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ミステリー小説や食エッセイから、小中学生向けの教養読み物まで、さまざまな興味・関心を刺激する作品を取りそろえています。
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2023年7月の記事一覧

連載 ロジカルコミュニケーション入門――【第4回】白黒論法に注意しよう!

●論理的思考の意味  本連載【第1回】「論理的思考で視野を広げよう!」では、「論理的思考」が「思考の筋道を整理して明らかにする」ことであると解説した。たとえば「男女の三角関係」のように複雑な問題であっても、思考の筋道を整理して明らかにしていく過程で、発想の幅が広がり、それまで気づかなかった新たな論点が見えてくる思考法である。  【第2回】「論理的思考で自分の価値観を見極めよう!」では、「ロジカルコミュニケーション」によって新たな論点を探し、反論にも公平に耳を傾け、最終的に

「NHK出版新書を求めて」第6回 装丁家の目に新書の棚はどう映るのか?――奥定泰之(装丁家)さん、名久井直子(ブックデザイナー)さんの場合

各界で活躍する研究者や論者の方々はいま書店で、とくに「新書コーナー」の前で何を考え、どんな新書を選ぶのか? 毎回のゲストの方に書店の回り方、本の眺め方から現在の関心までをじっくりと伺う、NHK出版新書編集部の連載です。 *第1回から読む方はこちらです。 今回はこの人! 奥定泰之(おくさだ・やすゆき) 1970年愛媛県生まれ。おもに書籍や雑誌のデザインを手がける。『早稲田文学』などの雑誌のほか、小説、詩集、実用書、ビジネス書など幅広いジャンルのデザインをおこなう。第40回、

連載 シン・アナキズム 第5章 グレーバー (その5)

考古学とのコラボレーション このように見てくると、文明の進歩と、小さく単純な社会から大きくて複雑な国家への発展という歴史像への疑念は、人類学における一つの伝統だといえる。あるいは文明史に対する人類学的懐疑といってもよい。こうした伝統を受け継ぐ新たな試みとして、グレーバーとウェングロウの『万物の黎明』を位置づけることができる。ここまでの記述から、この本がどんな歴史像、人類史の見方を破壊しようとしているかは、だいたい理解できたはずだ。では具体的にはどうやって、それを遂行しようと

国難の時こそ、党を越えた団結が国を動かす――『総理になった男』中山七里/第8回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。海外赴任先から帰国した慎策の親友であり盟友の風間歴彦の助言によって、慎策は内閣改造を考え始める。重要なのは、思惑がバラバラの党内の派閥に有無を言わせ

連載 シン・アナキズム 第5章 グレーバー (その4)

遺著『万物の黎明』は何を目指したか グレーバーの民主主義=アナキズム像を知って胸が熱くなってきた。そこで次に、The Dawn of Everything: A New History of Humanity(以下、本文中では『万物の黎明』)を取り上げることにしよう。これは、グレーバーの不慮の死によって遺著となってしまった作品である。共著者はユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの考古学教授、デイヴィッド・ウェングロウ。考古学者との共著を通じてグレーバーは、西洋近代を相対視す

残される人を信頼して備える――「不安を味方にして生きる」清水研 #06[「死」に対する不安をどう考えるか②]

不安、悲しみ、怒り、絶望……。人生にはさまざまな困難が降りかかります。がん患者専門の精神科医として4000人以上の患者や家族と対話してきた清水研さんが、こころに不安や困難を感じているあらゆる人に向けて、抱えている問題を乗り越え、豊かに生きるためのヒントをお伝えします。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #06 「死」に対する不安をどう考えるか②安楽死の議論  前回、「死にいたるまでの肉体的な苦しみに対する不安」にふれましたので、このことと密接に関連する安楽死の議論

手は、そのひとの人生を物語る――「マイナーノートで」#28〔ハンド・モデル〕上野千鶴子

各方面で活躍する社会学者の上野千鶴子さんが、「考えたこと」だけでなく、「感じたこと」も綴る連載随筆。精緻な言葉選びと襞のある心象が織りなす文章は、あなたの内面を静かに波立たせます。 ※#01から読む方はこちらです。 ハンド・モデル 電車に隣り合わせた若い女性がスマホをいじっている。その手を見て目が釘付けになった。なめらかな大理石のような肌、シミ一つない白さ、すっと伸びた細い指に手入れされた卵形のネイル。水仕事や土いじりなど、したこともないような繊細さ。日本語に「箸より重いも

