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自分を「よくやった」と認めてあげていいじゃないか。「いちばん知っている」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。
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#15 いちばん知っている

 レジンクラフトにはまっていた時期がある。
 こどくはむかしから不器用で、こまかい作業がにがてだった。でも、なぜか、ときどき手を動かすのがすきになる時期がやってくる。
 はじめは、幼稚園のとき。みつあみがだいすきで、幼稚園でいちばんみつあみを作るのがはやかった。みつあみだけではなく、よつあみ、いつつあみ、むつあみにも挑戦し、おともだちやかぞくをおどろかせた。
 つぎに手を動かすのがすきになったのは、小学生のとき。ゆびあみがクラスではやって、こどくは夢中になり、ゆびあみを極めた。とくにだれも必要としているわけではないのに、ずーっとゆびあみをして、マフラーをあみあげた。
 こどくは高校に6年通ったのだが、高校をおやすみしていた時期もある。そんな高校4年生のときに、レジンクラフトにはまった。レジンのパーツを買い集め、モールドと呼ばれる型にレジンを流しこみ、たくさんのイヤリングやネックレスや、キーホルダーなどを作った。いちばん気に入ったのは髪どめだ。お花を封入して、ラメをたくさんちりばめた。あまりにたのしく作ることができたので、量産してかぞくや親戚にあげた。
 その後も、精神科に入院中にペーパークラフトにはまったり、退院後のなつやすみにアナログイラストにはまったりした。
 そのときのこどくは、うまくできたかどうかには、あまり頓着していなかった。もしうまくできているかどうかに目を向けたとしたら、こどくは落ちこんでいたかもしれない。それよりも、作ることで得られる「たのしい」を求めていた。
 たくさん作って、作品たちをながめる時間。そんな時間くらい、自分を「よくやった」と認めてあげていいじゃないか。
 そこにかけた熱量は、自分がいちばん知っているのだから。

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※本連載は毎週月曜日に更新予定です。

プロフィール

もりのこどく
VTuber。「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」。そんな思いで19歳で配信を始めた。バーチャルの強みを生かして、当事者たちの居場所をクラウドファンディングでメタバース上に創るなど幅広く活動。2023年、SDGsスカラシップ岩佐賞を受賞。

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