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教養・ノンフィクション

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#連載

103歳・最期まで作り食べる「火を使わないチャーハン」レシピ (料理研究家・荻野恭子) 【前編】

世界約70カ国を旅し、各国の料理や食の知恵を紹介してきた料理研究家の荻野恭子さん(70)。「調理定年」という言葉が話題を呼ぶ中、103歳で亡くなった母と、最期まで無理なくできる「独自のクッキング法」を編み出しました。そのクッキング法とは。広く応用でき、パラパラに仕上がる、103歳の「火を使わないチャーハン」のレシピも聞きました。 ■100歳超えても無理なくできる「卓上クッキング」──いま「調理定年」という言葉が話題を呼んでいます。仕事に定年があるように料理にも定年があってい

日本からは見えない日本――#8 ミルトン・ムラヤマ『俺が欲しいのは自分の体だけ』(2)

家父長制に苦しめられる二世たち  本書の舞台はハワイの海辺の町ペペラウと、カハナにあるプランテーションだ。これはムラヤマが住んでいた、マウイ島のラハイナという町と、かつてプウコリイにあったサトウキビ農場がモデルとなっている。主人公のキヨシと兄のトシオは未来の見えない日々に苦しんでいる。祖父が作った莫大な借金を返そうとした父親は漁業で失敗し、気づけば負債を6000ドルにまで増やしてしまった。    高い教育もろくな英語力もないオヤマ家の男たちにとって、残された仕事はサトウキビ

フラガールと戦争――#8 ミルトン・ムラヤマ『俺が欲しいのは自分の体だけ』(1)

ハワイでは「すべて」が正解  もちろん僕もハワイが大好きだ。初めて行ったのは10年ほど前かな。以前、ロサンゼルスに留学していたから、同じアメリカだしカリフォルニアとそんなに違わないだろう、と思っていた。けれども、その考えは行ってみて完全に覆された。まず、なにより日本から近い。西海岸に行く半分ぐらいの時間で着いてしまう。この距離感がものすごく楽だ。そしてやたらと気候がいい。空は青いし、ざっと一雨でも降れば、毎日のように虹がかかる。    しかも食べ物の問題が全くない。コンビニ

"ミニマル炒飯"は「あわてないチャーハン」。脱マチズモで、作る人を選ばない(料理人・文筆家、稲田俊輔)【4/4話】

インド料理に限らず、和食、洋食、フレンチなど幅広いジャンルを手がける料理人の稲田俊輔さん。家庭には「ミニマル料理」を提案しています。では、「ミニマル炒飯はどんな料理?」と尋ねると「あわてないチャーハン」とのお答え。そこには合理性だけでなく、作り手とチャーハンへの深い思いがありました。稲田流レシピに独特な「重さ」を測りながら作る理由についても合わせて聞きました。 ■素材の味をストレートに生かす「シンプルな料理」──稲田さんは2023年に家庭料理向けのレシピ本『ミニマル料理』を

子どもの時の「シンプルチャーハン」が原点。日本の炒飯は「日式」? (料理人・文筆家、稲田俊輔)【3/4話】

食のエッセーやSNSでの問答が人気の南インド料理店「エリックサウス」総料理長の稲田俊輔さん。子どもの頃はどんなチャーハンを食べていたのでしょうか? また、私たちが食べているのは「日式チャーハン」なのか。ここ数年、人気の「町中華」の次代を受け継ぐのは? 稲田さんの「原点となるチャーハン」と、「町中華のチャーハン」について伺いました。 ■原点にあるのは、子どもの時食べた「シンプルチャーハン」 ──稲田さんを「稀代の食いしん坊」かつ「料理人」にならしめたのは、育った家庭環境の影響

ピラフはチャーハンか? 焼き飯、ビリヤニは? そして源流は?(料理人・文筆家、稲田俊輔)【2/4話】

第1話に続き、料理人・文筆家の稲田俊輔さんの「心に残るチャーハン」を伺います。もう一つは学生時代に京都で食べた「焼き飯」だとか。「焼き飯」と「チャーハン」は違う? 「ピラフ」は? 謎だらけの、その「源流」は? インド料理にとどまらず、博覧強記で知られる稲田さんと地球をぐるっと巡ります。 ■もう一つの「心に残るチャーハン」は、学生時代に京都で食べた「焼き飯」──稲田さんには「心に残るチャーハン」が二つあるというお話でした。第1話では台湾の「鹹蛋炒飯」について伺いました。二つ目

「推し」の代わりに差し入れや寄付も! 韓国の最新「推し活」事情――短期連載#1「ドラマで読む韓国」金光英実

「太陽を抱く月」「雲が描いた月明かり」「ミセン」……数々の韓国ドラマ作品で字幕翻訳を手掛けてきた金光英実さん。そのキャリアとソウル在住30年の経験をもとに執筆した新刊『ドラマで読む韓国』は、現代韓国の文化や社会を知るのにうってつけの一冊です。9月10日予定の刊行に先立ち、内容の一部を抜粋してお届けします。 ファン文化をつくる「マスター」の存在 自分の好きなアイドルやアーティスト、俳優などを「推し」と言う。私の周りには、韓国人アーティストや俳優を応援する「推し活」に熱心な友人

