見出し画像

マイノリティは存在する。見えていないか、見ていないだけだよ。「目を凝らして、耳を澄まして」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。
※#0から読む方はこちらです。


#27 目を凝らして、耳を澄まして

 こどくは、統合失調症になるまで、この病気のことをいっさい知らなかった。100人にひとりがかかり、10代の発症もおおいこの病気を、だ。
 こどくが診断を受けたときにいっしょにいたかぞくも、「精神分裂病のことですか」と聞いた。そのくらい統合失調症については、深く知らなかった。
 こどくが統合失調症になった、とおともだちにうちあけたときもそうだった。おともだちは統合失調症そのものを知らなかった。
 こどくは、つねづね考えている。マイノリティは見えづらい、と。
 あらゆるマイノリティが、この世のなかには存在する。こどくのような精神疾患を持っているひとや、身体障害を持っているひと、性について悩んでいるひと。ここではあげきれないくらい、たくさんのマイノリティが存在している。
 しかし、見えづらい。見えづらいことこそが、マイノリティがマイノリティである所以だ。
 だから、こどくは、こう考えることにした。
 この世のなかで、生きづらさを抱えるひとは山ほどいる。いや、抱えていないひとはいないだろう。だれもが悩めるひとであり、困りごともありながら、生きているだろう。
 だから、マイノリティはたしかに存在するのだ。もし、「自分のまわりにマイノリティはいないよ」と考えている君がいたら、こう教えてあげたい。
 マイノリティは存在する。見えていないか、見ていないだけだよ。
 だからこどくは、すこしでも、マイノリティが目にうつるように、声が聞こえるように、目を凝らして、耳を澄ましていたい。

#28を読む
#26へ戻る
※本連載は毎週月曜日に更新予定です。

プロフィール

もりのこどく
VTuber。「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」。そんな思いで19歳で配信を始めた。バーチャルの強みを生かして、当事者たちの居場所をクラウドファンディングでメタバース上に創るなど幅広く活動。2023年、SDGsスカラシップ岩佐賞を受賞。

※「本がひらく」公式Twitterでは更新情報などを随時発信しています。ぜひこちらもチェックしてみてください!