苦痛から逃れる手段はある――「不安を味方にして生きる」清水研 #05[「死」に対する不安をどう考えるか①]

不安、悲しみ、怒り、絶望……。人生にはさまざまな困難が降りかかります。がん患者専門の精神科医として4000人以上の患者や家族と対話してきた清水研さんが、こころに不安や困難を感じているあらゆる人に向けて、抱えている問題を乗り越え、豊かに生きるためのヒントをお伝えします。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #05 「死」に対する不安をどう考えるか①現代人の心配事はほとんどが安全なもの  前回、私たちが感じる不安には過剰な傾向があるという話をしました。私たちの脳の構造は

チャーハン好きを隠すほどの苦境を救ったのも「チャーハン」だった(チャーハン栄養士・佐藤樹里)【前編】

子どものころからチャーハンが好きで5000食以上も食べてきたという、チャーハン栄養士の佐藤樹里さん(33)。ところが、そのチャーハン好きを隠さないといけないほどの苦境の時期があったといいます。その苦境から佐藤さんを救ったのは逆転発想の「チャーハン」でした。 祖母から三代続く、「おかか入り」チャーハンの懐かしい味チャーハンはこれまで5000食以上、食べてきましたが、なんだかんだ言って結局よく作るのは、子どものころ家で食べていた「母のチャーハン」です。母のチャーハンには「おかか

「日記の本番」 6月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。くどうさんの6月の「日記の練習」をもとにしたエッセイ、「日記の本番」です。 耳というのはふしぎな部位だと思う。顔のいちばん外側にくっついていて、ひらひらしていて、強くつまむと、ほっぺをつままれるよりは痛くなくて、咲いているみたいなのに自力で閉じることはできなくて、絵で描けと言われても「3」か「6」しか思い出せなくて、穴があって、その穴が暗くて。わたしたちは耳の穴に栓をして音楽を聴き、耳の上に

自粛要請に見合う休業補償とは?――『総理になった男』中山七里/第7回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。緊急事態宣言を発出したものの、企業や個人への補償は未だ定まらないまま。赤字国債も消費税の増税も手詰まりで、財源の確保も難航するなか、慎策はある人物た

「日記の練習」6月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。そんなくどうさんの6月の「日記の練習」です。 6月1日 6月2日 6月3日 6月4日 久しぶりに皮膚科の薬を顔に塗った。弱音を口にして得られる気持ちよさよりも、弱音を吐いて気持ちよさを得ようとした自分にうんざりするほうがからだに悪い、ことが、わかっているからツイートを下書きして消した。 6月5日 耳が塞がったような感じがして、こりゃもしやと思ったら案の定、突発性難聴再発である。耳鼻科

「100分de名著」収録を終えて――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。7月から一か月間、柚木さんが講師として出演する「100分de名著」の収録の裏話をお送りします。 ※当記事は連載の第28回です。最初から読む方はこちらです。 #28 テレビ出演 この連載の媒体はNHK出版だが、同系列のNHKでテレビ出演をする。「100分de名著」にて林芙美子『放浪記』を全4回で解説することになったのである。新刊案内でキー局の番組にちょっとだけ顔が

えげつなき顔で食べたい! 運命のウマイモノ――お題を通して“壇蜜的こころ”を明かす「蜜月壇話」

タレント、女優、エッセイストなど多彩な活躍を続ける壇蜜さん。ふだんラジオのパーソナリティとしてリスナーからのお便りを紹介している壇蜜さんが、今度はリスナーの立場から、ふられたテーマをもとに自身の経験やいま思っていることなどを語った連載です。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #15 運命のウマイモノ 成人して仕事をするとなれば、対象物にお世辞を加えたり、あえてオーバーにリアクションを取ったり表現したりして、視聴者や作り手を喜ばせることは「大人としての作法と生活のため