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教養・ノンフィクション

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#インタビュー

家庭のチャーハンは「ケ」の料理。小さな変化を楽しむ(フリーランサー・稲垣えみ子) 【前編】

家電なし、ガス契約なしで、一食200円の「一汁一菜」生活を送る、元新聞記者の稲垣えみ子さん(59)。3日に一度小鍋でご飯を炊き、2日目はチャーハンだとか。それならば、とインタビューを申し込んだところ一度断られてしまった。そこには、「おいしい」を取り巻く状況への違和感があった。 ■原発事故をきっかけに、ミニマルな「一汁一菜」生活へ──チャーハンのインタビューをお願いしたところ一度断られてしまいました(笑)。 これまでの記事を拝見したら、リードに「チャーハンのことになると、人

進化を求められない「一番いいポジション」にいるのがチャーハン(大衆食ライター・刈部山本) 【後編】

「おいしいチャーハンはしっとり」とTBS系「マツコの知らない世界」で、パラパラブームに一石を投じた大衆食ライターの刈部山本さん(48/ 前編)。チャーハン好きの一方、ラーメンの著書もあります。「ラーメンとチャーハンの違い」や「話題を呼んだミニコミ」について伺います。 ■ラーメン嫌いだった子ども時代  ──山本さんは、東京ラーメンの歴史をたどった『東京ラーメン系譜学』の本を出されています。ラーメンも好きなんですか? 子どもの頃はあまり好きでなくて、ラーメンに目覚めたのは大学

マツコの番組で伝えたかった、「しっとりチャーハン」の本当の意味(大衆食ライター・刈部山本) 【前編】

90年代、パラパラチャーハンが世を席巻し、「チャーハン=パラパラ」のイメージが固定化しました。これに対して異を唱えたのが、2015年、TBS系「マツコの知らない世界」に出演し「おいしいチャーハンはしっとり」と打ち出した、大衆食ライターの刈部山本さん(48)です。そのメッセージにこめた思いや、その後の反響、直面したジレンマについて伺いました。 ■「半ドンの昼ご飯」と「町中華の出前」がチャーハンの原体験──2015年放送のTBS系「マツコの知らない世界」で、山本さんは「おいしい

1億円ホスト時代、「チャーハンを食べて自分を取り戻していた」(タレント・城咲仁) 【後編】

町中華「丸鶴」の後継をめぐり18歳のとき父と対立し、26年を経て和解した城咲仁さん(46/前編)。後編では、「1億円ホスト」時代、どんなチャーハンを食べていたのか。3歳から包丁を握っていたという「料理家」としてのキャリア。そして父のもとで修行し、「父の味」を伝える冷凍チャーハンの商品化を進めるなか得た、新たな「思い」などを聞きました。 ■悔しいことがあると、親父のチャーハンかカツ丼を食べていた──実家の町中華「丸鶴」は「しっとりチャーハンの聖地」と呼ばれ、行列のできる人気店

チャーハンを通して26年ぶりに父と和解した(元カリスマホスト、タレント・城咲仁) 【前編】

「しっとりチャーハンの聖地」と呼ばれ、全国から客が行列する、東京・板橋区の町中華「丸鶴」。連載の6、7回で登場した、店主・岡山実さんのひとり息子は、元カリスマホストで、タレントの城咲仁さん(46)だ。店の後継をめぐって、長年わだかまりのあった親子が、チャーハンを通して和解のときを得たという。 ■18歳で「店は継げない」と家を飛び出した ──連載の6、7回で丸鶴の店主・岡山実さん(77)にお話を伺いました。多くの町中華同様、丸鶴も跡継ぎの問題を抱えていましたが、城咲さんは子ど

「チャーハンは魂の料理。愛情がなくなったらやめるとき」(「丸鶴」店主・岡山実) 【後編】

「しっとりチャーハンの聖地」と呼ばれ、全国から人が集まり行列する町中華「丸鶴」。前編では、10歳から中華の道に入った、店主・岡山実さん(76)の修業時代や創業時の話が語られました。後編では、人気チャーハンの開発秘話や後継者の問題、そして今後の夢について聞きます。 全国から客が来て行列に。最長で200人──チャーハンを求めて全国から人が来て、開店前から行列ができます。それは、いつ頃からですか? 行列自体は、昔から昼どきになるとできていました。うちのあたりは他に店がないから。

しっとりチャーハンの聖地「10歳から中華の道に」(「丸鶴」店主・岡山実)【前編】

チャーハンの枕詞になっている「パラパラ」。ところが、その逆をいく「しっとり」で、全国から人が集まり行列する町中華があります。創業57年の、東京・板橋区の「丸鶴」。10歳でこの道に入ったという、店主の岡山実さん(76)の歩みは戦後の町中華の歴史そのもの。時代とともにチャーハンはどのように変わってきたのか。なぜ全国から人が行列するのか、前後半の2回にわたってお届けします。 10歳で「中華の道」へ。15歳で店長に終戦の翌年、1946年に、ここ東京・板橋区の大山で生まれ育ちました。

