主演・小栗旬(北条義時役)×大泉洋(源頼朝役)対談―「鎌倉殿の13人」は壮大な人間ドラマ!『大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』
2022年放送の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、その主人公は、平安時代末期から鎌倉時代に生きた伊豆の豪族の次男坊・北条義時です。権力闘争の末に鎌倉幕府の最高権力者へとのぼりつめる義時とその周りの人々が織りなす物語を、脚本家・三谷幸喜氏が生き生きと描いていきます。
当記事では、放送に先がけて12月25日に発売した『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 前編』より、主演・北条義時役の小栗旬さんと、義時と関わりが深い源頼朝を演じる大泉洋さんの対談を掲載。仲のよいお二人が、ドラマの見どころや個性豊かな登場人物たちの印象をたっぷり語ります!
歴史劇というより壮大な人間ドラマ
小栗 これまで収録を重ねてきて、今のところ義時は、頼朝に振り回されっぱなしです。
大泉 だからって小栗君、自分のマスクに「全部大泉のせい」ってペンで書いてこないで!(収録時は本番以外は新型コロナ対策のためマスクを装着)
小栗 あはは!
大泉 まぁ、確かに頼朝は義時を振り回すし、義時のお兄ちゃんの宗時も、頼朝のせいでひどい目に遭うけれども……。
小栗 「全部大泉のせい」です。
大泉 大泉じゃない! 頼朝!
小栗 義時はお兄ちゃんが大好きなんだから困らせないで。
大泉 台本のせいです!(笑)
小栗 新しい台本が出来るたびに、上総広常役の佐藤浩市さんが、「こりゃぁ大泉が嫌われるなあ」って言ってます(笑)。
大泉 あはは!
小栗 でも(大泉)洋ちゃんが演じているから、笑って見てもらえるところもあると思う。
大泉 脚本家の三谷幸喜さんは基本、当て書きをする人だから、僕が演じると少しおもしろい頼朝になっちゃった。小栗君だって世間的にはカッコいいと言われてるけれど……。
小栗 義時は今のところカッコいいところはないですね(笑)。
大泉 僕が知る小栗君は、愛くるしくておもしろい。その性格に「翻弄される義時」が合っていて、やっぱり三谷さんは役者をよく見ていると思いました。
小栗 ちなみに頼朝は案外ビシッと締めるシーンもあるよね。
大泉 そういうシーンのあとに、「ずいぶんカッコよかったねぇ」って不満げに言うのやめてよ。
小栗 洋ちゃんは、カッコつけるとさまになるんだよ。
大泉 頼朝だから、たまにはビシッとしないと。とはいえコミカルなシーンが多いのは確か。
小栗 前半は特にそうかも。初回なんて、冒頭は馬が疾走するスケール感のあるシーンで盛り上げておいて、あとは北条家のドタバタと、義時がやったことが全部裏目に出るという展開。ホームコメディーのよう。
大泉 初回は、僕はとにかく「雅(みやび)」を心がけていた。三谷さんから「雅に演じて」と言われたので「スンッ!」としていた。
小栗 「スンッ!」としていたけど、頼朝は訳あって北条家にかくまわれているのに、平気で目立つような行動をとるから、僕からすると驚きですよ。
大泉 今回の頼朝は子どもみたいな人だよね。(小池)栄子ちゃん(政子役)とのシーンとか、コントみたいになっていないか心配。小栗君が僕らのシーンを見ていて、収録後に文句を言ってきたことがあったよね。「真面目にやって!」って。台本のまま演じているのに(笑)。
小栗 うん(笑)。
大泉 そういえば、栄子ちゃんのせいで小栗君が僕のことを呼び捨てするようになったよね。
小栗 (野太い声で)大泉!!
大泉 あはは!
小栗 栄子ちゃんがいつも呼び捨てにしているから(笑)。
大泉 栄子ちゃんに言ってやりましたよ。「君のせいで小栗君が『全部大泉のせい』ってマスクに書くようになったんだ」と。
小栗 しかしさ、小池栄子という人は、なかなかの存在ですよね。感情表現が豊かだし……。
大泉 芝居がうまいし、場の空気を全部持っていっちゃうね。
小栗 あと、北条時政役の坂東彌十郎さんは、放送が始まったら絶対に注目されると思う。
大泉 「新人です」なんておっしゃっていたけれど、僕は羨望の眼(まなこ)で見ている。得体の知れない色気があるなぁと。若い頃にやんちゃした話なんかも聞かせてもらったけど、そういった経験から出てくる色気なんだろうなぁ。ニヤッとして短いセリフを言うだけでも粋でかわいらしくて、こういうお芝居は僕には到底できないって思う。視聴者の皆さんも虜(とりこ)になるはず。
小栗 うん、そう思う。宮澤エマさん演じる実衣のキャラクターもいいよねぇ。ずっと文句を言っているキャラ(笑)。
大泉 いいよね。大河に出てこないようなキャラだよね。宗時も好きだなぁ。あの素直さ。あの爽やかさ。あそこまで爽やかな存在でいられるのは、片岡愛之助さんのすごさだよねぇ。
小栗 ほかにも個性的な役者さんたちが次々登場してくるので、皆さんがどんなふうに台本を解釈して、どんなお芝居をされるのか、目が離せない。
「鎌倉殿の13人」はおもしろい! そして怖い!
