谷山浩子さんが明かす、みんなのうた「花さかニャンコ」誕生秘話
シンガーソングライター谷山浩子さんは、NHK「みんなのうた」で数々の名曲を発表されてきました。その中でも2019年の「花さかニャンコ」はどこまでも明るい歌詞と曲調、栗コーダーカルテットによる演奏が相まって、一度聴いたら忘れられない一曲。
現在発売中の谷山さんによるエッセイ『ヒロコとニャンコと音楽の魔法』から、そんな「花さかニャンコ」の誕生秘話をご紹介します。
奔放に動き出したニャンコ
「みんなのうた」との関わり
こんにちは。谷山浩子です。これから「みんなのうた」のことや自分の歌のことなど、のんびりお話ししていこうと思います。どうぞよろしくおつきあいくださいね。
まずは自己紹介と「みんなのうた」との関わりについて少しだけ。仕事はシンガーソングライターを、15歳からもう48年やっています。主にピアノの弾き語りでコンサートをしています。「みんなのうた」を視聴者として見ていたのは、番組の始まった時(幼稚園児でした)から7~8年。中学校からは通学に一時間半かかるようになったので、見られなくなってしまいました。
仕事として番組から依頼をいただいた最初は1984年でした。今までに作った歌は9曲。「恋するニワトリ」「まっくら森の歌」「しっぽのきもち」「おはようクレヨン」「そっくりハウス」「花さかニャンコ」「きみがいるから」を自分で歌い、「空のオカリナ」「ピヨの恩返し」は岩男潤子さんが歌ってくれました。
その中で2019年の「花さかニャンコ」のことを、今回はお話ししますね。
「花さかニャンコ」誕生!
この歌は、依頼から締め切りまでが今まででいちばん短かった歌です。2018年の12月28日に事務所からメールが来て「年明け1月6日までにお願いします」と言われました。軽くメマイがしました。「了解です!」と言い切る勇気がなくて「がんばります」と答えたのを覚えています。
それでも思った以上にスピーディに、この歌はできました。
夜中に突然「猫が歩くとその跡に花が咲いていく」というイメージが浮かんできました。その時のニャンコは小さなシルエットでした。4本足で歩くリアルな猫のシルエットです。
そのあとに「ニャンコ ニャンコ 花さかニャンコ あの子が歩けば花がさく」のところまで曲と歌詞が一度に浮かんできて、シンプルで覚えやすいし、よしこれで行こうと決めました。
何に花を咲かせるかはだいぶあれこれ考えましたが、普通の場所(枯れ木、屋根)から始めて、だんだん普通じゃない場所(金属とか)に咲かせていくことにして、鉄棒、門扉、自動車などの候補を経て、やっとジャングルジムを思いつきました。そこからは、人の体にも花を咲かせたりしながらニャンコマジックがどんどん広がっていって、よーし宇宙へ行くぞ! と言いだしたのはわたしだったのかニャンコだったのか、そのへんになると自分でもよくわかりません。
作った歌が世に出て
歌が完成した時に、編曲・演奏は栗コーダーカルテットさんしかいないと思いました。生真面目な谷山浩子に適度な抜け感を添えてくれる、大切な友達です。歌も一緒に歌ってもらいました。彼らの歌は愉快で、何回聴いても顔が笑ってしまいます。
そして、きのしたがくさんの作ってくださったアニメーションがまた素敵で。ニャンコが2本足で歩く女の子になって、猫じゃらしを振って、想像以上に自由奔放に花を咲かせていくのがほんとに面白く、特に最後の画面、これでもかと花でいっぱいになっているところは最高の最高で、思わず拍手してしまいました。
Twitterなどで、小さなお子さんの親御さんたちが「ギャン泣きしててもこの歌を聴くと泣きやむ」「放送が始まるとテレビにかじりつくように見てる」「何十回もかけてとせがまれる」などの感想を書いてくださっているのを見て、ほんとに嬉しくて、この歌を作ってよかったと心の底から思いました。皆さんに感謝感謝です。
続きは『ヒロコとニャンコと音楽の魔法』でお楽しみください。
谷山さんが音楽と出会った幼少期、デビュー当時のこと、そして50年にわたる音楽活動をみずから振り返り、思い出や楽曲制作秘話、音楽への思いが綴られます。栗コーダーカルテットとの新規懇談では、音楽仲間から見た姿が明らかに。
谷山浩子(たにやま・ひろこ)
シンガーソングライター。NHK「みんなのうた」「おかあさんといっしょ」やCM、ラジオ番組のMC、童話、エッセイ、小説の執筆、楽曲提供など幅広く活躍。2022年4月にデビュー50周年を迎えた。
谷山浩子オフィシャルサイト https://www.taniyamahiroko.com/