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どんな趣味も、思いがけず失うときが来るかもしれない。「また見つければいい」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。
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#7 また見つければいい

 読書はこどくの趣味だった。
 だった、と過去形なのは、統合失調症になってから、読書がとんとできなくなってしまったからだ。
 認知機能障害といって、統合失調症には、それまであたりまえにできていたことができなくなる症状がある。こどくたち統合失調症当事者は、長いひとで一生、その症状に苦しむことになる。こどくはその症状のせいで、読書がにがてになった。
 統合失調症を発症するまでは、いわゆる本の虫だった。図書館に行っては本を借り、司書さんには顔を覚えられるほどだった。本屋にも通いつめ、おこづかいで文庫本を買って読んだ。
 それが突然、読書ができなくなった。
 こどくをおそったのは、絶望感だった。
 すきな作家の本でさえも読めない、読んでいても文字の上を目がすべる。内容が頭に入ってこない。それまでは活字をはやく読めることがこどくのとりえだったのに。これから、なにをすればいいのか、わからなくなった。
 そんなとき、ふと興味がわいて、ノートパソコンを購入した。なにに興味がわいたかは、長くなるのでまたこんど。そのパソコンは、パソコン初心者には少しばかりスペックがよすぎるものだった。
 こどくはそれから、パソコンの勉強をはじめた。Wordなどの基礎的なソフトから、動画編集ソフト、3DCGを扱うソフト、プログラミングまで。どれもたのしく、なんどもくりかえして練習した。そして、どんどんとはまっていった。
 最終的に、そのノートパソコンではスペックが足りなくなり、デスクトップパソコン、ゲーミングパソコンと、機材をアップグレードしなければならないほどにのめり込んでいた。その経験はやがてVTuberとしての活動にいかされることになる。
 読書、という、人生の趣味だと思っていたものを失ったこどくだが、パソコンというあらたな趣味に巡り会えた。どんな趣味も、思いがけず失うときが来るかもしれない。でも、大丈夫。あらたな趣味を、また、見つければいいのだ。

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※本連載は毎週月曜日に更新予定です。

プロフィール

もりのこどく
VTuber。「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」。そんな思いで19歳で配信を始めた。バーチャルの強みを生かして、当事者たちの居場所をクラウドファンディングでメタバース上に創るなど幅広く活動。2023年、SDGsスカラシップ岩佐賞を受賞。

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