらと小雨が叩いている。前日から、何か見えないものにのしかかられているくらい身体が重く、飛行機に乗っている時のように頭

「日記の本番」8月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。くどうさんの8月の「日記の練習」をもとにしたエッセイ、「日記の本番」です。 小学生のとき、ゲームボーイカラーを持っていた。ねだって買って貰った記憶はあるのだが、欲しかったのは「みんなが持っているから」という理由であり、むかしから、ゲーム自体はぜんぜんハマらない性格だった。(ゲームって、でも、現実じゃないしなあ)と、やけに俯瞰して、その時間を有意義に思えないのだった。みんながポケモンをやってい

しっとりチャーハンの聖地「10歳から中華の道に」(「丸鶴」店主・岡山実)【前編】

チャーハンの枕詞になっている「パラパラ」。ところが、その逆をいく「しっとり」で、全国から人が集まり行列する町中華があります。創業57年の、東京・板橋区の「丸鶴」。10歳でこの道に入ったという、店主の岡山実さん(76)の歩みは戦後の町中華の歴史そのもの。時代とともにチャーハンはどのように変わってきたのか。なぜ全国から人が行列するのか、前後半の2回にわたってお届けします。 10歳で「中華の道」へ。15歳で店長に終戦の翌年、1946年に、ここ東京・板橋区の大山で生まれ育ちました。

人間を拒絶する厳しくて魅力的な場所――「マイナーノートで」#30〔森林限界〕上野千鶴子

各方面で活躍する社会学者の上野千鶴子さんが、「考えたこと」だけでなく、「感じたこと」も綴る連載随筆。精緻な言葉選びと襞のある心象が織りなす文章は、あなたの内面を静かに波立たせます。 ※#01から読む方はこちらです。 森林限界 森林限界。日本の本州中部では標高2500メートル以上にならないと達しない。  日本アルプスには北アルプスにも南アルプスにも3000メートル級の山々が連なる。暑く苦しい樹林帯を脱けると、いっきに眺望が開ける。そこは這松と草しか生えない森林限界だ。動物は

政治家は自分の下した判断に責任を持つべき――『総理になった男』中山七里/第11回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。ダムの事前放流の一元化に向けて閣僚を集めた会議を催すも、過去の政策を指摘され席を立ってしまった大隈官房長官。次なる台風が迫る中、慎策は各閣僚たちの思

連載 シン・アナキズム 第5章 グレーバー (その6)

天気予報と下北沢 毎日暑い。暑さについては、お天気キャスターや気象予報士がエルニーニョやラニーニョなど、何やらかわいい名前の現象と関連づけて解説してくれている。そして、「○十年に一度の暑さ」だとか毎年のように言っていたと思ったら、とうとう今年は世界の気温が観測史上最高の7月、そして8月になったらしい。どうも毎日のお天気ニュースは、熱中症や暑さ対策のためエアコンをつけて、と言ったり、目下の気象条件から当面の暑さの原因を説明するのに専念することで、地球に人間が多すぎてエネルギー

「日記の練習」8月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。そんなくどうさんの8月の「日記の練習」です。 8月1日 福引。赤、赤、赤、赤、赤、紫、赤、赤、赤、赤、赤、赤。 8月2日 「青春みたい」と帰り際言い合って、青春ってこの人生をつくづく気に入っているって意味かもしれない。 8月3日 ちいさなしゃぼん玉が出続ける機械があれば、ちいさなしゃぼん玉が出続ける機械を乗せた車をゆっくりと押し続ける仕事の人もいる。 8月4日 ミドリが「おれは焼きそば

「いつかきっと」と思いつつ、妄想の船旅へ――お題を通して“壇蜜的こころ”を明かす「蜜月壇話」

タレント、女優、エッセイストなど多彩な活躍を続ける壇蜜さん。ふだんラジオのパーソナリティとしてリスナーからのお便りを紹介している壇蜜さんが、今度はリスナーの立場から、ふられたテーマをもとに自身の経験やいま思っていることなどを語った連載です。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #17 なんとなく気になっているけれど、いまだできないこと タクシーが苦手だ。電車、バス、飛行機など、数ある移動手段のなかでも圧倒的にタクシーとの相性が悪い。10分ほど乗っていると、だんだん車酔