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ミステリー小説や食エッセイから、小中学生向けの教養読み物まで、さまざまな興味・関心を刺激する作品を取りそろえています。
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2023年5月の記事一覧

連載 ロジカルコミュニケーション入門――【第2回】論理的思考で自分の価値観を見極めよう!

●論理的思考とは何か  本連載【第1回】「論理的思考で視野を広げよう!」でも解説したように、「論理的思考」とは、「思考の筋道を整理して明らかにする」ことである。たとえば「男女の三角関係」のように複雑な問題であっても、思考の筋道を整理して明らかにしていく過程で、発想の幅が広がり、それまで気づかなかった新たな論点が見えてくる。引き続き、「論理的思考」を楽しんでほしい。 ●問題の具体化  さて、読者は、「美容整形」することに賛成だろうか、あるいは、あまり賛成できないだろうか?

4000人以上のがん患者と対話してきた精神科医による豊かな人生のためのヒント――「不安を味方にして生きる」清水研

不安、悲しみ、怒り、絶望……。人生にはさまざまな困難が降りかかります。がん患者専門の精神科医として4000人以上の患者や家族と対話してきた清水研さんが、こころに不安や困難を感じているあらゆる人に向けて、抱えている問題を乗り越え、豊かに生きるためのヒントをお伝えします。 #01 不安の正体をさぐる不安を将来への準備の原動力に  この連載は、人生に不安や困難を感じているあらゆる人に向けて、その人が抱えている問題を乗り越え、豊かに生きるためのヒントをお伝えすることを目的としてい

成田空港のお膝元に聞く外国人犯罪の実態――『総理になった男』中山七里/第4回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。景気対策としてインバウンド消費の向上を検討するも、外国人犯罪に対する懸念で反対される慎策。現場の声を聴くべく呼び出したのは、『逃亡刑事』でお馴染みの

連載 シン・アナキズム 第5章 グレーバー (その3)

「欧米とそれ以外」という世界像を批判する 西欧/欧米とそれ以外の地域や文化の区分を自明とする世界像の批判と、グレーバーにおけるアナキズム観には深い関係がある。つまり、人類学者としての仕事と社会運動の実践家としての活動とは結びついているのだ。では両者の関係はどのようなものなのか。これを明らかにするために、はじめに『民主主義の非西洋起源について』を取り上げる。この翻訳書は、2014年に刊行されたフランス語版を元にいくつかの論考を加えた日本語オリジナルである。ただしフランス語版・

みんなテレビっ子だった!――料理と食を通して日常を考察するエッセイ「とりあえずお湯わかせ」柚木麻子

『ランチのアッコちゃん』『BUTTER』『マジカルグランマ』など、数々のヒット作でおなじみの小説家、柚木麻子さん。動画との付き合い方に悩みつつも、自分の子どものころを振り返ってみると……。 ※当記事は連載の第26回です。最初から読む方はこちらです。 #26 テレビ視聴時間 うちの子どもは、動画に夢中である。すきあらば私のスマホを奪い、YouTubeを見ようとする。もしくは、自宅のテレビ画面でNetflixかAmazon Prime Videoをじっと見ている。タブレットは捨

少女時代の終わり――#1 イーユン・リー『ガチョウの本 The Book of Goose』(3)

完璧な世界の卵  ファビエンヌとアグネスの関係は一心同体と言っていい、あまりに深いもので、すれ違いなどなかった、と書いた。本当にそうだったのか。この物語が大人になったアグネスによって語られている以上、それを確かめるすべはない。だが当時、二人がそう感じていたのは事実だろう。けれども異性愛を前提とする不寛容な世間は、彼女たちに厳しい。そして二人の関係にはやがて、決定的なひびが入ることになる。  皮肉にも、その発端となったのは、遊びとして二人で作り上げた物語だった。本書で何度も

一心同体のような二人の少女――#1 イーユン・リー『ガチョウの本 The Book of Goose』(2)

最新長篇『ガチョウの本』 『ガチョウの本』の主人公は、現在アメリカ合衆国のペンシルベニアの田舎に住んで、ガチョウなどを飼って暮らしているアグネスという人物だ。夫のアールとのあいだに子供はなく、彼女は「フランス人の妻」と呼ばれている。  彼女はフランスの田舎であるサンレミという村で生まれ、少女時代を過ごした。そして、この作品の大部分を占める少女時代の回想も移動の話である。サンレミの村からパリへ、そしてイギリスの学校へと、彼女は物語を通して移動する。 サンレミの少女たちの

