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J-WAVE「GOOD NEIGHBORS」×佐野洋子『佐野洋子の「なに食ってんだ」』(1)——番組で朗読されたエピソードを公開

 クリス智子さんナビゲートのJ-WAVEの人気番組「GOOD NEIGHBORS」。その中で、”朗読でたのしむ食にまつわるストーリー”をコンセプトにしたコーナー「TABLESIDE STORY」において、今週は佐野洋子さんの著書『佐野洋子の「なに食ってんだ」』が取り上げられています。そこで、紹介されたエピソードを3回にわたってご紹介していきます。今回は昨日放送された「中国茶」というお話です。

中国茶

◎『ふつうがえらい』「贈り物」

 それでも人に何かをもらって嬉しく忘れられないこともある。けちで有名な友達が、中国茶を持って来てくれた。
「百グラム二千五百円だからね。一ぱいだけ飲ませてあげる」
 友達は袋から一回分のお茶を用心深く急須に入れて飲ませてくれた。これは実に玄妙な味わいだった。今でもその香りと甘さと苦みのまざった味がよみがえる。
「もう一ぱい」
「駄目」
 友達はぐるぐると輪ゴムでお茶の袋の口をしめると残りをハンドバッグに入れた。私はその友達の心根が実にうれしい。百グラム全部もらったらあの感激はすぐ消えてしまっただろう。あまりのうまさに私にも一口味わわせてやろうと、ハンドバッグに大事なお茶を入れてはるばる電車にのってやって来てくれたのだ。そのへんの果物屋で、義理の手土産を持ってくるのとありがたみが違う。あのけちめ。

明日へつづく

プロフィール
佐野洋子(さの・ようこ)

1938年、北京に生まれる。武蔵野美術大学デザイン科卒。1967年、ベルリン造形大学においてリトグラフを学ぶ。主な作品に『100万回生きたねこ』(講談社)、『わたしのぼうし』(ポプラ社・講談社出版文化賞絵本賞)、『ねえ とうさん』(小学館・日本絵本賞/小学館児童出版文化賞)などの絵本や、童話『わたしが妹だったとき』(偕成社・新美南吉児童文学賞)、『神も仏もありませぬ』(筑摩書房・小林秀雄賞)などのエッセイ、対談集も多数。2003年紫綬褒章受章、2008年巌谷小波文芸賞受賞。2010年、72歳永眠(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)。

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