本土復帰50年の節目の年、沖縄のことを知ってもらえたら――NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」主演・黒島結菜インタビュー
暢子みたいな愛されキャラになれたら
自分が朝ドラのヒロインになるなんて思ってもみなかったのでびっくりしました。これまでに「マッサン」と「スカーレット」で2度朝ドラを経験してきて、ヒロインの方々を近くで見てきただけに、自分にあんな大役が務まるのかなと不安も大きかったです。でも、スタッフの皆さんとお話ししたり、沖縄からヒロイン決定の発表をしたりする中で「この現場は楽しくなるな」という確信が出てきて。今は本当に楽しくて、いつ疲れるんだろうと思うくらいです(笑)。
楽しめているのは、暢子がとても明るくて元気なキャラクターだということが大きいかもしれません。おとなしい役だとあまりしゃべらないんですけど、今回は常に誰かとしゃべっていて。自分ってこんなに役に影響されるんだなと気付きました(笑)。中でも、竜星涼さん、川口春奈さん、上白石萌歌さんとの兄妹4人は、沖縄ロケが始まるときに〝ゆんたく〟(おしゃべり)をして以来、とっても仲よし。撮影の合間も、はーちゃん(川口さん)が「もうやめなさい」って言うくらい、竜星くんがお母ちゃん(仲間由紀恵さん)に話しかけていて(笑)、それを見て萌歌ちゃんが笑ったり、みんなキャラクターそのままだなと思う瞬間がいっぱいあるんです。比嘉家は本当に温かくてみんなが互いを思い合っていて、家族だけじゃなくて、地域のみんなが協力しながら生きている。すてきだなと思います。
暢子はあるきっかけで、料理人になるという夢を見つけます。食べることが大好きで、比嘉家では料理を担当していて。毎日当たり前にやっていたことを、とある料理大会で家族以外の人に食べてもらって、喜ばれたときに初めて、自分がやりたかったのは料理だと気付いて宣言するんですよね。
そのシーンを撮ったときは、暢子を応援してくれる気持ちがみんなからワッと伝わってきて、台本に書かれている以上に、私自身の気持ちも高ぶっていきました。 自分の夢が見つかるまではモヤモヤ、イライラしている暢子ですが、そこからは、苦労をしてもつらくても、持ち前の明るさを生かして進んでいきます。だから私も、「負けない!」と思って頑張る暢子とリンクして、これからも頑張れるような気がしているんです。それに暢子は、放っておけない〝愛されキャラ〟みたいなところがあるので、周りが助けてくれるんですよね。私も見習って、愛されキャラになりたいなと思っています。
過去をどう未来につなげていくか
料理は、食べる人のことを考えて作るものですけど、お金を頂くプロになるとなおさら、臨機応変に相手に合わせなければ務まらない大変な仕事だと思います。おいしいものを食べたときって幸せな気持ちになるじゃないですか。生きるうえで絶対に必要な〝食べるということ〟で人を幸せにできる職業って、本当にすばらしいなと思って尊敬しています。 私も料理は好きですが、自炊レベルなので、プロの料理人に見えるように頑張りたいと思います。撮影に入る前には、沖縄そばの作り方を、麺を打つところから教わりました。一口に沖縄料理といっても、それぞれの家庭の味があるんだなと気付いて、今はそれがいいなと感じています。
ドラマには、沖縄料理はもちろん、沖縄の美しい風景もたくさん出てきます。私も上京してからは、沖縄に帰るたびに、東京とは違う海や緑の色の濃さを感じながら癒やされています。2022年は沖縄が本土に復帰して50年という節目の年です。これまでも自分で資料館に行ったりして、沖縄の歴史を知ろうとしてきましたが、過去をどう未来につなげていくか、改めて考えるきっかけになりました。こうして朝ドラで描かれることで多くの方に知ってもらえるのもありがたいなと思いますし、何より、楽しんでもらえたらと思います。私も周りに支えられながら、おもしろいドラマを作れているなと実感しています。ぜひ笑って泣いて楽しんでください。
取材・文=大内弓子 撮影=藤田浩司 スタイリング=伊藤省吾(sitor) ヘア&メイク=加藤 恵
プロフィール
くろしま・ゆいな
1997年生まれ、沖縄県出身。主な出演作に、映画「あしたになれば。」「カツベン!」、ドラマ「ごめんね青春!」「時をかける少女」など。NHKでは、連続テレビ小説「マッサン」「スカーレット」、大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺〜」、「アシガール」シリーズに出演。