#おすすめ本

日比谷で働く書店員のリアルな日常、街の情景、本の話――「日比谷で本を売っている。〔焼き野菜と短歌〕」新井見枝香
※当記事はエッセイ連載の第14回です。第1回から読む方はこちらです。 知人の作家が、Twitterのリプライで焼き野菜の作り方を質問され、なぜそんなことを聞くのかと困惑していた。彼女は料理研究家でも野菜の専門家でもない。そもそも焼き野菜は、野菜を焼いただけである。投稿した写真には、焦げ目が付くほどしっかり焼いた白菜と、茹でて酢味噌を添えたホタルイカ、皿にたっぷり盛っただけの生ハムが写っていた。統一感がなく、器もバラバラである。つまり今日は何でもない日で、いつも通りの晩酌タ
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日比谷で働く書店員のリアルな日常、日比谷の情景、そして、本の話――新井見枝香「日比谷で本を売っている。〔おでん屋台と綿入れはんてん〕」
※当記事はエッセイ連載の第13回です。第1回から読む方はこちらです。 近所の小学校の校庭を囲むフェンスに、生徒が夏休みの宿題で作った俳句が掲示されている。どうも冬休みには作らなかったようで、枯れ葉が散って3学期が始まっても、そのままだ。特に冷え込む今日この頃、前を通る度に、夏が恋しくなって仕方がない。 私が小学生の頃は、優秀な作品だけが貼られたものだが、生徒数の違いか、平等に拘(こだわ)る時代のせいか、おそらく全校生徒の作品をランダムに並べていると思われた。 《暑き日
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日比谷で働く書店員のリアルな日常、日比谷の情景、そして、本の話――エッセイ「日比谷で本を売っている。」第12回 〔猫とうなぎ〕新井見枝香
※第1回から読む方はこちらです。 うさぎを追って穴に飛び込んだアリスは、元の世界に戻れないと、ハートの女王に泣きついたのだが、猫を追って路地裏に迷い込んだ私は、お家に帰れないと、Googleマップに頼ってしまった。情けない。 それにしても、不思議な猫だった。動物に好かれない私は、犬ならまだしも、猫には全く相手にされないどころか、脱兎のごとく、逃げられる。野良猫は警戒心が強かろうと、知人の飼い猫にチュールを持って近付けば、猫パンチで叩き落とされる始末。血が滲んだ腕には、飛
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