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J-WAVE「GOOD NEIGHBORS」×佐野洋子『佐野洋子の「なに食ってんだ」』(3)——番組で朗読されたエピソードを公開

 クリス智子さんナビゲートのJ-WAVEの人気番組「GOOD NEIGHBORS」。その中で、”朗読でたのしむ食にまつわるストーリー”をコンセプトにしたコーナー「TABLESIDE STORY」において、今週は佐野洋子さんの著書『佐野洋子の「なに食ってんだ」』が取り上げられています。そこで、紹介されたエピソードを3回にわたってご紹介していきます。本日は最終回「雨」というお話です。

◎『私の猫たち許してほしい』「空から降るもの」

 子どものころ雨が降ると外へとび出して、口をあけて天をあおぎ見た。
目まではりさけんばかりに大口をあけても、口の中に入ってくる雨はたよりなく少なかった。雨は甘かった。
 雨の中にはお砂糖が入っているのだという子どもの噂を、私は信じていた。

 私は、口が疲れなくていいように、ままごとのバケツを外へ出して、ぬれながら、雨がたまるのをしゃがんで待った。
 そしてわずかにたまった水に指をつっこんでなめてみた。少しも甘くはなかった。
 私はまた天をあおいで口をあけた。
 空から降ってくる小さな水はたしかに甘い。私は私の口とバケツの間で何かがおこるのだと思っていた。

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プロフィール
佐野洋子(さの・ようこ)

1938年、北京に生まれる。武蔵野美術大学デザイン科卒。1967年、ベルリン造形大学においてリトグラフを学ぶ。主な作品に『100万回生きたねこ』(講談社)、『わたしのぼうし』(ポプラ社・講談社出版文化賞絵本賞)、『ねえ とうさん』(小学館・日本絵本賞/小学館児童出版文化賞)などの絵本や、童話『わたしが妹だったとき』(偕成社・新美南吉児童文学賞)、『神も仏もありませぬ』(筑摩書房・小林秀雄賞)などのエッセイ、対談集も多数。2003年紫綬褒章受章、2008年巌谷小波文芸賞受賞。2010年、72歳永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)。

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