マガジンのカバー画像

連載

414
ミステリー小説や食エッセイから、小中学生向けの教養読み物まで、さまざまな興味・関心を刺激する作品を取りそろえています。
運営しているクリエイター

2020年7月の記事一覧

中野京子「異形のものたち――絵画のなかの怪を読む 《古今東西、世にも奇妙なキメラたち(1)》」

 画家のイマジネーションの飛翔から生まれ、鑑賞者に長く熱く支持されてきた、名画の中の「異形のものたち」。  大人気「怖い絵」シリーズの作家が、そこに秘められた真実を読む。  ※当記事は連載第5回です。第1回から読む方はこちらです。 「キメラ(英語chimera)」という生物学用語がある。一個体の中に異なる遺伝子型の細胞が共存する現象、またその個体を指す。一九〇七年にドイツの植物学者ハンス・ヴィンクラーが、トマトとイヌホオズキを接ぎ木して作ったものをキメラと命名した(ちなみに

エッセイ「日比谷で本を売っている。」〔大人の矛盾と子供のモヤモヤ〕新井見枝香

日比谷で働く書店員のリアルな日常、日比谷の情景、そして、本の話(第7回)。※最初から読む方はこちらです。  勤め先の書店がある商業施設「日比谷シャンテ」は、地下2階で日比谷駅に直結している。その通り道には、大好きなスターバックスがあって、通りかかるたびに甘いドリンクを飲む習慣がついてしまった。しかし、行きも帰りもとなると、さすがに節制したほうが良いのではと思い、ミルクを無脂肪に変更することにした。なんとなくおしゃれなオーダーである。ところがどうしてもさっぱりとした味になるた

人生と物事の価値観を根底から揺るがしたあの日――情報化社会の闇を描いた長編ミステリー小説「境界線」中山七里

 鵠沼駿と五代良則それぞれの関係者への事情聴取を行ったが、ふたりの決定的な接点も有力な犯行の手がかりも、笘篠刑事は見つけることができなかった。それどころか、話を訊けば訊くほど鵠沼が犯行に及ぶ人間像からは遠く感じられるほどであった。しかし、鑑識を進めていた両角より、鵠沼がキズナ会の事務所に残していたジャケットから検出された土が、真希竜弥が殺害された現場の土の成分と一致したとの報告を受け、事態は一変する。  ※本記事は連載第11回です。 最初から読む 境界線 第11回連載第1

「鈴川絢子のママYouTuberの子育てノート」第3回  「おうち時間」と家族の成長

 2児の母として、日々をいかに楽しむか。大好きな鉄道や、家族の何気ない生活の様子などを通して、飾らない言葉で伝える姿が、とくに鉄道好きの子どもがいるお母さんたちから支持されている、人気YouTuberの鈴川絢子さん。  当連載では、動画配信では伝えきれない子育ての工夫や想いなどを、家族とのエピソードとともに、鈴川さんがつづっています。  連載第3回となる今回は「『おうち時間』と家族の成長」がテーマ。連載予定にはなかった特別編です。  新型コロナウィルスの流行により、誰もが自粛

「山ヲ歩キ、湯ニ到ル――#02大台ヶ原山と入之波温泉」大内征

登山と温泉はセットである――。 低山里山に歴史文化や神話民話を追い求め、日本各地を旅する低山トラベラー・大内征が綴る、山のこと、湯のこと、旅のこと。 第二回は、とある夏の奈良の山旅。室生から吉野を経て十津川へと縦断する旅路の途中、日本有数の降雨量を誇る大台ヶ原山を訪れたときのこと。そこで立ち寄ったのは、入之波温泉でした。 ※連載第1回から読む方はこちら。  ある年のこと。  梅雨が明けたばかりだというのに、山道具の収納ラックから雨具の類を出してきてはザックにパッキングしてい