「チャーハン・フェスを開くのが夢。ラーメンを超えるバリエーションがある」 (チャーハン栄養士・佐藤樹里)【後編】

チャーハン好きの半生を語った前編に続き、後編では、これまで5000食以上食べてきたチャーハン栄養士の佐藤樹里さん(33)が、衝撃を受けた町中華のチャーハンやおいしい作り方、今後の夢などを聞きます。 衝撃を受けた「兆徳」のシンプル・チャーハン前編でお話しした、ダイエットできるチャーハン「Vチャー」の開発以降、チャーハン栄養士と呼ばれるようになり、色々なイベントやテレビにお声がけいただき、世界がいっきに広がりました。 ラーメンライターの井手隊長をはじめ、町中華を愛する人たちと

チャーハン好きを隠すほどの苦境を救ったのも「チャーハン」だった(チャーハン栄養士・佐藤樹里)【前編】

子どものころからチャーハンが好きで5000食以上も食べてきたという、チャーハン栄養士の佐藤樹里さん(33)。ところが、そのチャーハン好きを隠さないといけないほどの苦境の時期があったといいます。その苦境から佐藤さんを救ったのは逆転発想の「チャーハン」でした。 祖母から三代続く、「おかか入り」チャーハンの懐かしい味チャーハンはこれまで5000食以上、食べてきましたが、なんだかんだ言って結局よく作るのは、子どものころ家で食べていた「母のチャーハン」です。母のチャーハンには「おかか

1000万超再生 リュウジの「至高の炒飯」、異次元人気の理由

連載3回目は、バズるレシピで知られる料理研究家のリュウジさん(37)。2020年にYouTubeで配信した「至高の炒飯」は自身のレシピの中でもトップ の人気。再生数は1千万回を超えています。ヒットの理由と、炒飯への思いを語ってもらいました。 炒飯は家の火力で十分。大事なのは「香り」──リュウジさんが2020年2月にYouTubeで配信した「至高の炒飯」のレシピ動画は、再生数が1千万回超え。単純計算で、日本人の10人に1人が見たことになります。人気の理由は? アクセスはまだ

現代思想は死んでません!――『試験に出る現代思想』刊行記念、斎藤哲也自作自演インタビュー

大学入学共通テスト(以前のセンター試験)「倫理」には、哲学・思想の重要なポイントが毎回出題されています。そして、この問題を手がかりに、哲学・思想に入門してしまおう!というのが、『試験に出る哲学』シリーズ。3冊目となる最新刊では、ついに「現代思想」が登場します。刊行を記念して、数々の哲学・思想本の構成と執筆を手掛け、インタビューの名手でもある斎藤哲也さんが、自らを取材しました! ⚫現代思想はどのくらい試験に出るのか? ――10月に出された新著『試験に出る現代思想』で「試験に

「キリン博士」郡司芽久さん、新刊特別インタビュー――生き物に「ざんねんな進化」はない!

「キリン博士」こと人気解剖学者の郡司芽久さんによる待望の最新作『キリンのひづめ、ヒトの指––―比べてわかる生き物の進化』が9月28日に発売となります。「生き物の成り立ちを知り、複雑な進化の過程を理解するために比較は最も重要」として、手足、首、心臓など8つの器官を通してさまざまな動物の体に刻まれた進化の歴史をひも解く、ユニークな進化の話です。本書は2021年2月から12月にかけてウェブマガジン「本がひらく」で連載された「キリンと人間、どこが違う?」を大幅に加筆修正し、再編集して

「NHK出版新書を求めて」 第4回わたしはウンコになりたい 栗原康さん(アナキスト)の場合

各界で活躍する研究者や論者の方々はいま書店で、とくに「新書コーナー」の前で何を考え、どんな新書を選ぶのか? 毎回のゲストの方に書店の回り方、本の眺め方から現在の関心までをじっくりと伺う、NHK出版新書編集部の連載です。 *第1回から読む方はこちらです。 今回はこの人! 栗原康(くりはら・やすし) 東北芸術工科大学非常勤講師。1979年埼玉県生まれ。専門はアナキズム研究。著書に『サボる哲学』(NHK出版新書)、『大杉栄伝~永遠のアナキズム』(角川ソフィア文庫)『はたらかない

「NHK出版新書を求めて」第3回 歴史のリアルを知るために――木下竜馬さん(歴史学者)の場合

各界で活躍する研究者や論者の方々はいま書店で、とくに「新書コーナー」の前で何を考え、どんな新書を選ぶのか? 毎回のゲストの方に書店の回り方、本の眺め方から現在の関心までをじっくりと伺う、NHK出版新書編集部の連載です。コーディネーターはライターの山本ぽてとさんです。 *第1回から読む方はこちらです。 今回はこの人! 木下竜馬(きのした・りょうま) 1987年、東京都生まれ。東京大学史料編纂所助教。専門は鎌倉幕府、中世法制史。共著に『鎌倉幕府と室町幕府 最新研究でわかった実像