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教養・ノンフィクション

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各分野における最新の知識や再発見、情報の最前線から得た知見など、半歩先の知的好奇心を満たす記事を公開中。
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#連載

連載 ロジカルコミュニケーション入門――【第13回】自意識のパラドックスを考えてみよう!

●論理的思考の意味 本連載【第1回】「論理的思考で視野を広げよう!」では、「論理的思考」が「思考の筋道を整理して明らかにする」ことであると解説した。たとえば「男女の三角関係」のように複雑な問題であっても、思考の筋道を整理して明らかにしていく過程で、発想の幅が広がり、それまで気づかなかった新たな論点が見えてくる思考法である。 【第2回】「論理的思考で自分の価値観を見極めよう!」では、「ロジカルコミュニケーション」によって新たな論点を探し、反論にも公平に耳を傾け、最終的に自

食材の寿命のサイクルの中で生かし、生かされ、チャーハンを食う(フリーランサー・稲垣えみ子) 【後編】

冷蔵庫などの家電なし、ガス契約なしの「一汁一菜」生活を送る、元新聞記者の稲垣えみ子さん(59)。前編では「おいしい」をめぐる違和感について聞きました。後編では、「日々のチャーハン」と冷蔵庫のない生活で得た「人生観」について聞きます。 ■ 2日目のチャーハン──前編に続き、後編では具体的にチャーハンをどのように作っているのかを伺いたいと思います。調理器具は、カセットコンロが一つに小鍋とミニダッチオーブンだけというお話でした。どのように繰り回しているんですか? 私は玄米を食べ

シン・アナキズム 第5章 グレーバー (その11)

「もっときちんとできる」の追求 ブルシット・ジョブが大量発生する現代資本主義の仕組みについて知るには、『官僚制のユートピア』(2013)というグレーバーのもう一冊の本を併せ読まなければならない。『ブルシット・ジョブ』と『官僚制のユートピア』は、グレーバーの著作の中では、『価値論』と『負債論』のように2冊でひとまとまりのテーマを扱っている。その意味で合わせ鏡のような2冊の本を往復しながら読み考えることで、現代社会のブルシットさがどこに起因し、そのなかで人はどのように苦しんでい

自分の「傷つき」にどう対処するか――「不安を味方にして生きる」清水研 #20 [承認欲求の正体②]

不安、悲しみ、怒り、絶望……。人生にはさまざまな困難が降りかかります。がん患者専門の精神科医として4000人以上の患者や家族と対話してきた清水研さんが、こころに不安や困難を感じているあらゆる人に向けて、抱えている問題を乗り越え、豊かに生きるためのヒントをお伝えします。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #20 承認欲求の正体② 自分や周囲に対する信頼感はどのように生まれるのでしょうか。今回は人生の第一ステージと第二ステージのなかで作られる価値観や感覚を通して承認欲求

シン・アナキズム 第5章 グレーバー (その10)

具体例を集めて「理論」を名乗った本 みなさまお久しぶりです。言い訳にも飽きたと思いますが、なぜか職場で管理職になってしまい(大学教員は特殊な職業なので出世ではなく輪番みたいなもの)、ブルシット・ジョブに邁進していたら、あっという間に時間が経ってしまいました。  というわけで、いよいよ『ブルシット・ジョブ』(2018)の話をしよう。この本の原題はBullshit Jobs : A Theoryとなっており、どうやら「理論」の本らしい。もっともグレーバーはこの本の端々でどこと

連載 ロジカルコミュニケーション入門――【第12回】社会的ジレンマに挑戦しよう!

●論理的思考の意味  本連載【第1回】「論理的思考で視野を広げよう!」では、「論理的思考」が「思考の筋道を整理して明らかにする」ことであると解説した。たとえば「男女の三角関係」のように複雑な問題であっても、思考の筋道を整理して明らかにしていく過程で、発想の幅が広がり、それまで気づかなかった新たな論点が見えてくる思考法である。 【第2回】「論理的思考で自分の価値観を見極めよう!」では、「ロジカルコミュニケーション」によって新たな論点を探し、反論にも公平に耳を傾け、最終的に自

サボる哲学 リターンズ! 第4回 己を打ちすて、たのしいをとりもどす

我々はなぜ心身を消耗させながら、やりたくない仕事、クソどうでもいい仕事をし、生きるためのカネを稼ぐのか? 当たり前だと思わされてきた労働の未来から、どうすれば身体をズラせるか? 気鋭のアナキスト文人・栗原康さんの『サボる哲学』(NHK出版新書)がWEB連載としてカムバック。万国の大人たちよ、駄々をこねろ! よし、もういちど こんにちは。もう三月になりましたが、遅ればせながらあけましておめでとうございます。年明けから、とんでもないことになっておりましたが、みなさまお元気でしょ