胃弱と文学とチャーハンと(英米文学者・阿部公彦) 【前編】

英米文学研究から文芸評論まで幅広く手がけ、「名作いじり」「事務」などユニークな視点の著書の多い、東京大学教授の阿部公彦さん(57)。「胃弱と文学」もテーマの一つで、「100分de名著」(NHK)では夏目漱石の作品を「胃弱」を通して読み解き異彩を放ちました。「胃弱の文学」とは? 胃弱と文学とチャーハンの関係は? ■「胃弱」をネタ化する漱石『吾輩』の猫──文学への「食」のアプローチでは、「美食」「料理」「空腹」などの視点からはありましたが、「胃弱」からの読み解きは珍しいのではな

町中華のチャーハンを胃弱的に食べる(英米文学者・阿部公彦) 【後編】

夏目漱石の「胃弱」から始まり、大江健三郎の「嘔吐」、そして若者言葉「キモい」まで。前編では「胃」的表現が表す時代の意識を伺いました。後編では、“やや胃弱”という英米文学者の阿部公彦さん(57)がどんなチャーハンを食べているのか。「ムカつき」と近代小説誕生の関係、事務処理化する社会と「胃弱」についても合わせて伺いました。 ■「一度きり」のチャーハン ──普段、チャーハンは食べますか。 子どもが小さい頃はよく作っていましたね。もう成人しましたが。 子どもって味付きご飯が好きじ

"心に残るチャーハン"は台湾の「シエンタン炒飯」。最適解でない味を求めて (料理人・文筆家、稲田俊輔) 【1/4話】

稀代の「食いしん坊」かつ「料理」「飲食店経営」のプロでもある稲田俊輔さん。エリックサウス総料理長として南インド料理ブームの火付け役となっただけでなく、その複眼から繰り出される「食エッセー」やSNSでの「問答」でも人気です。 4話にわたってお届けする稲田さんのインタビュー。第1話は、稲田さんの「心に残るチャーハン」、旅先で感動的な料理に出合うコツ、稲田さんが自称する「フードサイコパスとは何か」など伺います。 ■台湾の「鹹蛋炒飯」に感激。旅先で「感動的な料理」に出合うコツ──稲

連載 ロジカルコミュニケーション入門――【第15回】なぜ帰納法に陥ってしまうのか?

●論理的思考の意味  本連載【第1回】「論理的思考で視野を広げよう!」では、「論理的思考」が「思考の筋道を整理して明らかにする」ことであると解説した。たとえば「男女の三角関係」のように複雑な問題であっても、思考の筋道を整理して明らかにしていく過程で、発想の幅が広がり、それまで気づかなかった新たな論点が見えてくる思考法である。 【第2回】「論理的思考で自分の価値観を見極めよう!」では、「ロジカルコミュニケーション」によって新たな論点を探し、反論にも公平に耳を傾け、最終的に自

シン・アナキズム 終章「マッドマックス 怒りのデス・ロード」

 「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は、「行って帰ってくる」物語だ。そしてこの映画は、アナキスト的価値観が脈打つ作品である。アナキズムとフェミニズムの融合という稀にみるテーマを扱った映画といってもよい。  この連載も今回で一区切りとなるので、締めくくりにこの映画について話しておきたい。実は連載をはじめたときからずっと、「最終回はデス・ロードで」と構想を温めてきたのだ。  ところが、5年越しでアナキズムと格闘している間に、なんとジョージ・ミラーの新作「マッドマックス 

連載 ロジカルコミュニケーション入門――【第14回】知識人が非論理に陥る理由!

●論理的思考の意味 本連載【第1回】「論理的思考で視野を広げよう!」では、「論理的思考」が「思考の筋道を整理して明らかにする」ことであると解説した。たとえば「男女の三角関係」のように複雑な問題であっても、思考の筋道を整理して明らかにしていく過程で、発想の幅が広がり、それまで気づかなかった新たな論点が見えてくる思考法である。  【第2回】「論理的思考で自分の価値観を見極めよう!」では、「ロジカルコミュニケーション」によって新たな論点を探し、反論にも公平に耳を傾け、最終的に自

シン・アナキズム 第5章 グレーバー (その12)

 みなさま、おはこんばんちは! 何を言っているんだと思われそうだが、鳥山明を追悼している。「Dr.スランプ アラレちゃん」に心酔して声優を目指したのに、中学の友人たちに「西友」と間違えられてから早43年と思うと感慨もひとしおだ。このアニメのエンディングソングで「ペンギン村からおはこんばんちは 右向いて左向いてバイちゃバイちゃ」と言っていた。高橋留美子と鳥山明とともにはじまった80年代アニメの世界には、ガンダム系とは異なった独自の歴史がある。  というわけで、春休みで調子が