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700万人を教えたカリスマ英語講師が、子どもの英語勉強術を指南!

「英語は早く始めるほどよい?」「英語のシャワーを浴びせるのは効果がある?」
 全国の小中高生を多数導いてきた英語講師の関正生さんが、親たちの悩みや疑問に答えた新刊『早期教育に惑わされない! 子どものサバイバル英語勉強術』が発売になりました。
 本書は早期教育の誤解を正しながら、親はどのように子どもをサポートすればよいのか、子どもの英語力を伸ばすためには何をすべきか(何をすべきではないか)を綴った実践的な指南書です。今回は発売を記念して、本書の「序章」から抜粋してご紹介します(一部、改変しています)。


「3歳までにネイティブ英語のシャワーを浴びせよう」といったことを耳にすることも多いでしょう。

 こういうことを聞くたびに、僕としては「いやいや、そんな貴重な時期には〝保護者の声〟をたくさん聞かせてあげてよ!」と思います。「英語だけ」を考えれば賛成ですが、言うまでもなく人生には英語より大切なことが数えきれないほどあります。

 これから色々なことをお伝えしていきますが、本書の根底には、この「誰だか知らない英語ネイティブの声より、保護者の声を聞いて育ったほうが幸せになれる」という考えが常にあります。ですから、この本は「子どものうちにしかできない英語の勉強」だとか「10歳までが勝負」といった内容を書いたものではありません。英語の話をしつつも、常に「英語以外」を念頭に置いています。

 何十年も前から「子どものうちは言語の吸収が速いから」という理由で早期英語教育が勧められていますが、「言語の吸収が速い」のは日本語にも当てはまります。であるならば、子どものうちは日本語力を鍛えるのにも重要な時期であることは間違いありません。「なぜその時期に英語をやるのか?」「やるのならどれくらいがいいのか?」を保護者の立場から考える必要があります。「早く始めるほうが有利」というのはいくつかの点で正しいのですが、早く始めることにより「必ず失うもの(できなくなるもの)」もあることを認識しておく必要があります。

 間違っても、人生の最終目標が「英語力をつけること」ではないわけで、最終的には楽しくハッピーに生きていくために英語があるわけです。「3歳までに英語のシャワーを浴びて、英語の絵本を読み聞かせてもらい、ドリルをこなし、英会話スクールに通って……」ということをやれば、英語はペラペラと話せるようになるかもしれませんが、それで幸せになれるかは別です。むしろ苦しそうになっていく子が多いように見えるのです。しかも、早期英語教育でうまくいった(たとえば小6で英検準1級を取った)お子さんの話はたくさんあっても、「その後」が語られないのはなぜなのでしょうか。

早期英語教育に反対したところで、小学生はどうすればいいの?

 世の主流は「英語を早く始めたほうがいい」という意見ですが、反対意見も一定数存在し、賛成派・反対派がそれぞれの主張を色々なところで繰り広げています。ただ、どちらの意見も「早くやるべき/やるべきでない」と二極化しています。もし白黒ハッキリさせないといけないのならば、僕は反対派です。

 ただ、完全に反対しても意味がないのです。僕が国のトップに立つことがあれば小学校英語を即廃止にしますが、当然そんな立場にはありません。もはやこの国の方針は「早期英語教育をやるべき」というほうに完全に舵を切っているので、それに抗っても仕方ありません。本・雑誌・TV・ネット、色々なところで英語教師が議論しようが、駅前で署名活動をしようが、国会の前でマイクを持って抗議しようが、当の小学生は今日も学校で英語の授業を受けるわけです。この避けては通れない現実を踏まえて、「反対とは言え、英語指導者が余計なノイズを立てないほうがいい」というのが僕の考えです。そこで必要となるのは、「うまく乗り切る・うまく利用する」発想だと思います。

 なぜか、この「やるしかないんだから、うまくやろうぜ」という立場の人がいない――少なくとも表で発言することがありません。もちろん僕は自分の意見を隠して「どっちもアリ」なんて都合のいい立場に立ち、「どちらも良い点があるので、これからの文部科学省の方針に注目しつつ、期待していきたい」などと、読者に判断を委ねることは絶対にしません。だからすでに「反対」と述べたわけです。

