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イスたちのお話を書き続けて

津田真一(脚本家)

Eテレの人気番組「みいつけた!」は、2019年春、放送10周年を迎えました。番組開始からアニメーションコーナー「いすのまちのコッシー」の脚本を担当する津田真一さんが、「いすのまち」への愛情と創作の熱意をしたためてくれました。

『いすのまちのコッシー』の10年

『いすのまちのコッシー』(以下「いすのまち」)は、コッシーとイスの仲間たちが繰りひろげる3分間のコマ撮りアニメーションです。「みいつけた!」のなかで、おもに火曜日と木曜日に放送されています。番組開始時からあるコーナーなので、「いすのまち」も10周年になります。これまでに、エピソード(お話)の数は90を超え、名前がついているキャラクターも60脚(?)以上登場し、「いすのまち」キャラクターソングもなんと20曲以上生み出されました。
 ついこのあいだコーナーが始まったような気がしていましたが、振り返ってみると、やはり10年は長く、いろいろあったなあと遠い目になってしまいます。

イスたちのお話って?

さかのぼること10年前、「みいつけた!」のメインキャラクター、イスの男の子コッシーが活躍するアニメーションコーナーをつくることになって、私はその脚本を担当することになりました。「イスたちのお話」だなんて、わくわくしちゃうテーマですよね。こども番組のこういうシュールなところ、好きです。
 確かにわくわくはしましたが、よく考えるとなかなかどうして難しいお題だということに気づきました。「いすのまち」の登場人物はすべてイスです。動物も虫もイスです。
 私は考えました。イスがもっともイスらしくなれるのは、人間に「座られているとき」ではないだろうか──。しかし、その人間は「いすのまち」には一切出てこないのです。
 これがまだ『家具の町のコッシー』ならば、イスのコッシーは、机のツックンとか、本棚のダナーちゃんたち家具仲間のなかで、ホッとひと休みさせてくれるような(イスのアイデンティティーを前面に出した)癒しキャラとして、個性を出せるように思いました。ところがそうではありません。コッシーだけでなく、登場人物全員がイスなのです。自分がイスだということだけでは個性を出せないのです。
 「ん? ということは、つまり、見ているこどもたちと同じということか!」と、私は気づきました。「こどもたち」と、ひとくくりにしていますが、ひとりひとりは「好奇心旺盛」「物知り」「負けず嫌い」など個性が豊かですもんね。
 もちろん、「いすのまち」というのですから、イスならではの独自の世界にしたいという思いはあります。でも、それはそのうち、にじみ出てくるだろうということで、とにかくつくりながら前に進むことにしました。考えすぎて動けなくなるよりも、動くことでわかることってありますから。

多くの人がかかわる番組づくり

お話をつくるとき、私たちスタッフはみんなで話し合いながら、自分たちの好きな要素を盛り込んでいきます。日常的なテーマから、SF、ナゾの多いお話、冒険もの、ミュージカル仕立てなどなど……。もともと「いすのまち」はイスが動いてしゃべる不思議な世界ですからね、どんなジャンルでも受け入れてくれました。
 私自身は、脚本でお話を書きながら、同時に形として出来上がってくる、他のスタッフのひとつひとつの仕事を見て、大いに刺激を受けてきました。
 コッシーたちのキャラクターデザインと人形のユニークさ、かわいらしさ、いすのまちの街並みや小道具の胸躍るミニチュア感、コマ撮り特有の素朴で温かな動き、音楽のチャーミングさに、「いすのまちって、こういう世界なのか!」と教えられたのです。
 キャラクターに声をあてるみなさんの演技力にも、「こんな楽しい話し方をするんだ!」と触発されました。「ジョーブせんせい」や「チエさん」「ノビー」のように、もともと端役のキャラが、演技のおかげでメインキャラに育ったこともしばしばです。
 こんなことがありました。「テーラースキマ」というお話を放送で見たときのことです。メインのお話とは関係ないところで「マーちゃん」という不思議なキャラがバスに乗って通過したのです。バスが通過するということも、マーちゃんが乗っているということも、脚本には書いていませんでした。おそらく、演出家さんが「いすのまち」の日常の風景として、登場させただけなのだと思います。しかし、私のイメージはひろがりました。
「マーちゃんはどうしてよくバスに乗っているんだろう? もしかしてマーちゃんはいすのまちを調査しているのかもしれない!」
 これがやがて、マーちゃんのナゾを追う「マーちゃんとチョコン」というお話につながっていきました。このように「いすのまちのコッシー」というコーナーは、いろいろな人がかかわり、刺激し合い、アイデアを出し合いながらつくりあげているのです。

だれにでも居場所が見つかるように

こうして10年、「いすのまち」は世界をひろげ続けてきました。
 イスがイスに座るヘンテコな場面や、ときどきイスたちに座りにくる「しりっぽん」というナゾの物体など、独特な展開も生まれましたが、私にとって「イスたちのお話」とは「居場所のお話」のような気がしています。イスとは「自分の席=居場所」ですからね。そのために、いろいろなタイプのお話や歌、さまざまな個性のキャラクターをあつかってきたような気がします。だれにでも楽しめる世界、居場所が見つかるように。
 ただ、「イスのように、ホッとひと息つけるやさしい世界」というだけでは収まらないのが「いすのまち」です。怖いもの好きのひとたちのために、「ようかいてけばあ」のようなパンチのあるお話もあるので、決して油断はできませんよ。
 これからもスタッフ一同、心を込めて楽しく番組をつくっていきます。
「みいつけた!」と「いすのまちのコッシー」を、よろしくお願いいたします!

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