家庭のチャーハンは「ケ」の料理。小さな変化を楽しむ(フリーランサー・稲垣えみ子) 【前編】

家電なし、ガス契約なしで、一食200円の「一汁一菜」生活を送る、元新聞記者の稲垣えみ子さん(59)。3日に一度小鍋でご飯を炊き、2日目はチャーハンだとか。それならば、とインタビューを申し込んだところ一度断られてしまった。そこには、「おいしい」を取り巻く状況への違和感があった。 ■原発事故をきっかけに、ミニマルな「一汁一菜」生活へ──チャーハンのインタビューをお願いしたところ一度断られてしまいました(笑)。 これまでの記事を拝見したら、リードに「チャーハンのことになると、人

mustの先にあるもの――「不安を味方にして生きる」清水研 #17 [中年期に生き方が変わる理由①]

不安、悲しみ、怒り、絶望……。人生にはさまざまな困難が降りかかります。がん患者専門の精神科医として4000人以上の患者や家族と対話してきた清水研さんが、こころに不安や困難を感じているあらゆる人に向けて、抱えている問題を乗り越え、豊かに生きるためのヒントをお伝えします。 *第1回からお読みになる方はこちらです。 #17 中年期に生き方が変わる理由① 今回は、人生の中盤を迎えると、なぜmustを手放すようになるのか。あるいはmustを手放す必要性が生じるのかについてお話ししたい

連載 ロジカルコミュニケーション入門――【第11回】論理的思考で神学論争に挑戦しよう!

●論理的思考の意味 本連載【第1回】「論理的思考で視野を広げよう!」では、「論理的思考」が「思考の筋道を整理して明らかにする」ことであると解説した。たとえば「男女の三角関係」のように複雑な問題であっても、思考の筋道を整理して明らかにしていく過程で、発想の幅が広がり、それまで気づかなかった新たな論点が見えてくる思考法である。  【第2回】「論理的思考で自分の価値観を見極めよう!」では、「ロジカルコミュニケーション」によって新たな論点を探し、反論にも公平に耳を傾け、最終的に自

進化を求められない「一番いいポジション」にいるのがチャーハン(大衆食ライター・刈部山本) 【後編】

「おいしいチャーハンはしっとり」とTBS系「マツコの知らない世界」で、パラパラブームに一石を投じた大衆食ライターの刈部山本さん(48/ 前編)。チャーハン好きの一方、ラーメンの著書もあります。「ラーメンとチャーハンの違い」や「話題を呼んだミニコミ」について伺います。 ■ラーメン嫌いだった子ども時代  ──山本さんは、東京ラーメンの歴史をたどった『東京ラーメン系譜学』の本を出されています。ラーメンも好きなんですか? 子どもの頃はあまり好きでなくて、ラーメンに目覚めたのは大学

連載 ロジカルコミュニケーション入門――【第10回】論理パズルで不完全性定理をイメージしよう!

●論理的思考の意味 本連載【第1回】「論理的思考で視野を広げよう!」では、「論理的思考」が「思考の筋道を整理して明らかにする」ことであると解説した。たとえば「男女の三角関係」のように複雑な問題であっても、思考の筋道を整理して明らかにしていく過程で、発想の幅が広がり、それまで気づかなかった新たな論点が見えてくる思考法である。  【第2回】「論理的思考で自分の価値観を見極めよう!」では、「ロジカルコミュニケーション」によって新たな論点を探し、反論にも公平に耳を傾け、最終的に

マツコの番組で伝えたかった、「しっとりチャーハン」の本当の意味(大衆食ライター・刈部山本) 【前編】

90年代、パラパラチャーハンが世を席巻し、「チャーハン=パラパラ」のイメージが固定化しました。これに対して異を唱えたのが、2015年、TBS系「マツコの知らない世界」に出演し「おいしいチャーハンはしっとり」と打ち出した、大衆食ライターの刈部山本さん(48)です。そのメッセージにこめた思いや、その後の反響、直面したジレンマについて伺いました。 ■「半ドンの昼ご飯」と「町中華の出前」がチャーハンの原体験──2015年放送のTBS系「マツコの知らない世界」で、山本さんは「おいしい

連載 ロジカルコミュニケーション入門――【第9回】論理パズルを楽しもう!

●論理的思考の意味 本連載【第1回】「論理的思考で視野を広げよう!」では、「論理的思考」が「思考の筋道を整理して明らかにする」ことであると解説した。たとえば「男女の三角関係」のように複雑な問題であっても、思考の筋道を整理して明らかにしていく過程で、発想の幅が広がり、それまで気づかなかった新たな論点が見えてくる思考法である。 【第2回】「論理的思考で自分の価値観を見極めよう!」では、「ロジカルコミュニケーション」によって新たな論点を探し、反論にも公平に耳を傾け、最終的に自分が