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小説・エッセイ

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人気・実力を兼ね備えた執筆陣によるバラエティー豊かな作品や、著者インタビュー、近刊情報などを掲載。
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2021年6月の記事一覧

日比谷の書店員のリアルな日常、街の情景、本の話――〔推しと深掘り〕 新井見枝香

※当記事はエッセイ連載「日比谷で本を売っている。」の第18回です。第1回から読む方はこちらです。  職場のバックヤードには、徒歩圏内にある大型劇場「シアタークリエ」「帝国劇場」「東京宝塚劇場」の公演スケジュールが貼り出されている。それは我々売場スタッフにとって、天気予報より重要な情報なのだ。公演の前後は、まるでコンサート会場の物販ブースみたいに、レジが混雑する。現在公演中の舞台の、プログラムやグッズを販売しているからだ。私も好きなロックバンドのLIVEに行くと、ついオリジナ

自粛時のライフハックに疲れたら――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。今回は、一年を超える自粛生活、工夫を凝らして過ごしてきた柚木さんに、ふいに訪れた「工夫ナシ時間」についてお届けします。 ※当記事は連載の第3回です。最初から読む方はこちらです。 #3 ステイホームの工夫疲れ  日常にライフハックを!との思いから始まったこの連載。しかし、「ちょっとした工夫で毎日を楽しく」することにほとほと嫌気がさしてきたのは、肺が弱いがために一年

またね、と言って別れるとき――「マイナーノートで #03〔おひとりさまのつきあい〕」上野千鶴子

各方面で活躍する社会学者の上野千鶴子さんが、「考えたこと」だけでなく、「感じたこと」も綴る連載随筆。精緻な言葉選びと襞のある心象が織りなす文章は、あなたの内面を静かに波立たせます。 ※#01から読む方はこちらです。 おひとりさまのつきあい  髙橋千鶴子さんが亡くなった。  清水焼人形作家。京は東山、清水寺に上る参道の途中にある清水焼の老舗の長女。店は弟夫婦に任せて、清水焼とはひと味ちがう人形をお店に出していたおひとりさま。若い時、店先に飾ってあった愛らしい土人形のブローチを