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ほんのすこしでも、だれもが生きやすい世のなかになりますように。「ほんのすこしでも」――《こどく、と、生きる》統合失調症VTuber もりのこどく

「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」という思いでVTuberになり、配信を通してメッセージを伝え続けるもりのこどくさん。高校生で統合失調症になった彼女がいかにしてVTuberになったのか、その足跡を綴ったエッセイ連載です。
※#0から読む方はこちらです。


#26 ほんのすこしでも

 このエッセイを読んでくれている君には、統合失調症について、すこしでも知ってもらえていることを願う。ほんの表層だけでもいい。統合失調症という病気の存在を知ってくれるだけでもいいのだ。
 でももし、もうすこし、統合失調症について知ってみたい、当事者がどんな世界で生きているのか知ってみたい、と君が思ってくれているのなら、ぴったりな動画がある。

 この配信では、こどくが統合失調症当事者から集めた、「統合失調症あるある」を30個近く紹介している。1時間とすこしで見終わることができるため、おひるごはんのおともにも、ちょっととおいところへ行くときの旅のおともにもなる。
 こどくは、メタバースにある統合失調症当事者の居場所「もりのへや」を主宰しているが、この配信で紹介した「統合失調症あるある」は、その「もりのへや」の参加者から募ったものだ。つまり、ここで紹介されたすべての「統合失調症あるある」は、こどくと同じく、今まさに統合失調症とともに生きている当事者から集められたものなのだ。
「統合失調症あるある」をすこしのぞいてみよう。たとえば、認知機能障害からきているであろう「文章読むの苦手がち」や、陽性症状の妄想からきているであろう「コンセントから誰かに盗聴されている」。ほかにも、あっと驚くようなものもある。「誇大妄想で自分が神になったと勘違いする」は、その例に漏れないだろう。
 統合失調症についても、当事者が見ている世界についても、たくさん知ることができる動画になっている。また、すべての「統合失調症あるある」について、こどくがしっかりとリアクションをとり、「あるある」スタンプも押しているので、たのしんでもらえるとうれしい。そして、視聴者の反応も見ていてたのしい。「あるある!」と反応してもらえて、こどくはたいへんまんぞくした。
 また、おどろいた反応は視聴者だけではなかった。今回、この配信のあとで、かぞくに「こどくちゃんそんな経験してたの?!」とおどろかれたのだ。闘病6年。いっしょに歩んできたと思っていたかぞくでさえ知らなかった、当事者から見た世界。この動画を見れば、そんな世界も見えてくるだろう。
 統合失調症について、まだまだこの世のなかには知られていないこともおおい。でも、こどくのこの配信や、エッセイ、動画などから、ほんのすこしでも、学んでくれたらいいなと思っている。それで、ほんのすこしでも、だれもが生きやすい世のなかになりますように。

#27へ続く
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※本連載は毎週月曜日に更新予定です。

プロフィール

もりのこどく
VTuber。「同じ病で苦しむ仲間とつながりたい、救いたい、当事者以外の人たちにも病気のことを知ってほしい」。そんな思いで19歳で配信を始めた。バーチャルの強みを生かして、当事者たちの居場所をクラウドファンディングでメタバース上に創るなど幅広く活動。2023年、SDGsスカラシップ岩佐賞を受賞。

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