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日本画家・安原成美が描く、家康/松本潤をイメージした鷹とは――NHK大河ドラマ『どうする家康』ノベライズ全4巻

NHK大河ドラマ「どうする家康」の完全小説版として、売れ行き良好のノベライズ第3巻が発売された。注目すべきはストーリー以外にも、その表紙に描かれた美しい鷹の絵。徳川家康は鷹狩(たかがり)を好んだ武将としても有名だが、ノベライズ『どうする家康』の装丁画に描かれる鷹は、日本画家の安原成美さんがドラマにインスパイアされた描いた懇親の一羽だ。装丁画を担当した安原さんにお話を伺った。

編集部 とても精緻な絵ですが、どのように描いていくのでしょうか。

安原 まず、下絵をスケッチブックに描き、完成したら、和紙に写します。そのうっすらとした線に墨入れをしていくのですが、この墨線は最後まで残るとても大切な線になります。特に鷹の顔や羽の一枚一枚、眼などは、いつも真剣勝負で描いており、消して描き直すともう絵が死んでしまう。植物の線も植物らしく自然に見えるように、神経を注いで描いています。そして、墨線が入れ終わったら、胡粉(貝殻を焼き、粉末にした白い顔料)を背景に塗り、細部を彩色していきます。ノベライズの表紙の絵を完成させるまでに、およそ1か月をかけています。

製作途中の装丁画(ノベライズ『どうする家康(三)』)
重要な墨入れの作業 ※動画は下記よりご覧いただけます

編集部 ノベライズは全4巻なので、鷹の絵を4枚描かれることになると思いますが、どのような点に気を遣っていますか。

安原 第1巻では高い枝から獲物を見つめ、第2巻では空を見上げ、第3巻では羽ばたこうとする鷹の瞬間を描きました。特に第3巻は、家康と秀吉の対立が深まる時代のストーリーですので、豊臣家の家紋である桐の花を背景に描いています。第4巻のイメージはまだ定まっていませんが、流れとしては、家康の人間的成長を重ね合わせたいと考えています。いよいよ徳川家康として大きく舞い上がった姿を描ければと思います。

ノベライズ『どうする家康(一)』の装丁画

編集部 今回の表紙には家康が終生楽しんだという鷹狩のイメージから、鷹の連作を描いていただいていますが、描く上でのご苦労や力を入れた点はありますか。

安原 鷹の絵は今まであまり描いたことがなく、描くにあたっては、日本画に描かれた鷹図、特に安土桃山時代の絵画作品に目を通しました。また、鷹の体の構造を調べるため、生物学の資料、骨格の写真なども参考にしました。描く際はやや太めの面相筆で一枚一枚描いています。ご覧いただく際は、羽の細部に注目して見ていただければと思います。

細い穂先の面相筆を使い、羽一枚一枚を丁寧に描く ※動画は下記よりご覧いただけます

編集部 大河ドラマ「どうする家康」の番組から影響を受ける部分もあるのでしょうか。

安原 もちろん大河ドラマを見てイメージを膨らませています。特に松本潤さんの表情を鷹の顔に重ね合わせたり、ドラマに出てくる家康の衣装から絵の色彩のイメージを決めています。先に触れたように鷹の細部にまでこだわったり、家康のイメージを鷹に重ね合わせるなど、今までにない挑戦をしています。画家として古典作品の修復や新しい作品を創作・発表をしていますが、今回の試みは新しい世界を広げることにもなりました。読者のみなさんにもこうして完成した装画をノベライズと合わせて楽しんでいただければ大変うれしいです。 

ノベライズ『どうする家康(二)』の装丁画

プロフィール
安原成美(やすはら・しげみ)
 1984年、埼玉県生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学専攻保存修復日本画研究領域博士後期課程修了。日本美術院院友。平山郁夫奨学金(東京藝術大学)受賞(2015年)、野村美術賞 受賞(2016年)、修了作品東京藝術大学収蔵、平山郁夫文化芸術賞受賞(2016年)、山種美術館日本画アワード2019「-未来をになう日本画新世代-」大賞受賞(2019年)ほか。国内外で作品を発表し、活躍中。

取材・文=編集部

*安原成美さんのInstagramはこちら

NHK大河ドラマ「どうする家康」をより詳しく知りたい方へ
『NHK大河ドラマ・ガイド どうする家康 後編』


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