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J-WAVE「GOOD NEIGHBORS」×佐野洋子『佐野洋子の「なに食ってんだ」』(2)——番組で朗読されたエピソードを公開

 クリス智子さんナビゲートのJ-WAVEの人気番組「GOOD NEIGHBORS」。その中で、”朗読でたのしむ食にまつわるストーリー”をコンセプトにしたコーナー「TABLESIDE STORY」において、今週は佐野洋子さんの著書『佐野洋子の「なに食ってんだ」』が取り上げられています。そこで、紹介されたエピソードを3回にわたってご紹介していきます。本日は「弁当」というお話です。

弁当

◎『アカシア・からたち・麦畑』「包丁」

 何が原因だったか忘れてしまったが、私と母は険悪になってもう何日も口をきいていなかった。
 最初の日、私は夕飯を食べるのを拒否した。母は、食卓の前に私をすわらせ、説教を始めた。私にはそれが、母の都合だけをつみ重ねて、それもはてしなくとめどない方向に向かって行くと思われ、かたくなに何も言わなかった。

 次の日の朝食もとらなかった。台所に、私の弁当箱があった。一銭もお金がなかったので、致し方ない、弁当はかばんに入れた。昼時間弁当をあけると鮭の切り身が入っていた。鮭の切り身はごちそうだったので、母が、私さえあやまれば、休戦したがっているのだということがわかった。鮭の切り身がおいしいことと、あやまることは別だった。

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プロフィール
佐野洋子(さの・ようこ)

1938年、北京に生まれる。武蔵野美術大学デザイン科卒。1967年、ベルリン造形大学においてリトグラフを学ぶ。主な作品に『100万回生きたねこ』(講談社)、『わたしのぼうし』(ポプラ社・講談社出版文化賞絵本賞)、『ねえ とうさん』(小学館・日本絵本賞/小学館児童出版文化賞)などの絵本や、童話『わたしが妹だったとき』(偕成社・新美南吉児童文学賞)、『神も仏もありませぬ』(筑摩書房・小林秀雄賞)などのエッセイ、対談集も多数。2003年紫綬褒章受章、2008年巌谷小波文芸賞受賞。2010年、72歳永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)。

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