 さて、本書の全体の流れですが、「小学生のうちはあまり英語をやらなくてもOKで、その理由は厳しい保護者のせいで英語嫌いになるから。ただし中学に入ってからは一気にギアを上げる。そこが1回めの勝負どころだから」です(ちなみにそこで失敗しても2回めの勝負どころが高校英語なのでご安心を)。

 「だったら小学生のうちに少しでも先取りして……」というお気持ちはわかりますが、それが大失敗のもとになるということを第1章・第2章でじっくりお話ししていきます。今まで熱心に取り組んだ方ほど、僕の意見が刺さりすぎてつらいかもしれませんが、それは言ってみれば「足ツボ」のようなもので、痛いということは悪いところがあるはずなのです。逆に言えば、痛く感じる方ほど得るものがたくさんあると思います(ちなみに「早期」とは未就学児・小学生を念頭に置いていますが、本書では主に小学3年~6年生を中心に語っていきます)。

小学生に異変が起きている

 小学校で英語の授業を受ける「現在の小学生の様子」はどのようなものだと想像しますか?

 ご自分の経験から「小学生も英語の授業に目を輝かせている」「英語の授業はみな活発で盛り上がっている」と想像しませんでしたか? 僕はほんの数年前までそう思っていました。

 ところが実際に小学生から出てくる感想、小学校で英語を教える教員の感想が、想像のものとはまるで違っているのです。ここでいくつか挙げるものは少数意見ではありません。決して「奇をてらう」意図はなく、もはやこういった感想が当然のように出てくるということを感じ取ってもらえればと思います。

☑ 小学生からよく出る感想
「英語の授業で、歌とかロールプレイとか、バカバカしくてやりたくない」

☑ 教員からの感想
「好きな科目のアンケートをとったら、英語と書いた生徒はゼロ(ちなみに人気があったのは理科と国語)」

☑ 塾講師からの感想①
「富裕層が多く通う塾ですが、担当の小5・小6の子はみんな英語が嫌いと言っています」

☑ 塾講師からの感想②
「今の小学生はリスニングや会話が得意な子が多いが、そこで止まってしまい、中学から文法・読解で苦労する子が多い」

 以上を一言でまとめるなら、子どもたちは「大人びて冷めている」のです。

 最初の「バカバカしい」という感想は、成績が良い子ほど持つ感想です。小学校高学年にもなれば多くの面で大人びています。お子さんがその年齢なら好きなものを考えてみてください。アニメも複雑なストーリーだったり、大人顔負けのテーマを扱っていたりします。興味ある音楽もポップスにしろロックにしろ、本当にプロが作ったものです。そういうものに触れている子たちが、英語の授業でやる歌やロールプレイに興味を持つことはないでしょう。まして隣の子が苦手なタイプの子であればロールプレイなど苦痛でしかありません(それは大人だって同じですよね)。

 ちなみに、出版社の編集者から聞いたエピソードで「小学校の英語の授業で『将来の夢』を英語で発表する課題があったものの、多くの生徒が『Google翻訳』を使っていた」という話がありました。これもある意味「大人びて冷めている」と言える現象かもしれません。

「すでに遅れている」と焦ってしまう方へ

 学校で英語の授業が本格的に始まるのは小5です(その前から軽い内容は扱います)。英語に限りませんが、それまで1年、2年と習い事をやってきた子と、何もしていない子ではスタートの時点で、相当の差がついています。そんなことが全国の小学校で起きています。すると、それまでに何もしてこなかった子は劣等感を抱いたり、保護者も焦ったりするでしょう。

 先ほどお伝えした通り、本書の根底には「早期英語教育に反対」という考えがあります。これはつまり「早くやっても英語ができるようになるわけではない」という考えです。もちろん英語のことだけを考えれば早くやったほうがいいのですが、「子どものうちにやるべき優先順位を考えたら英語はそんなに高くない、他にやることがあるので英語は後回しにしてもいいですよ」ということです(個人的な考えをさらに言うと、小学生のうちは英語をやるよりセミを捕まえたり、プラモデルを作ったりするほうがきっと将来のためになると思っています)。

