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小説・エッセイ

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人気・実力を兼ね備えた執筆陣によるバラエティー豊かな作品や、著者インタビュー、近刊情報などを掲載。
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2023年4月の記事一覧

総理大臣がお忍びで街を市場調査したら――中山七里『総理になった男』第2回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編開始!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。次なる相手は長らく続く景気低迷。決定的な打開策を見出せない政府に対し、慎策はまずは“現場”をリサーチしにいく―― 2  三日後の日曜日、慎策

増える本、どうする?――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は小説家にはつきものの悩みについてです。 ※当記事は連載の第25回です。最初から読む方はこちらです。 #25 ときめきでは決められない 新型コロナウイルスが発生してから三年。ものすごく本が増えてしまったのだ。物書きの家に本が多いのは当たり前だし、物書きに限らず自粛の間にネットで本を買いまくった人は多いだろうと思う。しかし、我が家のそれは、生活に支障が出るくら

「チャーハンがパラパラかどうかなんて悩む必要は全くない」平野レミ(料理愛好家)

「どんなチャーハンを食べてきましたか?」──そう尋ねると、人はときに饒舌になります。「なんてことのない日常」に寄り添った料理を通じて語られる、愛着のある情景。そこに、その人の素顔や原点が見えてきます。 連載第1回目は、明るいキャラクターとユニークなオリジナル料理で人気の料理愛好家の平野レミさん。どんなチャーハンを作り、食べてきたのでしょう。 具やご飯を派手に飛び散らかした、子ども時代が原点チャーハンを初めて作ったのは小学生のころ。へらでご飯や具を炒めようとするんだけれど、右

政治に無頓着な男が総理大臣の替え玉になったら――中山七里『総理になった男』第1回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編開始!  ある日突然、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いを原動力に国内外の難局を切り抜け、国民の信頼を得てきた。あれから2年、慎策は長らく低迷する経済問題に切り込んでいく――。 一 VS経済1  ネットで主なニュースに目を通した慎

潔癖だった父の「流儀」がコロナ禍で「ふつう」に――「マイナーノートで」#25〔衛生観念〕上野千鶴子

各方面で活躍する社会学者の上野千鶴子さんが、「考えたこと」だけでなく、「感じたこと」も綴る連載随筆。精緻な言葉選びと襞のある心象が織りなす文章は、あなたの内面を静かに波立たせます。 ※#01から読む方はこちらです。 衛生観念 口のなかに違和感をおぼえた。舌で探ると、口内炎だった。3年ぶりだ。しばらく会わないが、そして会いたいわけではないが、なつかしい友に会うような気がした。  これまでも、疲れがたまるとそのたびに口内炎に見舞われた。それが体調の危険信号、しごとを減らしなさ

ジワジワと今後の自分に影響するように感じること、それは……。「今思えば」影響を受けた出来事――お題を通して“壇蜜的こころ”を明かす「蜜月壇話」

タレント、女優、エッセイストなど多彩な活躍を続ける壇蜜さん。ふだんラジオのパーソナリティとしてリスナーからのお便りを紹介している壇蜜さんが、今度はリスナーの立場から、ふられたテーマをもとに自身の経験やいま思っていることなどを語った連載です。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 # 012 「今思えば」影響を受けた出来事 以前、とある番組の依頼を受け、アジアのある場所に行ってきた。番組は第二の故郷のような、心身ともに影響を受けた場所をあげて実際にそこへ行き、それまでの人

「おもしろいから書くのではない、書いているからどんどんおもしろいことが増える」——くどうれいんさんによる「日記の練習」がはじまります

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。自身が創作する上でとても大切な要素になっているのが「日記」です。そんなくどうさんにとって日記とは何なのでしょうか。 「日記の練習」をはじめます 十代後半、すべての歌がわたしのことを歌っているように感じた時期があった。風が吹いても魚が跳ねても自転車からへんな音がしても同級生が捻挫しても、それがわたしの人生のとびきりの出来事だと本気で思った。毎日書き留めておきたいことがありすぎて、それなのに、書