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小説・エッセイ

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人気・実力を兼ね備えた執筆陣によるバラエティー豊かな作品や、著者インタビュー、近刊情報などを掲載。
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2022年4月の記事一覧

渋谷の書店員のリアルな日常、街の情景、本の話――〔いくらと思い〕 新井見枝香

※当記事は1話読み切りのエッセイ連載の第25回です。どの回からもお読みいただけますが、第1回から読む方はこちらです。日比谷から渋谷の書店に移った新井見枝香さん、連載もリニューアル再開です。  渋谷の書店で働くようになって、まず最初にぶち当たる困難が昼飯だとは思わなかった。限りある休憩時間に公園通りを行ったり来たりするも、食指が全く動かない。どこにでもあるチェーン店は悔しいし、キラキラした目新しい店は、制服の上にパーカーを羽織っただけの私には、敷居が高かった。私が食べたいのは

目の前で戦争が始まる―― 「マイナーノートで」#13〔戦争の男女平等〕上野千鶴子

各方面で活躍する社会学者の上野千鶴子さんが、「考えたこと」だけでなく、「感じたこと」も綴る連載随筆。精緻な言葉選びと襞のある心象が織りなす文章は、あなたの内面を静かに波立たせます。 ※#01から読む方はこちらです。 戦争の男女平等 戦争が始まる。戦争が始まった。目の前で戦争が始まってしまった。まさか、の21世紀に。冷戦は終わったはずなのに、こんなに野蛮な熱い戦争が。人間はちっとも進歩しないのか。  見ているだけで手も足も出せない。祈るだけで何もできない。その事実にうちのめさ

タレントのレシピ本から学べること――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今月は柚木さんがこよなく愛する、有名人のレシピ本についてです。 ※当記事は連載の第13回です。最初から読む方はこちらです。 #13 有名人のレシピ本 料理家の土井善晴先生がラッパーで料理好きで知られるスヌープ・ドッグの料理本についての書評を出した。一読して私はえ?と首をかしげた。いろいろと問題なところはあるが、一番良くないのはアメリカの食文化や人種問題はもとより

沖縄に、琉球料理の伝道師に会いに行く――ぬちぐすい~聞き書き琉球料理

 琉球王国の流れをくむ洗練された料理のつくり手で、かつて日本全国からその料理を食べるためだけに沖縄を訪れる人も多かった伝説の料理人、山本彩香さん。自身の店を閉じた後も、琉球料理を次世代に伝える活動に取り組んでいます。食や工芸に造詣の深いライターの澁川祐子さんは、山本さんに惹かれたその一人。何度も沖縄に足を運び、山本さんから直接教わった料理や文化を記録した新連載です。 #0 琉球から沖縄へと続く文化を追って  琉球料理家の山本彩香さんを象徴する料理の一つに、自家製の豆腐ようが