インバウンド消費と治安維持の両立は?――『総理になった男』中山七里/第3回

「もしあなたが、突然総理になったら……」  そんなシミュレーションをもとにわかりやすく、面白く、そして熱く政治を描いた中山七里さんの人気小説『総理にされた男』待望の続編!  ある日、現職の総理大臣の替え玉にさせられた、政治に無頓着な売れない舞台役者・加納慎策は、政界の常識にとらわれず純粋な思いと言動で国内外の難局を切り抜けてきた。長らく続く景気低迷の活路に見出したインバウンド消費の向上。しかしそこには表裏一体の関係で「治安対策」問題が立ちはだかる――  *第1回から読む方はこ

連載 シン・アナキズム 第5章 グレーバー (その2)

「アナキズム的な創造性」の特徴 とても遠くにいそうな、生態学者で植物学者で地理学者で都市学者でもあるゲデスや、元化学者でノーベル化学賞を取ったのに異端の経済学者となったソディと、人類学者のグレーバーが、いずれもアナキズム的な社会構想に活路を見出したのは、いったいなぜなのだろう。  すでに述べたとおり、私は彼らの政治的方向性の一致は決して偶然ではないと考えている。現在の世界がどれほど破滅的な状況にあるのか、そして何より破局に向けて猛スピードで突き進んでいるのかを理解すればする

新しい言葉は新しい自分をつくる——#1 イーユン・リー『ガチョウの本 The Book of Goose』(1)

別の言葉、別の世界  イーユン・リーの作品がたまらなく好きだ。彼女の作品に出てくる登場人物たちはみな、心のなかに深い闇を抱えている。そして、その闇を表に出すための言葉を持たなかったり、あるいは出しても、周囲の人たちにとりあってもらえなかったりする。だからこそ、本の世界に耽溺して、別の時代の言葉を学ぶ。または別の国の言葉を学ぶ。  そうやって、自分を理解してくれない周囲の世界と自分のあいだに壁を作り、自分の力でこしらえた小さな世界のなかで、心の奥底に潜む感情の種のようなもの

「日記の本番」 4月 くどうれいん

小説、エッセイ、短歌、俳句とさまざまな文芸ジャンルで活躍する作家、くどうれいんさん。くどうさんの4月の「日記の練習」をもとにしたエッセイ、「日記の本番」です。 新連載が3本始まり、日々はどばどば過ぎる。作家の仕事には(と大きな主語で言っていいのかわからない、わたしはエッセイや絵本を書いたりロケや取材の仕事もしたりするので、小説のみを書く作家の皆さんとはもしかしたらずいぶん違う生活をしているのかもしれない)ここが山場!ということはあまりなく、おわ~!と言っていたらまたさらにも

「本当にうまいチャーハンは『これこれ!』としか言いようがない。漫才も同じ」林 健(漫才師)

「どんなチャーハンを食べてきましたか?」──そう尋ねると、人はときに饒舌になります。「なんてことのない日常」に寄り添った料理を通じて語られる、愛着のある情景。そこに、その人の素顔や原点が見えてきます。 連載第2回目は、チャーハンが好きで、芸人のチャーハン・サークルを立ち上げ、チャーハンのYouTubeチャンネルも持つ、漫才コンビ「ギャロップ」の林健さん(44)。チャーハンと漫才の共通点を尋ねると、奥深い答えが返ってきました。 家ではウスターソースを早めにチャーハンにかけてい

サボる哲学 リターンズ! 第2回 注文できない料理店

我々はなぜ心身を消耗させながら、やりたくない仕事、クソどうでもいい仕事をし、生きるためのカネを稼ぐのか? 当たり前だと思わされてきた労働の未来から、どうすれば身体をズラせるか? 気鋭のアナキスト文人・栗原康さんの『サボる哲学』(NHK出版新書)がWEB連載としてカムバック。万国の大人たちよ、駄々をこねろ! 一八〇日連休のまっただなか  さて、たのしいゴールデンウィークももうおしまい。といいたいところだが、わたしは目下、一八〇日連休のまっただなか。せっかくなので、お休み気分

ガッカリとニヤニヤ、どちらもわたし。想定外、予想外だったこと――お題を通して“壇蜜的こころ”を明かす「蜜月壇話」

タレント、女優、エッセイストなど多彩な活躍を続ける壇蜜さん。ふだんラジオのパーソナリティとしてリスナーからのお便りを紹介している壇蜜さんが、今度はリスナーの立場から、ふられたテーマをもとに自身の経験やいま思っていることなどを語った連載です。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 # 13 想定外、予想外だったこと 想定外、予想外と聞くと、どうしても悪いほうに物事が展開する想像をしてしまう。想定外の質問をされてしどろもどろになったとか、予想外の出費で次の給料日まで生活がピ