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コロナショックは世界経済をどう変えるか?「GAFAの次に来るもの」を見通し、日本の活路を提示する

 新型コロナウイルスの感染拡大によってヒト・カネ・モノの流れが滞り、「世界大恐慌」のシナリオが現実のものになろうとしているいま、“GAFAの次”をめぐる大競争が始まっている。来たるべき時代に求められる新しい価値観とは何か? はたして日本は、かつてのように世界をリードする存在に戻れるのか?
 産業界の未来予測に定評ある著者が指し示す、混迷の世界経済の行方!
 当記事は、田中道昭著『2025年のデジタル資本主義 ~「データの時代」から「プライバシーの時代」へ』から一部を抜粋・再編集してお届けするものです。

世界経済をリードするデジタル・プラットフォーマーたち

 デジタルトランスフォーメーション、デジタルシフト、デジタル資本主義――。近年、「デジタル」を鍵とする経済・ビジネスのキーワードが増えてきています。デジタルは2020年代で最も重要な概念の1つと言ってもよいでしょう。
 なぜ、デジタルがこれほどまでに重要な概念となったのか。その答えは、GAFA(米国のグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)やBATH(中国のバイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)といった米中メガテック企業が示しています。彼らの特徴は、特定の商品・サービスだけで収益を上げようとしていないこと。それぞれの事業領域でデジタル・プラットフォームを構築し、さまざまな商品・サービスやコンテンツ、ビジネスやシステムをその中に取り込みながら、「エコシステム全体」での成長を図っています。
 彼らメガテック企業には共通する点があります。それは単なる「巨大なテクノロジー企業」ではなく、「デジタル・プラットフォーマー」であるということです。
 デジタル・プラットフォーマーのビジネスモデルとは、ITやデータの活用により、事業者、消費者、広告主など複数のユーザーを結びつけるサービスを1つのプラットフォーム上で提供するものです。日本でいえば、楽天やYahoo!などがデジタル・プラットフォーマーだと言うと、わかりやすいでしょうか。

巨額の利益を生み出すGAFAのビッグデータ×AI戦略

  デジタル・プラットフォーム上には必然的に、あらゆるユーザーのデータが蓄積していきます。このデータこそ、デジタル・プラットフォーマー最大の武器であり、財産です。
 例えばアマゾンは、日々蓄積していく購買履歴などの膨大なデータをAI技術で分析して消費者の好みを把握、製品・サービスの開発や改善に役立てています。するとますます多くの消費者・出品者がデジタル・プラットフォーム上に集まります。結果として、アマゾンが得る利益もデータも、加速度的に膨れ上がっていきます。
 こうした現象を「ネットワーク効果」と呼びます。プラットフォーム(ネットワーク)への参加者が多くなるほどプラットフォームの価値が高まり、さらに多くの利用者が集まるのです。ネットワーク現象は、特定のプラットフォーマーにユーザーが集中する理由でもあります。
 私たち消費者は彼らから多大な恩恵を受けています。デジタル・プラットフォーマーはもはや私たちの生活に欠かせないインフラのようなもの。アマゾンで買い物ができない世界、グーグルで検索できない世界で暮らせるかと問われて、イエスと即答できる人がどれだけいるでしょうか。そしてこの先も、ビッグデータ×AIを武器に彼らは成長を続けることでしょう。多くのユーザーにとっても、それは歓迎すべきこと。使えば使うほど、自分好みにカスタマイズされた快適なサービスを提供してくれるのですから、ますます捨てがたいものになります。