大泉 自分のシーンが終わっても、ほかのキャストのお芝居が見たくて残っていたことがあったな。彌十郎さん、浩市さん、國村隼さん(大庭景親役)、佐藤B作さん(三浦義澄役)がそろうめちゃめちゃ重いシーン。
小栗 ああ、第10回かな。
大泉 そう。僕らがおもしろいシーンをさんざん撮ったあとだったから、現場の雰囲気の変わりように驚いちゃった。
小栗 僕が個人的に好きなシーンは、義時が事務仕事をしているところにふらっと頼朝が現れて、心の内を明かす第3回のシーン。頼朝はなぜか義時に大事な話をしてきて、弱い部分も見せてくる。何気ないシーンだけど、義時はこのあと頼朝の戦に巻き込まれて後戻りできなくなっていくので、2人の始まりのシーンでもあったと思う。
大泉 頼朝はすごく人を見ていて、どの人にどう接すれば生き残れるかをずっと考えていた人だと思う。きっと義時の誠実さを見抜いたんじゃないかな。僕的には、頼朝が義時に初めて覚悟を打ち明ける第2回のラストシーンが心に残っている。このときからなんでも義時に話すようになるし、義時の前で「坂東(ばんどう)の者どもは信じきれない」とか平気で言っちゃうからね。
小栗 義時も坂東武者なのに、しんどいひと言だよなぁ。
大泉 つまり頼朝にとって、義時はもはや坂東の者という意識じゃないんだよ。心を許していて、完璧に味方だと思っている。
小栗 うん。だからこっちも頼朝を支えなきゃという気持ちになるし、その思いがどんどん増している感覚があります。
大泉 僕は三谷さんが書く大河ドラマは「真田丸」を経験しているけど、今回は「真田丸」のときより怖さを感じるんだよね。笑いもたくさんあるけれど、その中に人間の怖さが隠れている。第15回なんて、三谷さんの真骨頂という気がするなぁ。
小栗 第15回では、頼朝の冷酷さが強く描かれるし、それまでの回で積み重ねてきたことのすべてが詰まっているよね。
大泉 頼朝の行動をいかに説得力をもって演じられるか。見る人がどれだけ感情移入できるか。そこが僕の仕事なんだろうけれど、現代人とは明らかに違う感覚だから、いやぁ難しい。
小栗 義時も、史実的には身内で殺し合ったり、朝廷に背いたりした人なので、見方によっては〝やベぇやつ〟なんだと思う。でもその行動には政権を守るためとか、自分が殺されないためとか、何かしら理由があるはずで、それを残酷と捉えるか、やむをえずだったと捉えるか……。ただ、主役だからといって嫌われないようにブレーキをかけるという考えは一切ないです。
大泉 いずれにしても、台本次第だよね。
小栗 三谷さんがどう描いていくかまだ分からない部分が多いけれど、歴史劇というより壮大な人間ドラマになると思う。
大泉 僕は海外のドラマを見ていて、日本でこういう作品がなぜできないのかと羨ましくなることがあるけれど、「鎌倉殿の13人」は、いやぁおもしろい!
小栗 ただ、洋ちゃんは途中でいなくなっちゃうんだよね。
大泉 史実で頼朝は死ぬからね。でもそこからが「13人」の本領発揮だよね。大河の主役は選ばれた人しかできないんだから、1年間頑張ってくださいよ!
小栗 最終回の頃にはマスクが外せているといいなぁ。
大泉 小栗君はお酒を飲んで打ち上げしたいタイプだもんね。
小栗 それを目指して1年間頑張ります!(笑)
取材・文=髙橋和子 撮影=山田大輔
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プロフィール
小栗 旬(おぐり・しゅん)
1982年生まれ、東京都出身。子役として活動を始め、95年、大河ドラマ「八代将軍吉宗」に出演。以降、ドラマ・映画・舞台で幅広く活躍。主な出演作に、ドラマ「ごくせん」、「花より男子」シリーズ、「BORDER」「CRISIS 公安機動捜査隊特捜班」「日本沈没-希望のひと-」、映画「クローズZERO」シリーズ、「銀魂」シリーズ、「罪の声」など。NHKでは、「さよなら、アルマ〜赤紙をもらった犬〜」などに出演。大河ドラマは「葵 徳川三代」「義経」「天地人」「西郷どん」などに出演し、本作で8作目となる。
大泉 洋(おおいずみ・よう)
1973年生まれ、北海道出身。主な出演作に、ドラマ「救命病棟24時」シリーズ、「おかしなふたり」シリーズ、「東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~」「ノーサイド・ゲーム」、映画「探偵はBARにいる」シリーズ、「清須会議」「青天の霹靂」「駆込み女と駆出し男」「騙し絵の牙」など。NHKでは、連続テレビ小説「まれ」「なつぞら」など。大河ドラマは「龍馬伝」「真田丸」に出演。
小栗さん:ヘア&メイク=みち子(SUNVALLEY) スタイリング=臼井崇(THYMON Inc.)衣装協力=ジャケット ¥50,600 シャツ ¥26,400 パンツ ¥38,500/以上ENGINEERED GARMENTS(ENGINEERED GARMENTS TEL03-6419-1798)シューズ ¥42,900/NEEDLES(NEPENTHES TEL03-3400-7227)
大泉さん:ヘア&メイク=西岡達也(Leinwand) スタイリング=九(Yolken)衣装協力=ジャケット¥23,100 パンツ¥31,900/以上 JOSEPH(オンワード樫山 TEL03-5476-5811) その他スタイリスト私物