 いずれにせよ、「英語を先にやった人たちには失敗していく人が多いですよ、後から英語を始めても大丈夫ですよ、そのやり方は僕が教えますよ」というのが本書の役割です。

 そんな僕は日本で生まれ、日本で育ち、中1から英語に触れた人間です。厳密には小6の12月から小学校卒業までの3ヵ月だけ英語塾に週1回通いましたが、ゲームと会話中心の授業に嫌気がさしてやめました。生まれて初めての習い事だったので、最初は夜に友達と塾に通うこと自体や、帰りのコンビニでアイスを買うのが楽しかったのですが、それでも3ヵ月が限界でした。ですから、英語の勉強を始めたのは今の子たちよりもずっと遅いわけです。その後は中2で学習塾へ通い始め、高校受験、大学受験、といった具合に、「いたって普通の日本人」の英語の勉強をしてきました。

 両親は元気でしたが、迷惑をかけたくない一心で、大学でも生活費と学費は自分で出していましたので、普通に遊ぶことはできても留学する余裕はありませんでした。留学どころか28歳まで海外旅行すらしたことがなかったのです。大学の卒業旅行でロンドンに行こうと誘ってきたゼミ仲間は「慶応の英文科でパスポートも持ってないの、お前だけだろ」と笑っていました。

 このような流れで、僕自身は早期教育なしで英語をモノにした人間です。しかも日本だけで。ですから、僕の方法論はきっと多くの人に適用できる、汎用性が高いものだと思います。ついでにお金もかかりません。僕個人は「必要ならお金はかける」タイプで、「ケチると行動の効率が悪くなる」という考えを持っていますが、英語に関してはお金をかけた人ほどうまくいっていない印象を受けます。

 もちろん早期英語教育の専門家や帰国子女には自身のメソッドがあるでしょう。それを否定するつもりはありませんし、それを必要とする人もいるでしょう。

 ただ、僕には「英語は大人になってからでもできるようになる」という信念があり、それは僕の生き様でもあります。英語講師としての僕の存在意義はそのためにあると思っています。

 また、大学卒業後は英語講師として予備校での授業や著書の出版をしながら今に至ります。最初は大学受験英語を教えるだけでしたが、その幅を広げ、小学生用の書籍を数冊執筆し、オンライン予備校「スタディサプリ」で数万人の中学生に向けた高校入試講座を担当しています。以前はNHKラジオの中学英語講座テキストでの連載で高校入試対策もしていました。

 高校生より上の大学生・社会人にはTOEICテスト対策の講座を担当したり書籍を執筆するほか、英会話教材や有名企業からの依頼でビジネス英語の教材を作ったりしたこともあります。

 確かに僕は早期英語教育の専門家ではありませんが、このように小学生から大人まで、かつ受験対策・資格試験対策だけでなく趣味の英語やビジネス英語まで取り組んでいる英語講師はかなり珍しいだけに、早期英語教育の専門家の目には見えない(見る必要がない)学校英語・受験英語、さらにその先までを見越して全体としてアドバイスできると自負しています。

※続きは『早期教育に惑わされない! 子どものサバイバル英語勉強術』でお楽しみください。

【本書の目次】
序 章 小学生に異変が起きている
第1章 誤解だらけの早期英語教育
第2章 とにかく英語嫌いにさせない
第3章 英語への興味を持たせるコツ
第4章 中学英語は「読む」に力を入れる
第5章 一生モノの英語力を身につけるために

関正生(せき・まさお)
1975年、東京都生まれ。オンライン予備校「スタディサプリ」講師。慶應義塾大学文学部英文学科卒業後、複数の大学受験予備校を経て現職。著書に『サバイバル英文法』『サバイバル英文読解』『サバイバル英会話』(NHK出版新書)、『真・英文法大全』(KADOKAWA)など多数。

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