現れ始めた「デジタル資本主義」の弊害

 しかし今、こうしたデジタル化の流れが1つの岐路に立たされています。デジタル化の弊害が顕在化してきているのです。
 その1つが、個人情報保護の問題です。
 デジタル・プラットフォーマーはこれまで、ユーザーの膨大な個人データを蓄積し、それをユーザーエクスペリエンスの向上や新サービスの開発に生かしてきました。データこそ、彼らにとって最大の武器。またユーザーも、自分のデータを提供する見返りとして、無料のサービスなど、さまざまな恩恵を受けてきました。
 しかし、個人情報がどう使われているのかユーザーに対し不透明であること、またフェイスブックが最大8700万人にものぼる個人データを流出させた事件が象徴するようにプライバシー侵害のリスクがあることなどを受けて、世界はにわかに個人情報保護に傾いています。欧州では一般データ保護規則(GDPR)が、米国ではカリフォルニア州消費者プライバシー法(The California Consumer Privacy Act=CCPA)が施行され、日本でも個人情報保護法の改正が控えています。すなわち、「データからプライバシーへ」という大きな潮流の変化が起きているのです。
「データの利活用」と「プライバシー重視」という、一見すれば相反するように見える両者をどう両立させるのか。
 日本企業に注目してほしいと私が思うのは、この点です。つまり、データの利活用でもプライバシー重視でも欧米に立ち遅れているからこそ、両者の現状を冷静に分析し、より的確な答えを見出していくこと。後発者だからこその利益を享受し、将来的に世界をリードするため戦略的な動きをとること。それこそが、日本企業に求められていると思うのです。

ポストコロナの世界で求められる「人間中心主義」

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 また本書を執筆している2020年春現在、世界は「コロナ危機」の真っただ中にあります。ヒト、モノ、カネの流れが滞り、リーマンショックを上回る「世界大恐慌」のシナリオが、現実のものになろうとしています。いまだ先行きを見通すのが困難な状況ですが、ポストコロナの世界が、かつての世界とは大きく姿を変えていることだけは確かでしょう。コロナ危機は、すでに始まっている世界の変化を、一気に加速させるものになるかもしれません。
 新型コロナウイルスの感染拡大の収束や金融市場の混乱等にまだ目途が立っていないなかで、これから世界がどのように変化していくのかを予測するのは困難なのは言うまでもないことでしょう。もっとも、コロナショックが世界を大きく変化させてしまうことはもはや確かなことではないかと思います。
 私はその変化が、「全体主義的監視か、市民の権利か」といった二元論的なものでは決してなく、地球や人類を本当にサステイナブルに進化させていくための、真に人間中心主義的なものであってほしいと心から切望しているのです。
 この人間中心主義こそは、「GAFAの次に来るもの」、また「2025年のデジタル資本主義」の行方を示すものです。そしてなにより日本が米中に次ぐ第三極になるために必要なことでもあります。

日本がふたたび国際社会をリードするために

 「GAFAの次に来るもの」を考えることは、現在「周回遅れ」のポジションに甘んじている日本の行く末を考えることでもあります。
私は、我が国が目指すべき未来社会の姿として政府が策定している「Society5.0」に注目しています。なぜならそこには、「人間中心主義」が理念として掲げられているからです。この「Society5.0」とは狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(同2.0)、工業社会(同3.0)、情報社会(同4.0)に続く、経済的発展と社会的課題の解決とを両立し、人々が快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることができる社会のこと。
 現段階では、Society5.0の議論における人間中心主義は抽象的であり、また日本政府も大企業も、人間中心主義を具体的に描き切ることができず、実践もできていないように思われます。しかし、日本がふたたび国際社会をリードする存在になる上で、人間中心主義は避けて通れません。
 そのためにまず必要なのは、目の前にいる顧客へ価値を提供すること、その顧客の課題を解決すること。その積み重ねが、その集積が、社会的課題の解決にもつながります。いわば、ミクロ的な人間中心主義からのスタートです。これは決して難しいことではなく、すでに米中のテクノロジー企業が手本を見せてくれているものです。彼らがいうカスタマーエクスペリエンス重視とは、人間中心主義の一端であることは否定できないでしょう。

 デジタル化は、社会や経済のあり方、そして人々の価値観を大きく変えました。しかし、デジタル化の弊害が顕在化した以上、世界は「その次」を模索する必要があります。それが「GAFAの次に来るもの」であり、デジタル資本主義にかわる「ポストデジタル資本主義」というべきものになるでしょう。

※続きはNHK出版新書『2025年のデジタル資本主義 ~「データの時代」から「プライバシーの時代」へ』でお楽しみください。

プロフィール

田中道昭(たなか・みちあき)
立教大学ビジネススクール教授。シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略及びミッション・マネジメント&リーダーシップ。日米欧の金融機関において要職を歴任した後、多業種に対するコンサルティング経験をもとに、各種メディアでも活動。公正取引委員会独占禁止懇話会メンバー。主な著書に『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)、『GAFA×BATH─米中メガテックの競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『ソフトバンクで占う2025年の世界』(PHPビジネス新書)など。

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